第3話 初めての人

「君大丈夫?中々起きないからさ」


彼女は横になっている俺にそう話しかけてくる。ついに人に会えた。この訳のわからない場所で出会った初めての人だ。


「えと、大丈夫…です」


「あっ、そう。なら良かった」


彼女は中腰の姿勢のままぶっきらぼうにそう返す。見たところ他に人はいないようだ。


「君もこの世界の住民?じゃないよね?」


彼女はそう聞いていた。世界?なんのことだ?それに住民ということは他にも人がいるということだ。


「えと、いきなりここに来ていて……この世 

界って?」


俺は起き上がりながらそう答える。それに応じるかのように彼女も中腰の姿勢をやめた。


「いきなりここねぇ、君運ないね。えっとね…この世界についてどれくらい知ってる?」


「えっと…何も知らないです。ここがどこだかも」


俺はそう答える。


「んーと、それじゃあ」


彼女は一息間を開くと続ける


「まず、この世界なんだけど、ここはいわゆる異世界ってやつなの。で、私達は転生?をしてこの世界に来た…正確には太陽系第3惑星地球に…ってことだと思う」


異世界?転生?話が突然すぎる。つまりここは元いた世界じゃないってことなのだろうか。

それに転生したということは俺は一度死んでることになる。彼女も転生したということは、彼女も一度死んだことになるが、見た限り目立った傷はない。


「え、じゃあ、俺達はその転生?をしてこの世界に……じゃああなたも転生したということですか?」


「えと、まぁ、そうだね。正直ここのところは私も分かんない。私だって突然こうなったんだし」


彼女は俺の質問に答えた後に続ける


「で、ここはその異世界のある国、日本っていう国らしい」


日本。聞いたことのない国だ。


「正確には、宮城県仙台市の泉ヶ丘ってとこらしい。ここまで分かる?」


つまり、俺達は突然この世界に来てしまったということらしい。


「転生…でも、俺空を飛んでた石にぶつかって…そこからは覚えてないですけど、死んだ気が」


「え?まじ?私もそうなってここに来た。あれがぶつかってきたら普通なら死んでると思ったんだけどねぇ。あとあれ彗星ね」


彗星、そういえばギルドで彗星がどうとかの話を聞いた気がする。それがぶつかってきたのか。


「いつからここにいんの?」


今度は彼女が質問してきた。


「ええと、その転生?してきたのは昨日で、ここはさっき雨が降ってたから雨宿りのつもりでここに」


「ふ~ん、てか今も降ってるよ」


言われて外を見ると、雨が降っていた。さっきほどではないが、ポツンポツンも小雨が続いている。


「私も昨日こっちに来たんだ。それでなんやかんやあって君を見つけたってわけ」


「はあ」


俺は適当に返事を返すこっちというのはこの世界のことだろう。


おもむろに彼女は真正面から俺の顔を見るとまた話しかけてくる。


「とりあえず、名前くらい自己紹介しない?私はアナリス。あっちの世界の有名な賢者って言えばわかるかな?」


「俺はガイムです…」


アナリスは自分で有名と言っているが、その名前はどこかで聞いたことがある。あと他人に自分の名前を言うのが少々苦手だ。


「ガイムか、よろしくね。あともう少し砕けた口調にしてくれない?私あんまり丁寧な口調好きじゃないんだよね。」


彼女はそう言ってくる。まじか。

砕けた口調って。まともに女の子と喋ったことない俺にとっての難関だ。


そんな俺の気持ちをよそに彼女は言う。


「どうせだし、一緒に行動しない?私も君もこの世界についてあんまり知らないし。まぁ、ガイムよりはこの世界について知ってると思うけど」


「え」


えぇ…まぁ、あまりに初めての出来事で正直どうすればいいか分からないから助かるが、一緒に行動か。

嬉しいが、なんというか、その…ちゃんといけるのだろうか。


「え、まぁ、はい」


俺は短くそう返事する。


「よし、決まりだね。とりあえずここ出ようか」 


アナリスは再びぶっきらぼうに返した。

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