第64話 部隊突入
「部隊1は東階段、部隊2は西階段を昇れ、部隊3は民間人の保護にあたれ、部隊4は入口及び裏口の警備、部隊5は道路の封鎖を行え」
雅俊はそう言うと入口に鳴りを潜めていた各6人ずつの部隊が動きだす。今のところホテルからこちらを覗いている者は少なく、その中に彼らと思わしき姿はなかった。10時という比較的人が活発に動き出す時間帯に突入する理由は彼らの行き先を見失わないようにするため。それには迅速な行動が必要となる。
背後の大型車両内にいるオペレーターが無線越しに部隊と話す
「部隊1、状況は?」
『現在東階段3階。民間人を計5名保護、指示を』
「了解。下の階へと避難させてください。騒ぎを起こさないようにと伝えてください」
8階建てのビジネスホテル。民間人がどれだけいるかはまだ完全に把握はしていない。保護した民間人にはヤクザの武器の取り引きが行われているため刺激しないようにしてくれと頼んでいる。
「部隊2、状況は?」
『現在西階段5階、目標がいる8階まであと少しだ。こちらでは今のところ民間人を現在までに発見していない』
「了解。見つけ次第、民間人への被害を抑えるため下の階へと向かわせてください」
各部隊は着実に動くと同時に野次馬も集まりだす。その状態を察したのか同僚の中谷秀也が話しかけてきた。
「大丈夫か?野次馬を避難させなくて」
「人手の無駄だ。すぐに決着をつけさせればいい」
「それはそうだがSNSで俺達話題になるぞ。記憶処理薬でもあればいいんだがな」
「俺は奴らが現実改変者でないことを祈るばかりだ」
その時、オペレーターのもとに無線が届いたようだ。
『こちら部隊1。8階へ到着』
『部隊2、同じく到着。指示を』
「全部隊、武器の確認及びガスマスクを装着。806号室に集合」
オペレーターは武器と言っているが、部隊には殺害を目的とした武器ではなく鎮圧用のゴム弾装填のショットガンを持たせている。他には警棒、電圧を上げたスタンガン、それと製造方法不明の催眠ガス。高精度の物は実際には造れないと言われていた代物だ。一体どうやって作ったのやら。
「全部隊突入せよ」
最後は雅俊が合図を送った。
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突入まで2分前
ガイム視点
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俺は何時かも分からずに起きる。目を擦りながら辺りを見渡すと他3人は出発の準備をしていた。
今回は4人同じ部屋で寝ることになり、当然の如く俺は床で寝かされた。床のスペースが狭いため窮屈なことこの上なしだ。
けどまぁ女の子3人と同じ部屋で寝れたことには感謝しかない。思春期の少年にとってこれだけで済ませちゃ駄目だろという反面、俺に何かできる勇気はないためそのまま寝ることになった。ちなみにベッドで寝たのはキルアとカノン、椅子で丸机に寝そべっていたのはアナリスとなっている。
俺が起きたことに気づいたのかアナリスが話しかけてくる。
「あ、おはよ。早く行こうか。結構寝てたからチェックアウトの時間まで早いよ」
「…………そ」
「…ガイムって寝起き弱いよね。あと夜中私達になんかした?」
アナリスは苦笑を織り交ぜながらそう言うも俺は「いや、何も」と答える。
「昨日は何もなくて静かでしたね…よく眠れました」
「カノンはそうかもしれないけど、私はまったく休めた気がしない。譲ってほしかった」
「勝負事に負けたのでそう言うのはなしのはずです」
カノンはにこやかに笑う。こういう一面もあるのは意外だった。
「よし、出ていくぞ〜」
アナリスがそう言った時、部屋の前に誰かがいる気配を感じる。キルアも感じたようで
「何だ?」
「俺が確認してみるよ」
一番玄関に近かった俺が応対することにした。特に警戒はせずに玄関まであと少しというところでガチャリと音がする。
ガチャリ。どこかで聞いた音。そうだ鍵の音だ。あれ?でも鍵は閉めたはずだ。そう思いながら扉を見ているとバンと扉が開く。
そこには謎の奴らがいた。全身黒に包まれ、長い銃を持った人。そいつらの先頭にいた奴が何かスプレー缶のような物を投げる。
突然の出来事に俺は何もすることができなかった。それは他の皆も同じようだ。
静止している間にスプレー缶は床に落ちると、謎の白煙を上げだす。ここで事態を理解した人物が現れる。
「ガイム!逃げて!」
アナリスはそう言うと窓を割り出す。その音でカノンとキルア、そして俺も我に帰る。
奴らは白煙が舞い上がる中、足を踏み入れてきた。
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