004. 何が出るかな?

 この世界には大きく分けて二種類の亜人が存在する。


 一つは獣人。

 混ざる動物の種類は多種多様で、より動物の姿に近い方が珍しいらしい。


 もう一つは小人。

 成人しても身長が百センチほどしかなく、人間の子供とほとんど見分けがつかないらしい。


 また、彼らの寿命は人間よりも長く、身体が成熟するまでが早い。


 大昔には海の生き物や、今はもう絶滅してしまった生物の亜人も居たんだとか。

 あと千年早く転生できなかったことが悔やまれる。



 要するに何が言いたいのかというと……受付に女性のウシの亜人、いわゆるミノタウロスが居た。


 正面から分かる獣要素は頭の角だけで、それ以外は普通の人間に見える。

 しっぽの有無はこの向きからでは確認することができない。見えない。スカートで隠れている。見えない。


 ラリーの身長が百と四十程度だとして、この受付嬢は百と七、八十くらいだろうか。出るところは出ていて、健康的にくびれている。上も下もでかい。


 人間基準での十代後半くらいに見えるが、実年齢は五、六十代くらいなのかもしれない。油断できない。


 とりあえず、今回の転生が間違いなく異世界への転生だと確認できたところで、ここに来た本来の目的を果たすことにする。


「はじめまして。私は当ギルドの受付嬢、イレーヌと言います。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「冒険者登録ですね。それでは初めにギルドと冒険者について説明させていただきます」


「ギルドには主に三つの機能――依頼の仲介、金銭と物品の口座、他支部との通信網などがあります。冒険者の方であれば、全国どの支部でも割安で利用することができます」

「冒険者にはAからEまでの五つのランクがあります。ランクの昇級は、依頼の達成や本人の資質などをギルドや王国の機関が総合的に判断して決定します」

「各ランクの基準はEから順に、新人、常連、ベテラン、ベテランかつ特定の地域に大きく貢献した人物、同じく国家の発展に多大な貢献をした人物、となっています。まずはDランクを目指してみましょう」


 渡された板に血を垂らす。痛い。


「こちらがギルドカードになります。何をするのにも必要になりますので、肌身離さず持っていてください。再発行には時間と理由が必要になりますので、無くさないでくださいね」


「説明は以上になります。何か質問はございますか?」


 しっぽの有無が気になったが、ミノタウロス的にはセンシティブな領域かもしれないので、オススメの装備屋など無難な情報を聞く。



 適当な会話の後、最後に駆け出しの冒険者が注意するべき点を聞いておく。


「とにかく自分の命を最優先にしてください。注意が必要なのはモンスターだけではありません。特に、山賊の拠点がある東北の山には近づかないようにしてください」


 詳しく聞くと、半年ほど前からこの町の周辺で山賊が出没するようになったらしい。

 単なる通行人や行商だけにとどまらず、護衛や討伐に向かった冒険者も少なくない数が犠牲になっているそうだ。


 最近になって山賊の親玉が賞金首に指定されたが、討伐に積極的な人材が集まることもなく、依然としてギルドに明るい見通しが立たない状況が続いているという。


「せめてもう少し人手があればいいんだけど……ごめんなさいね。愚痴を聞かせちゃって」


 イレーヌ嬢と別れの挨拶を交わし、部屋に戻る。


 さて、どんなスキルが出てくるかな?

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