第63話 急展開

そして現在に戻る。あれから俺のユウタへのイメージが変わった。ユウタはアオイを救っていた。最初は良いように利用するのではないかと思っていたが今の状況を見る限り大丈夫なようだ。


俺は布団の中に入る。そして目を瞑る。



そして翌朝、6時をいいところに俺は支度する。彼は手はず通り何を使ったのかは分からないが家をくれた。最後まで俺に疑問をぶつけてきたが適当にあしらっておいた。俺からの疑問として何を使ったか聞いたが合法の手段だと言い切っている。ほんとにそうなのかは知らないが。


「もう帰るんだね」


「待ってる人達がいるからな。じゃあな」


俺はアオイにそう言う足早に山を降りて行く。


山を降りながら俺はユウタからもらった煙草を吸う。銃やナイフの使い方、煙草などはおじさんから教えてもらった。いや煙草はこっそり拝借しただけだが。


未成年の煙草の喫煙は法律で禁止されている。海外では入手する暇がなかったので手に入れるのは久しぶりのことだ。


俺は白い息を吐き出す。煙草は大事にとっておかないとなと思いながら。


山から降りてバス停で待っている間、今から帰ることを伝えようとするが、電波がうまく繋がらない。これだから田舎は…


俺は田舎ながらも煙草を吸うのをやめる。見られたらいろいろとまずいからな。


そこからは行きと同じ道で帰路に着く。そしめ東京都の蒲田駅に着いた頃には既に10時を過ぎていた。渋滞がいつになくひどいせいか着くのには多少なりとも時間がかかった。


そこから20分歩けばホテルに…という感じだがどことなく嫌な予感がする。


まず電話がまだ繋がらない。今回は電波が悪いとかそういうのじゃなくて音信不通なのだ。いや電波が繋がっている場所にはいるのだろうが一行に出る気配がない。


そして周りの人達の反応。何やら騒いでいるのだ。何を言っているのかは正確には分からないが、俺がビジネスホテルに向かうにつれ、その騒ぎは大きくなっていた。


ビジネスホテルまで角を曲がればもう少しだという場所ではたくさんの野次馬が集まっている。嫌な予感はますます加速する。


俺は走りながら近づくとそこにあったのはまず大きい護送車のような車両。赤いサイレンがついているがあんな警察車両は日本にあったのかと思うほどゴツくできている。現金輸送車を改造したような見た目だ。それが3台均等にホテルの前の道路に並んでいる。

次に黒色のレクサス。計10台見えるが、そのうちの3台が俺がいる道路を、もう3台は奥の道路を、残りの4台はビジネスホテルがある車線の対向車線に停めてあった。


そしてそれに乗っていたであろう屈強そうな男達は全員ライフルを構え、特殊部隊が着るような黒い服を着ている。野次馬達はその男達に向けてスマホを向けているが特に気にしている様子はない。


俺は最初、重大事件があったのかと思った。しかし彼らが着ている服は黒色で日本の機動隊が着る青とはかけ離れ、どちらかと言うとアメリカの部隊が着るような服だ。


「あの、何があったんですか?」


「え?ああ。それが俺もよく分からないんだ。ほんの10分前くらいには普通に車が走ってたからね」


本当に何があったか分からない。と俺が思った時、あることが脳裏によぎる。


まさかバレたのか。彼らが異世界から来たということが。


突拍子もないと思った。警察が動いた…いやただの警察ではなく公安、もしくは防衛省などの政府機関が彼らの正体に気づき、彼らを捕まえるために部隊を収集した。そう考えれば納得がいく。これがただの事件なら何故普通のパトカーがない。何故青い服の機動隊がいない。何故救急車が一台もないのかの説明がつく。


そして彼らの持つ銃を考えれば妥当だ。アナリスが考えていた最悪の出来事が起きてしまったことを俺は察した。

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ヒカルがホテルに到着する10分前

TSAエージェント 田村雅俊視点

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田村雅俊はエージェントリーダーを言い渡されていた。リーダーとして我々の目的である[人間]の生け捕りを行わければならない。


事の発端は明朝の朝5時。東京都のTSA地下基地の仮眠室で睡眠をとっていた俺に連絡が入った。


すぐに支度をしろ。ドイツで[人間]の行き先が日本だという証拠が掴めたと。


聞いた話ではドイツに向かったTSAエージェントが[人間]の痕跡を発見した後、近くの防犯カメラを洗いざらい見た結果、彼らがドイツの空港にいたことが判明し、そして彼らが日本の羽田空港が目的地としていることが判明したのだ。


そこからは早く、再び徹底的に羽田空港付近の監視カメラや聞き込み調査をした。その結果とあるビジネスホテルに彼らが泊まっていることを突き止めたのだ。


俺達はTSA内の機動部隊を率いて、そのビジネスホテルに向かった後、迅速に周辺の道路を封鎖、なるべく騒がれないように突撃準備をする。


また現地警察の邪魔が入らないように虚偽のテロ予告を近辺の施設に行い、注意を引かせる。そこにいる人々にとっては迷惑極まりないがこれも奴らを捕獲するためだと自分に言い聞かせる。


5分で機動部隊の準備が完了し、突入というタイミングで俺は言う。


「各部隊の隊長はボディカムを起動。奴らの顔を捉えろ」


ボディカムはヘルメットや防弾服に取り付けてあるカメラのことだ。万が一逃した時にすぐに追えるようにする処置など様々なことができる。


「最も逃すつもりはない」


雅俊は呟いた。

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