第2話 見知らぬ場所(2)

朝日の眩しい光が、自分の体をオレンジ色に染めている。


やがて、目を覚まして、体を起こす。


どのくらい寝ていたかは分からない。寝床が整っていないせいか頭が痛い。


チュンチュンという鳥のさえずりが至るところから聞こえ、朝を出迎えているようだ。




「おはよ~」




誰もいないが、声を発する。




見知らぬ場所に来てから2日目。


今日は、とにかく動きたくなかった。昨日歩き回った時の疲れがとれない。


今何をするべきか分からない。まだ頭が完全に覚醒していない。




しばらく仏頂面で朝日を見ていると、草むら動き出す。




「なんだ?」




もしかしたら人かもしれない。おそるおそる立ちあがり、草むらへと向かう。


俺が来た途端、再びガサガサと草むらが動き出す。やがて、草むらから出てきたのは…




見たことのない魔物だった。




その魔物は4足歩行をしており、鼻周りの部分が顔から突き出ている。


何より特徴的なのはその鼻。円形でできた、鼻の輪郭と2つの大きな穴。




その魔物は、俺の姿を見るなり、勢いよくこちらへと向かってきた。




「ちょっ!?まっ!」




とっさに身をひらりとかわす。


魔物は、その勢いを落とさずに、木々の中へと消えていった。


多分まともにくらってたら、骨の何本かは、絶対折れてる。


そして、今のでこの見知らぬ場所の手がかりが1つつかめた……ここは危険だ。




先程の出来事のせいで、完全に覚醒した俺は、いてもたってもいられずまた進むことにした。


かなり危ない気がするが、この傾斜を下ってみようと思う。


1歩でも足を踏み外せば、おそらく、粉々になりながら下山?することになるだろう。




さっそく、準備にとりかかる。


まず、鎧を魔法で洗い流す。寝床が寝床なのと、昨日歩き回ったせいか、ところどころに泥がついていた。そして、手に力を込めると、自身の手の上に水玉が浮いている。


そして勢いよく泥がこびりついた部分へと投げる(手に持ってはいないが)




泥は水圧によって、弾け飛んだあと、泥がついていた部分は、いくらか泥の茶色味が減っていた。




そして、この作業を何回か繰り返すと、鎧には、多少の清潔感が蘇っていた。




あとは、喉が乾いた。ひとます水だ。


水に関しては魔法で出せる。


再び手に力をを込めると、水玉が浮かんでいる。


その中に顔を入れると、チューチューと水を飲む。水玉から顔を出す時には、生き返った感じがした……実際生き返っているかもしれないが。




準備は整った、さぁ、行くぞ。となった時である。




どうやら、天は俺の味方ではないらしい。


突如曇ったかと思うと、雨がザーザーと降ってきた。


これで傾斜を下ったら、おそらく死ぬ。


仕方ないので、また、木々の影に入ることにした。


雨はこれで多少はよくなるが、湿気のせいで蒸しかえるような暑さになっている。




鎧を抜ぐことも考えたが、鎧を脱ぐと下着だけになってしまう。辺りの木々の枝などは、尖っているため、少しでも動くと怪我をしそうだ。これは駄目だ。




しばらく、目を瞑り、横になっていると、ふとある考えがよぎった。




雨で体を洗い流すことだ。




一応昨晩に水魔法で自分の体をバシャアとはしたが、それで足りるはずがない。


こちとらほぼ一日中歩き回ったんだ。




よし、早速行動に移そうと思った時には、雨が止んでいた。




やはり天は俺の味方ではない。




地面は雨でぬかるんでいて、歩くのには、とても困難だ。




もう嫌だ帰りたい、こんな訳の分からない場所に連れて来られて苦労するくらいなら、いつも通り冒険者の仕事をして、アパートに帰って寝たほうがまだマシだ。




異世界に行きたいと思ったあの頃の自分を結構恨む。


そう思いを募らせながらも横になると、寝不足だったのかいつのまにか眠っていた。




____________________




……誰かが俺を呼んでいる、誰かは分からない。紫色の髪だ。『おーい』と言っている。




はっ…!?


目が覚めると、そこには何もない…わけではなく人がいた。


紫色の胸くらいまで伸びた髪に、黒のローブを羽織っている。10代くらいの女の子だ。




「おーい?君?わかる?目覚めてるぅ?」




2日目にして俺はようやく人を見つけた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る