006. 仲間が欲しいけど

 翌朝。

 今日はDrunk Monkeyについて判明したことを整理する。


 なんとなく分かったのは次の三点。


 ・酒を飲んで酔いが回るとスキルが発動する。酔いが醒めるとスキルが解ける

 ・飲んだ酒のアルコール度数が高いほど、スキル発動中の『自分の速度』が上がる

 ・上がる速度は恐らく、飲んだ酒のアルコール度数倍。度数が五度なら自分と世界の時差が五倍になる


 多分、Love Doll Masterも何らかの条件を満たすと発動するタイプのスキルなのだろう。条件を満たす機会はまずなさそうだが。



 新たに二つ目のスキルが使えるようになったのはいいとして……いかんせん、冒険者稼業との相性が悪い気がする。

 飲むお酒の度数にもよるが、昨晩のイレーヌ嬢の様子を見るに、人とのコミュニケーションが必要な依頼は達成困難。モンスターの討伐に使おうにも、遭遇時にタイミング良く酔い始めるのは難しい上に、途中でスキルが解けたらジ・エンドである。

 かと言って、四六時中酔っ払っておくのは肝臓がもたない。……というより、自分が依頼人だったらそんな酔っ払いに依頼を受けて欲しくない。


 元々そのつもりではあったが、冒険者としてサポートしてくれる仲間が必要になる。

 できればモンスターとの戦闘が得意な、そうでなくても最低限、言葉で意思の疎通が可能な、信頼できる仲間が欲しい。


 ところで、この世界に来てから見かけた亜人はイレーヌ嬢ともう一人、ギルドで見かけた巨大雄屈強筋肉ミノタウロスの二人だけだった。

 町で聞いた話だが、この国では一年ほど前から国策として亜人を捕らえて強制労働をさせているらしい。

 収容所行きを免れるのは、アルジーヌ王国が認定する特定の職業に従事している場合のみ。ギルドの職員や冒険者もその内の一つである。イレーヌ嬢は前者、巨大雄屈強筋肉ミノタウロスは後者だろう。


 ちなみに、本人が冒険者でかつC以上のランクであるか、Cランク以上のパーティーに所属している場合は、亜人であっても強制収容されないで済む。


 そこで、である。『Cランク冒険者になって収容所から助けた亜人が恩を感じて一人くらいは仲間になってくれないかなー作戦』である。


 この世界の魔法や科学技術の発達度合いを見るに、顔さえ隠していれば後で捕まる心配は多分ないと思う。Drunk Monkeyで加速していれば余計に大丈夫だろう。

 収容所があるという具体的な場所はすでにいくつかリサーチ済。Cランクに上がる当ても一つだけあるが……こっちは交渉次第。でもまぁ多分大丈夫。


 というわけで、山登りの準備を始める。

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