09話.[されてしまった]
「
「知らないよ、静はともかく歩のことも知らないのか?」
「知りません、連絡がきていませんから」
せっかく遊びに来たのに彼女達の父親しかいなかった。
それはそれで構わないが、どうせならどっちかだけでもいてほしかったものだと思う。
「翔吾、暇なら買い物に行くから手伝え」
「えぇ、人使い荒いですね……」
「いいだろ、歩と付き合うのを許可してやっているじゃないか」
邪魔されても嫌だからと外に出たタイミングでふたりと遭遇。
結果的に四人で買い物に行くことになった。
……これなら車でくればよかったと後悔したがもう遅い。
「歩、どこに行ってたんだよ?」
「どこって、男の子のお家、かな?」
「「は?」」
静の方を見たらこくりと頷かれてしまった。
いや待て、聞いたのは俺だけど普通答えるか? そういうことを。
「そこはあんまり広くはない場所でね、男の子がひとりで住んでいたんだ」
「って、相馬先生の家かよ」
「うんっ」
はぁ、心配して損した。
あの人にはまだまだ頑張ってもらわなければならない。
なにかされているようなら歩の味方をしてやってほしいしな。
それになにより、あの人は静が好きなんだから心配する必要もないわけで。
「あなたは唐突に家に来るわね」
自然とふたりで見て回ることになったとき静がそうちくりと指摘してきた。
「た、たまにはいいだろ、最近はあんまり行けてなかったんだから」
「別に責めているわけではないわよ、私もあなたに会いたかったから」
「本当かよ……」
最近はどこか表情が柔らかくなってきた気がする。
間違いなく先生パワーだと分かる、ただ、なんとなく悔しかった。
だってどちらかと言えば俺の方がずっと近くにいたわけなんだからな。
離れるつもりもなかったのに終わるからということで離れようとされるし。
「おいおい、姉妹で同じ人間を好きになると地獄だぞ」
「あなたのことは好きよ、大好きなのは陽一さんだけれど」
「静は変わったな」
こうして一生懸命菓子を選んでいるところを見ると余計にそう思う。
これまでは遊びに誘って遊びに行ってもお金をあまり使いたくないからとか言っていたのに。
「あ、お給料が入ったからなにか買ってあげるわよ? まだまだこれからも姉妹であなたにはお世話になるわけなんだから」
「いらねえよ、寧ろ俺が買ってやるよ」
俺の方が稼いでいると言ったら露骨に拗ねたような顔をされてしまった。
それが可愛くて頭を撫でてみたら姉妹から攻撃されてしまい。
「ちょっと翔吾君っ」
「浮気じゃないぞ」
「私にもしてよっ」
誤解されても嫌だから妹の方には多くしておく。
そうしたら静が微笑んでいたので、それを見られてなんとなく得した気分になったのだった。
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