007. 持ってて良かったグロ耐性

 一杯分のサーキで発動したDrunk Monkeyの時間をほぼ全て使って、山賊のアジトに到着。


 元々は小さな村だったのだろう。

 まだ人が住んでいそうな民家が何軒か見えるが、後から作られたものであろうバリケードや、正門に掲げられた灯りなどから、ここがすでに堅気の村ではないことが分かる。


 時刻は深夜。

 ここに着いたのは夕方で、スキルが解けたのもその頃。

 そろそろ肝臓も一息つけたはず。アジトも寝静まっている。


 港町を出発する時に買っておいた、店に置いてあったものの中で一番度数が高いらしいサーキを飲む。

 身体が温まりスキルが発動する。

 行動開始。



 前世で得た知識だが……ファジーマウスの頭をピンセットで固定した上でしっぽを強く引っ張ると、脊髄が抜けて即死状態になる。

 触ると多少動きはするものの、それらは生体反応であり、死んでいることに変わりはないんだとか。


 ということで、ファジーではない山賊たちにも同じ施術をしていく。

 そのまま引っこ抜くのは流石に無理なので、両腕で頭を掴みやすい体勢にしてから、九時の方向を目安に勢いよく捻る。

 異世界人の脊髄が自分が知るものと同じ構造をしていることを期待しつつ、一人一人良い子が寝る時間にしていく。


 下っ端全員が多少動くようになった後、親玉が居そうな、いかにもな民家にお邪魔する。

 ギルドにあった手配書通りの、赤毛の豚の亜人を見つける。分かりやすくて助かる。大の字で寝ている。やりやすくて助かる。


 親玉は珍しい亜人のようで、豚らしく肩や首回りの筋肉がゴツくて太い。

 ラリーの腕力で捻るのは諦めて、刃物で首の動脈を切って失血死させることにする。


 顔面に毛布を厚めに被せる。

 右手でしっかりとナイフを持ち、骨に当たるまで力いっぱい刃を通す。

 三度目にして手に硬い感触があり、やがて毛布が赤黒く滲んでくる。


 少し離れて様子を見る。


 豚は始め起き上がろうとしたが……上体を起こした後、またすぐに横になってしまい、それから首を押さえたまま動かなくなった。



 ここまでで体感二時間ほどだろうか。


 豚の血が全て抜け切ったのを確認した後、明後日の方を向いたままの下っ端を同じ民家に詰め込んで火を放つ。

 豚の首は後で使うので燃やさずに避けておく。


 山賊に混じっていた女性を集め、水や食料と一緒に民家に入れて外から閉じ込めておく。

 救助、もしくは後始末をする役はギルドに任せよう。


 元民家を一軒一軒回って山賊の装備を回収しておく。賊にしては中々良い装備を持っている。へっへっへ。


 脂の匂いにつられて来たモンスターをついでに燃やしている最中に、運良く豚の頭がぴったり入る大きさの木箱を見つける。さっそく毛布にくるんだ首をしまう。


 そうそう忘れるところだった。顔を隠すのにいい感じの布を探す。

 頭巾として使われていたのであろう、暗い無地の布がたくさん見つかったので、上下セットで八人分くらい持って帰る。


 そうしているうちに民家がほぼ灰だけになったので、スキルの水を上からかける。

 地面の土と混ぜてよく揉んでおく。


 山賊が持っていた剣を墓標の代わりにして、討伐終了。


 酒はとっくに抜けていて、身体はくたくたで、辺りは薄ら明るくなっていた。

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