第74話 アフリカ動乱(3)

「ハミルトン!大丈夫か立て!」


ハミルトンが何かに躓いて転ぶ。その間にも暴風はゆっくりと近づいて、いや段々とスピードを上げている。あと15mくらいしかない。


「隊長!あれ!」


「分かってる!ロイド!ブラックホークとリトルバードは!?」


「マキシモフがすぐにこっちに来るそうだ!電波が妨害されてるのか他の部隊とは繋がらない!」


その時ババババという音と共に広場の方に黒い何かが浮遊する。


「マキシモフだ!」


クリスはすぐに気づいたのかそう言った後


「皆端によれ!ガトリング砲に巻き込まれるぞ」


そう言うとクリスは建物に張り付くようにして体制を整える。俺はハミルトンの体を起こしたあと彼の腕を無理やりに掴んで投げるように建物へと向かわせる。隣には無線をイジるロイドがいる。


直後ブラックホークに搭載されているGAU-19が火を吹く。ダダダダと言う音が辺りに響く。弾丸は暴風の中心に向かって撃たれている。


「壁に張り付きながらブラックホークに向かえ!着陸してから一気に走るぞ!」


俺がそう言った時、ブラックホークは高度を下げ、GAU-19をマキシモフは撃ちまくる。


ブラックホークのもとに急いで辿り着くと調子者のマキシモフの顔が珍しく強張っている。


「よし!早く乗れ!乗れ!」


火を吹くGAU-19があるドアとは反対のドアからハミルトンを最後にブラックホークへと乗り出す。


ブラックホークはそれを合図に浮上するとその場をすぐに離れる。マキシモフはガンナー席から離れ


「なんなんだ!?あいつ!?」


「分からない!本部との連絡はしたのか!?」


「既にしてあるぞ…それより凄まじい風の音だ…」


と言い終えた時だ。


「おいおい、どうなってやがる。他のブラックホークがいない!」


そう言ったのはパイロット。車で言う助手席に座ったパイロットがそう言うと焦ったように辺りを見渡す。このパイロットもハミルトンと同じく若く、クリーム色の金髪をしていた。


「墜落したのか!?」


「リトルバードが2機とブラックホークが1機!もう1機との連絡も途絶!」


その時ブラックホークが揺れ出す。ピーッピーッという警告音が響き渡る。驚きながら俺は声を上げる。


「なんだ!?どうした!?」


「分からない!墜落するぞ!」


ランドンはそれだけを答えると操縦桿を強く握りしめる。ブラックホークはヒュンヒュンと言いながらゆっくり落下していく。


「耐ショック姿勢!」


そう叫びながら俺は頭を守る姿勢をとった。


キーンという音が耳に直接響く。そして痛みが全身に襲いかかる。だが耐えられないほどではない。


「隊長!こっちだ!」


俺はクリスと思わしき人物に引きずられる。直後ブラックホークは轟音と共に爆発する。


それで耳鳴りが治る。今の状況を確かめようと辺りを見渡す。いるのはハミルトン、クリス、マキシモフ、そしてロイドもちゃんといる。だが…


「パイロットは!?」


俺の質問にすぐ答える者はいなかった。やがてロイドが俯きながら答える。


「あの…中だ…」


俺はそう言われた時ブラックホークのコックピットを直視する。焼かれる機体、その中に黒くあちこちが焦げた二つの…


「クソッ!」


俺は気がつけば建物の柱に拳を打ち付けていた。


「あんたが悪いわけじゃない隊長」


クリスは精一杯の慰めなのかそう言ってくる。拳を打ち付けいくらか気持ちが楽になった俺はノートパソコンを失ったロイドに言う。


「……リトルバードは?」


「もう2機がすぐこっちに…」


その時不意にブラックホークが俺達の頭上を飛ぶ。


だが普通ではない。何故ならそのブラックホークは俺達が先程乗っていた…そのブラックホークは横に飛んでいた。ブレードも何枚かもがれている。吹き飛ばされたのだ。


そしてブラックホークが吹き飛ばされ何を根源として燃えているのか分からない炎がその先の光景を蜃気楼へと誘う。


「………!」


ハミルトンが声にならない喘ぎをもらす。その先にいるものは俺を愕然とさせた。


炎は消え去る。奴の周りを吹きつける風によって消される。奴はブラックホークが墜落した丁度の場所まで来ていた。俺達はとっさに横にされた木箱に隠れる。


俺を合わせた全員が銃を向ける。その目には怯え、怒り、驚き、いろいろな感情が溢れる。


奴は人間に極めて近かった。横に長い耳と猿のような丸い頭をした人型の生物。


童話に出てきそうな見た目のそれは俺達に微笑みかけた。



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