34 うちのも天然物だっつの!!

 続々と出現するお化けたち、みんなはそれに夢中。大量のお菓子どけてくれてんのはローラちゃんだけ。かなし。


「なぁお化けってこんな来るもんなん?」

「ちょっと多いですよね。街で見るより多いかもです」


 お菓子どけるんはキリがないおもたんか、ざばっとお菓子の山から引き上げてくれるローラちゃん。魔都やから聖都より邪悪感あるからゴーストいっぱい的な感じなんかな。


「ステラー! 流石にもう窓とかしめよ? お菓子に窒息死させられるで」


 辺りはすでにお菓子だらけ。これガキの頃なら大はしゃぎやったやろうな、今では後処理どないしよか? って疑問しか浮かばん。歳は取りたくないもんやね。


 ――戸締りして、部屋に残ってたゴーストを一掃した頃。


「わちゃわちゃも治ったし、みんなにあれ言うとくか」

「ですね」


 辺り一面に広がるお菓子を適当にむしゃむしゃつまむ。なんかこのドーナツ独特な味すんな、でもうまい。


「坊主、あれってのはなんでい?」


 イカゲソ食いながら聞いてくるおっさんを筆頭に、サラちゃんたちも興味津々に聞いてくる。っちゅうかなんでイカゲソがお菓子の分類? おつまみやないの?

 まぁええや。見せた方が早いな、サッとイマジネーターでバーサーカーモード切り替える。ボンっと出るおっぱいに、キュッと引き締まるくびれ。それに合わせて、服のデザインも変わる。


「これのことやで! うっふ〜ん」


 両手でおっぱいを持ち上げる俺を、横でステラが手ぇひらひらさせて強調させてる。なんか殺気感じんねんけど……気のせ――


「なに? これがどうしたって?」


 ――い、やなかったたたた! もげるもげる!!


 鋭い目つきで、俺のボインをガシッと握るアリアちゃん。クッ! 体は好きにできても、心までは……ぁあひんっ!


「か……堪忍してぇ。新しい快感を覚えさせんといてぇ! アリアちゃんより遥かにでかい胸でごめんなさ痛い痛い痛い!!!」

「なに? 私より?」

「なんでもないです勘弁してください。とりま説明させておくんなまし」


 強い力で握られてた胸が、解放されたことによってポヨンとはねる。


「カナタ様! 今すぐケアを!」


 そう言うて、蛇女ちゃんに乳をもみしだかれる。なんすか新手の羞恥プレイ? まぁ気持ちいしええや。揉みしだかれたまま、こうなった経緯を話していく。


 ――沈黙が続く。


 俺は、ありのままに説明した。なんか、大爆笑されるかおもてたのにこうも静まり返ってるとなんか気まずい。


「ハハッ……ハハハ! もう無理! 笑い堪えられないっしょ! どう生きたらそんな楽しいこと起こるの!」

「ぼ、坊主! ずいぶん色っぽくしてもらったじゃねぇか! ワハハハハ!!!!」


 堪らず吹き出すように、言い出すメアとおっさん。


「二人とも、だめだよ。こんな悲劇を笑っちゃ、カナタさんに失礼でしょ?」


 予想通りに笑い死ぬ寸前の二人を、真剣な表情で止めに入るローラちゃん。「お父さん、もういい歳なんだから常識を弁えて」って言われてめっちゃしょげるおっさん。メアはまだ笑い続けてる。あ、蛇女ちゃんが制止に入った。


「ローラちゃん大丈夫やで。こんなん笑うしかないやん? それにな、結構便利やと思うねん? だってこの体やったら堂々と女風呂入れると思うんよ。それだけで価値あるよな」

「カナタ、そんなことしたら本当に捥ぐわよ?」


 冗談ですやん。だからやめて? そんな怖いこと言うの。

 手をグッパグッパ動かすアリアちゃんの横で、自分の身を抱き寄せるように腕をまわし身をひくローラちゃん。

 そんなローラちゃんは、「お風呂は……もう少しお互いを知ってからで……お願いします……」なんて言う。あれ? 案外満更でもない? てっきり、おっさんと同様に常識を弁えろ言われるんかおもた。


「坊主……」


 あ、あかん。お父様がお怒りや。おっかねぇ。


「てかさ〜魔王様! バーサーカーモードなんかうちと似てね? 背丈とかは違うけど、雰囲気とかが。特に胸同じサイズくらいじゃない?」


 ナイスタイミングで割り込んでくるメアは、豊満な体躯を惜しみなく俺に寄せる。俺は今女の子やからか、この距離感に違和感を感じへん。それどころか、自分の胸押し当ててメアと張り合ってる。


