デウス・エクス・マキナ


 ある時、一人の魔法使いが一つの絡繰からくりを作り上げた。

 任意の時間に人を送り込むことが出来るという史上初の大発明だ。その名もクロノス。

 世界中の人々がざわめいた。その絡繰を使えば、未来にも過去にも行けるのだ。

 歴史の全てをこの目で見ることが出来る! 好奇心旺盛な魔法使いは自分の発明に胸をときめかせた。

 しかして魔法使いは、自分の思うまま歴史を見物に行くことは出来なかった。

 未来の魔法使い自身の使者を名乗る人間が古びた絡繰に乗ってやってきたのだ。

 使者はこのように言う。

「近い将来、この絡繰を巡ってとてつもない争いが起こる。その争いのせいで私たちの時代は急激に荒廃してしまった。私は未来を変えるためにやってきた。今すぐクロノスを壊してほしい」

 魔法使いは考えた。今ここで絡繰を壊せば、確かに将来起こるという争いは避けられるだろう。しかしこの時代のクロノスが無くなれば使者が乗ってきたクロノスはどうなる?

 魔法使いはこの考えを使者に話した。

「なるほど。この時代のクロノスがなくなれば、確かに私は過去ここへ来ることは出来ない。そうなるとどうなる?」

 使いがやって来なければ絡繰を壊すことも無いだろう、と魔法使いは答えた。

「しかしそうなると、やはり私はこの時代へ来ることになるだろう」

 これでは永遠に終わらない。

 魔法使いとへ来ることは出来ない。そうなるとどうなる?」

 使いがやって来なければ絡繰を壊すことも無いだろう、と魔法使いは答えた。「しかしそうなると、やはり私はこの時代へ来ることになるだろう」

 これでは永遠に終わらない。

 魔法使いと使者は話し合ったのち、絡繰を誰にも見つからないような場所へ隠そうということになった。



 今でも世界のどこかで、その歯車は回っている。

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