第50話 彼らは気づく

「ランダースアッカーア通りで火災発生」


「救急車が足りない!」


「バイエルン州警察の誘導に従ってください」


「瓦礫に埋もれてる人がいる!」


「事件現場に到着。指示を」


「化け物が上にいるぞ!」


「撃て!」


「全員落ち着いてください!」


「現場に得体の知れない物が転がっています」


「被害状況は?どこまで被害が拡大している?」


「巨人だ!」


「全員下がって!」


「奴ら斧を持っていたぞ!」


「俺の目の前で人が!」


「今すぐドイツ軍に出動要請をだせ」

 

「一体…何が起きたんだ?」

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アメリカ合衆国 ワシントンDC

ホワイトハウス 執務室


ヴォイドはテレビを見ていた。30インチのテレビの下画面には【BREAKING NEWS】と表示されている。ドイツのヴュルツブルクとかいう一生に行くことがなさそうな街をヘリコプターからの映像という形で目にしている。


街はところどころに燃えている箇所があり、ニュースでは『得体の知れない生物による襲撃が発生』とかいう映画にありそうなテロップが流れた後にスタジオに急遽呼び出されたのか髪がまだ整っていない専門家らしき男が自身の解釈を話し出す。


ヴォイドはそこまでとばかりにテレビを切った時、外でいたであろう黒服がノックをして入ってくる。


「大統領。ドイツの方で…」


「分かっている。すぐに現地にFBIの派遣許可をもらえ」


「了解です」


黒服はそう言うとすぐに立ち去って行った。

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中華人民共和国 海南省 楡林秘密空軍基地


『今現在奴らの居場所を把握した。ドイツだ。ロシアとの交渉は他の連中にさせる。すぐに現地へ情報収集に向かえ』


「了解です」


TSAエージェント フォードは中国国防大臣と話をつけ、海軍の撤退を終えてもらったところだった。


フォードは電話を切ると、独り言を呟く。


「まったく、いつからこの星は3日ごとにテロが起きるようになったんだ」


そう呟くと、再びスマホを扱う。そしてまた耳にスマホを当て、連絡する。


「フォードだ。これよりフランスのロング秘密空軍基地へと向かう。現地の着陸許可とブレスト停泊地に車を用意しておいてくれ」


フォードはそう言うと中国まで連れてきていたエージェント達をまとめる。


「今からドイツへと向かう!すぐに支度しろ!」


フォードがそう言うとエージェント達は荷物をまとめた。

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アメリカ合衆国 ネバタ州 ホーミー秘密空軍基地


「あなたがマイク アレックスで隣の方がケニー ロイドで間違いないでしょうか?」


「そうだが」


俺は基地に着くなり几帳面そうな男に話しかけられる。


「こちらへ来ていただきたい」


そう言うと装甲がついていないハンヴィーに手を向ける。


俺とロイドは言われるがままにハンヴィーに乗ろうとしたが、直後ある人物がすぐ傍に着陸していたUH-60 ブラックホークから出てきたことで足を止める。


「国防長官か?あれ?」


ロイドが声を上げると、国防長官のグレイグ ジェイコブも俺達に気づいたようだ。思わず敬礼をその場でする。


「国防長官こちらへどうぞ」


「彼らは?」


「アフガニスタンの米軍基地の生き残りです。彼らも重要な参考人です」


几帳面な男はそう言うとジェイコブが


「休め。通信で情報が送られてきたが、アフガニスタンの化け物を全て殺したと聞いた。よくやってくれた」


ジェイコブが俺達を称える言葉を言った後、几帳面な男が


「あなた達には是非見てもらい物があります。これも最高機密の物です」


「最高機密だと?」


ロイドが思わず声を上げるが几帳面な男は「えぇ、そうです」としか言わない。


几帳面な男はハンヴィーのエンジンを入れると、乗るような促す。俺とロイドは後部座席、ジェイコブが助手席へと乗ると、ハンヴィーは動き出す。


「国防長官は何故ここに?」


俺が気になっていたことをジェイコブに聞くと


「TSAと名乗る組織から機密情報を聞かされたんだ。私でさえも何が起きているのかは分からないが、ここに来れば少なくとも何も分からないことはないだろうとこの男と同じような奴に言われてな」


TSAの話についてはC-17の中で無線越しにだが聞いていた。SFの世界かと最初は疑ったがニューヨークの惨状を聞かされては何も言えなかった。


ハンヴィーはかまぼこ型の格納庫の中に入ると格納庫のシャッターが閉じる。中は灯りがともっていたためアフガニスタンの格納庫ほど暗くはない。


「ここにサソリはいないだろうな…」


ロイドは独り言のように呟くと、ハンヴィーの車体、いやハンヴィーが乗っている床がエレベーターのように下へと下がっていく。


「何だこれは?地下基地か?」


「そうです。秘密基地です。我々男達の憧れの」


ジェイコブの質問に几帳面な男は笑顔を見せて答える。丁度その頃には天井の灯りだけではなく、正面に見える大きな地下空間からの光がハンヴィーを照らしていた。






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