エピソード33 夫れ事独り断むべからず

 皆さん、ヤンデレ女子って知ってますか。おそらくこれをお読みいただいた方が、各々ご想像なさった性格・言動で間違いないと思います。

 でもそれはもしかすると、キャラクターによるイメージで、現実にいた、もしくはいそうな人の総合的なイメージ像ではないかもしれません。


 というのも、僕自身、ヤンデレという言葉に重きを置いていなかったが為に、こうして匿名日記を書くまで追い詰められたのです。これは遺書であり、備忘録であり、カルテであり、そして懺悔ざんげなのです。

 どうぞ皆さん、フィクション、作り話、イタズラ、もしくはのろけ話だとお思いにならず、ひとつ僕の体験談をお聞きください。

 そしてもし、もしこの中にヤンデレの対処にお詳しい方がいらっしゃれば、是非ともご相談ください。



 詳しくは言えませんが、僕は今年、大学に入学しました。進学先には、高校の知り合いは誰もいませんので、少し緊張と不安を抱きつつも、新たな出会いを期待していました。

 ここでいう出会いは、もちろん、友情を誓った親友なども含まれますが、やはり彼女、という意味合いが強かったように思います。ですので、現在、ヤンデレ女子に苦しむこととなっても、それは僕の軽率さに起因するかもしれません。

 ですので、皆さんもご想像なさると共に、客観的な目で、どうか僕を導いてください。


 続けます。

 残念なことに、高校生の頃の下調べと違って、どうもサークルが楽しそうに思えず、新入生としては前途多難でした。

 講義でも早速一人。空いた時間は図書館で、まだ見ぬ明日のために本を読む日々。

 孤独か、それとも性欲か、僕はついに図書館である女子大生に声をかけました。

 その子は、仮に『S美ちゃん』とします。

 S美ちゃんは、スタイルもよく、不自然に話しかけた僕にも快くのってくれる優しさがあり、それだけではなく、なんと文学部の哲学専攻であるのも一致していました。


 ついに青春が始まるのか!と内心は興奮していながらも、恋人ではなくともせめて女友達になってくれれば、と夢見がちなのか現実的なのか曖昧な、女性貧困状態でした。

 今思えば、S美が本当に僕と趣味が合っていたのか、それすらも怪しいのですが。


 とにかく、S美とは意気投合し、僕たちはよく一緒に過ごすようになり、そして彼女の方から告白してくれたのです。

 そして僕たちは、いわゆる初夜を迎えようという雰囲気になったとき、彼女の本性を知る事となったのです。

 それは、マゾやサドであった、というような本性ではなく、むしろ仮面ペルソナの奥で笑っているような異常性、そう、ヤンデレだったのです。


 正直、忘れたいという思いもあるので、克明に描写はしかねますが、僕は先に服を脱いだという無防備な状態で、彼女はどこからか取り出した小さな折り畳みナイフで、僕を脅しつつ、『カワイイ』や『好き』と耳元でささやき、ついにはたいして女性の番号も記録されていないのに、嫉妬したかのようにスマホをナイフのつか?持ちての部分で叩きつぶしていました。

 まさにめった刺しといった感じで、情けないことに、僕はどうすることもできませんでした。


 ようやくS美が落ち着いたように見えたため、僕は彼女に怒鳴りました。初夜としてはまさに最低です。

 すると彼女は言いました、『私にも同じだけ要求していいんだよ?』。

 あの目は一生忘れられないと思います。


 →→→

『一生忘れられないなら、S美の思う壺では?』


 確かにそうかもしれません。そう思うと、何をしても怖くなってきました。


 →→→

『いっそのこと、S美の望み通り、同じか、それ以上のこと要求してみれば?』


 そうした方がいいんですかね?正直、今は冷静に考えられないというか………


 →→→

『今からでも抱けw』


 流石にそれは………


 →→→

『そこからなら、ホテルに近いし、まだ間に合うってwww』


 え?僕、場所のこと書いてませんよね?

 掲示板への書き込みは初めてなんですが、現在地とかって設定によって表示され

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