藁にもすがる思いで

家に帰り、ぼんやりしていると、今日の出来事がフラッシュバックする。




テスト時間中に教師が大きな声を出す。


夏美の叫ぶ声がして振り返ると、怜佳が消えていく。


怜佳は消えていることに気が付いていないのか、きょとんとしている。




その様子が余計に悲しい。


寝て起きたら、いつも通りに学校へ来ているのではないだろうか。



そんなことを思いながら、布団にもぐる。



前に見た、光が差し込む図書館。

カウンターには誰もいない。

なぜここに来たのかわからないが、図書館内を散策してみることにした。


図書館の窓は大きく、外からの光はよくはいる。

本棚の本を見てみても、タイトルは書かれていないし、取り出すこともできないようだ。

大きな本も小さな本もそれは同じようで、他に何かめぼしいものはなさそうだ。

 

今回なぜここに来たのだろうと疑問に思いながら、カウンターに向かう。

すると、どこからか声が聞こえてくる。


「ここに来る方法は、誰もいないことと深層心理から欲しいと思っている情報を探していること。忘れないでください。」

聞いたことのない女性の声が聞こえた。

 


アラームの音が鳴り、目を覚ます。

なんだか、寝た気がしない。


夢の中で謎の図書館にいった。

そこで女の人が言っていた、図書館への行き方を思い出す。



ーーー誰もいないことと、深層心理から欲している情報を探していること。



ひとまず、学校に行く。

怜佳は何事もなく登校してくるんじゃないか、そう期待して歩みを進める。


教室に入ると、クラスメイトはまだ半分くらいしか来ていないようだった。

教室の中は、いつも通り振る舞おうとしている奴もいるがどこか空回りしている様子で、それに応答する奴も力なく笑っている。


徐々にクラスメイトが登校してくる。


夏美はチャイムギリギリに登校してきた。

顔は暗く、おそらく昨日泣きはらしていたのだろう。



教師が教室に入り、チャイムが鳴る。

怜佳以外はみんな登校していた。


担任の教師は昨日の怜佳が消えた件について、簡潔に話す。

やはり、怜佳が消えたのは現実で、何事もなく登校してきたりはしなかった。


午前中の授業は内容が全く頭に入らなかったが、それは僕だけではなかったようだ。問題を解かせたり、音読させたりする教師も、生徒がうまく答えられなくても何も言わなかった。


昼休みになると、わずかな希望を求めて、図書館へ向かう。

謎の図書館へ行くのだ。


夢に出てきた声の女性は、場所について指定はしなかったが、学校内で人が少ないところ且つ、以前にその図書館へつながったため、図書館へ向かう。

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