第3話 オタク泊まるはずだった

なんだかんだと理由をつけられて仕方なく予約しておいた旅館に着いた。


「へーなかなかいい感じの所じゃない」


無理矢理ついてきて何を言っているんだと思いながらもフロントの人に聞いてみる。


「予約してある安福です。急で申し訳ないのですがシングルもう1部屋空いてませんか?」


スタッフは2人を見つめて「少々お待ちくださいね。」そー言って奥へ行ってしまった。


あたりを見渡すともう1人フロント近くのソファーに座ってこちらを見ている人がいる。


俺は責任感があるのか「もし空いてなかったら他を一緒に探してあげるから」

とつい言ってしまった。


「ほんとにー?優しいんだね。カ・ズ・ヤ」

彼女は満面の笑みでこちらを見ている。


すると奥から出てきたスタッフから以外な言葉が返ってきた。


「安福様、良かったですねー。4人部屋が空いたそうなので今からご用意いたしますね。」

とりあえず一安心という感じで、2人とも目でやったねと言わんばかりの表情でニコッとする。

「それとお値段は変更なしで、そちらのお連れの方もご一緒でも構いませんか?」


「もっもちろんいいですよ。こちらこそ急なお願いなのにありがとうございます。」


「それでは準備しますのでお待ちください。」


「なになになにー?大きい部屋があいたの?チョーラッキーじゃん。良かったねカズヤ。」


ホッとしたのかなんか腹が空いてきた。グー


部屋は2階の階段横で角部屋。廊下はちょっと薄暗く床は板張りで所々できしむ。2人のスリッパの音だけが鳴り響く。

非常口のライトが切れている。

(そういえばフロントの奥にいたオーナーさんぽい人がこっちを見てニヤついていたのが気になるけど)


鍵を開けて中に入ると江戸間の六畳サイズの部屋が2つあり襖で仕切りが出来るようになっていた。


「じゃあ奥の部屋を使いなよ。俺はこっちの部屋で寝るからさ」


「うん、わかったありがと。でもお腹空いてない?何かご飯食べに行こうよー。」


「そうだね。荷物置いたらすぐに行こうか?」


2人は荷物を置き必要な物を出して準備した。


「準備OK。カズヤイコー!」


その瞬間2人は猛烈な光に包まれてしまう。


「ん、なんだ?」

「えっなんなのこの光?眩しすぎて目が開けられない。ねーねーねーカズヤどこ?コワイ怖いよー!」


眩しくて目が開けられないほどで、ただ目を閉じているしかなかった。


どれくらい経ったのか気が付いたら気を失っていたらしい。


辺りを見回して見るとどうやら森の中のような所にいる。


そういえば一緒に居たあの娘はどこだろうと探して見るが見当たらない。


森の奥、近くの川など周辺を探し回ったが一向に見つかる気配がない。


しかし、さっきいた宿屋とはかけ離れた場所にいるようだ。


あきらめて川沿いにとぼとぼと歩き始めた。このまま川沿いに行けばどこかの町に出られると思ったからである。


「あーぁこれはきっと俗に言う異世界なのかな。」なんて言っていたら返事が返ってきた。


「止まれ!!貴様は何者だ!?」


驚いて振り返って見るとそこには布や皮であしらわれた服と長い剣を腰から下げているかなりセクシーな格好をした女の人が立っていた。


長い髪は銀髪でそれを赤いリボンで綺麗に結んであり、出ているところは出ていて引っ込むところは引っ込み、まるでモデル並みの体型をしていた。


でも見たことがあるようなないような誰が見ても童顔できっとモテるんだろうなと言う顔立ち。


モデルか女優さんでも引けを取らない顔立ち出立ちで非の打ち所がない。


そして風が彼女の髪をすり抜けて一瞬だけ時が止まった気がした。


「おい貴様!何者だと聞いている。何をボーッとしている!」


ふと我に帰り目の前にいる銀髪美女を顔を向けた。


「さっきまで宿にいたんだけど、なんか急に目も開けられないほどの光に包まれて、そんで気がついたらここにいたってわけ・・・なんだけど」


「ここっていったいどこ?」


銀髪美女は何を言っているんだと言わんばかりの怒った顔で腰にある剣を抜こうとしている。


「貴様はアルジャの手下かスパイだな?」

「ここで会ったのが運の尽き、覚悟しなさい。」


とうとう引き抜こうとしていた剣を全て出し終え、剣先がこちらに向いている。



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