003. これからの目標

 はい、会えませんでした。


 再び外出する気分でもないので、今日は終日宿に籠って今後の身の振り方を考える。


 自分が転生させられた原因に心当たりがあるとすれば、前世でまともな死に方をしなかったことだろうか。

 親切な神様から人生の差し戻しを受けたのかもしれない。余計なお世話である。


 ラリーの年齢だと、自然に死ぬまで短くてもあと四、五十年ほどだろうか。長い。

 かと言って、今世でもまた投げやりに人生を終わらせようものなら……次の生は人じゃなくて虫やモンスターに……みたいなことにもなりかねない。


 人生の手を抜けない。真面目に考えないと。

 それに、こうして『ラリー』から身体を貰った以上、人並みくらいには幸せにならないと。彼にも悪い。



 まず直近の問題として、とにかく衣食住を確保する必要がある。

 食と住はお金さえあればなんとかなる。衣は職業を示すものだと考えると、やっぱり働き口を探さないといけない。

 しかし昼間に町を見て回った限りでは、出自不明な馬の骨を雇ってくれそうな店はどこにもなさそうだった。


 となるとやはり冒険者。

 一人でもできる冒険者。

 異世界転生といえば冒険者。


 多分授かるであろう人生二周目特有の強スキルがあれば、その日暮らしくらいは楽勝のはず。


 そうして冒険者をしているうちに人脈が広がり、知人の紹介でめぼしいところに転職。安定した収入を得られるようになったら、都に居を構えて定住……完璧な異世界ライフプランニングである。


 他には……そう、再び男に生まれたからには、男の三大欲求である『飲む』『打つ』『買う』もやっておくべきだろう。

 おいしい食事に、生活を彩る刺激と、美しい女性。

 この三拍子が揃った人生を無事送ることができれば、さすがの神様も文句はないはず。


 それと幸いなことに、ラリーの容姿は現時点で非常に可愛らしく、年齢的にも成長期はほぼ過ぎているはずなので、今後この容姿が大きく変化する可能性は少ないと思われる。

 仮に、こっちの世界でそっちの性癖を持っている女性とエンカウントできれば、物語の序盤にして早々にエンディングを迎えられるかもしれない。


 そうと決まったところで、冒険者の登録をするべくギルドの受付へ。

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