「確かに言われてみればせやな。でもやらかさは俺の方が上やな! 天然物のぱいぱいには敵わんやろ」

「うちのも天然物だっつの!!」


 ぐいっと胸を張って俺を弾くメア。弾性はメアの勝ち。


「なぁメア、おっぱい揺らしてバチバチの肉弾戦しよるけどさ? 動きずらないん?」

「ちょっと重いなぁ程度かな」

「まじかよ、今度体の動かし方教えて」


 この重りハンデはわりとしんどいからな。気にならん動き方とか精神論があるならぜひ知りたいもんやな。


 よしこの話題はこれで終い。そろそろ姿戻しとこ、このままメアと胸談義してたら捥がれかねん。誰にとは言わんけど。



 ***



「なぁ、誰連れてったらええと思う?」


 香ばしい肉の香りが漂う空間で、木製ジョッキ片手に俺が話しかける相手は……。


「なぁそれ私に言うことか? ステラさんとかに聞く方がいいんじゃないのか?」


 そう言うのは、お盆に料理のせて配膳するお仕事モードのリエルちゃん。もう偽らんって決めたリエルちゃんは、接客態度でもその意志は貫いてるみたい。予想外の好評で、客足が増えたらしい。


「ステラに聞いたら絶対、ついてくるってしつこいからな」

「でもステラは絶対連れていくんだろ?」


 確かにステラは右腕みたいなもん。連れていくねんけど、「私一人で十分じゃないですか?」とか言いかねへんからなぁ。こういう情報集めは人数おらなあかんからなぁ。てことで誰を北の国に連れてくか絶賛吟味中。


「ステラたまにアホなるから聞かんようにしてる。でな? 俺的にはさ魔族でも人間とほぼ変わらん見た目の子なら問題ないおもてるんやけど、なんかの拍子でバレたらあかんからそこなんとかせななぁとか考えたり……なんかいい案ない?」


 まじでわや。もう単身で乗り込んでオオカミくんボコる方が早いんちゃうか? いやでもそれやと今度は俺が警戒されるだけやない? どないしよ、俺の鳥頭では理解が程遠い。


「バレたくないの? カナタさんそういうの気にしそうにないのに」

「バレるのは構わんけど、こんな悪状況でバレたら後々めんどいしな? 好条件になったらネタバラシ。これが策士というわけだよ」


 ふむ、と考えるような仕草を見せるリエルちゃん。


「私らの時は……好条件だったか? あれ一歩間違えば完全に討伐されてたでしょ」

「んー? あれはあん時に明かすのが一番かっこよかったやろ」


 言われてみれば西の国んときは、おっさんとかサラちゃんみたいな人格者おらんかったら詰んでた可能性あるな。今回は慎重に行動しよ。


「ま、まぁその話は置いといてさ。連れてけばいいんじゃない? 私を……さ」

「……はい?」


 少し恥ずかしそうに、視線を逸らすリエルちゃん。

 え? 今なんて? 連れてく? 


「だから、その。バレてもなんの問題もない私なら大丈夫だろ?」

「俺としては嬉しいけど……店大丈夫なん? 何日あっちおるかわからんで?」


 向こうで頻繁に移動魔法使うわけにはいかんからな。現地で宿探してしばらく泊まり込む事になる。んなことなったら、リエパパたち困らん?


「その件なら、大丈夫です」


 料理してたリエパパが、エプロンの裾で手ぇ拭きながらやってくる。落ち着いたような、それでいてちょっとバツ悪そうな顔で。


「リエルは今、正式に手伝ってもらってるわけじゃないんです。なので、何日連れ出してもらっても大丈夫です。カナタさんのご迷惑でなければですが」


 前は継がそおもて必死に店手伝わせてたみたいやけど、今は本人の意思を尊重してるらしい。リエルちゃん優しいから、強制されてなくても店手伝ってる。聖人か?


「迷惑やないよ。助かるわ!」


 リエルちゃん度胸あるし、人との関わりも上手いし。情報聞き出したりする時、リエルちゃんの力が必要になる。でも……。


「リエパパ、人手大丈夫なん? 忙しなってんのやろ?」

「ええ、確かに。忙しくなっていますが、なんとかできますよ」


 リエパパはこう言うとるけど実際まじできついと思う。俺が娘連れ出してる間に過労で倒れたりしたら申し訳ないしなぁ。


 こうなったらあれしかない。ぽちぽちスマホいじる俺を、不思議そうにみるリエパパ。

 俺がこのタイミングでスマホ出したんには、当然理由がある。パパッと短文を送って、返信を待つこと十秒。ポンっと、『了解しました!』って承諾される。そっけなかったらあかんおもたんか、たこ焼きさんスタンプも送られてくる。


「リエパパ。リエルちゃんの代わりっちゅうわけやないけど、うちの従業員ちゃんこっちに二人送っていい?」

「え? こちらとしてはありがたいですが……よろしいのですか?」

「全然ええで! 従業員ちゃんに出張頼むわってメッセ送ったら快諾してくれた」


 めっちゃ丁寧にお礼してくれるリエパパ。それに合わせてリエママもお礼してくれる。いやいやお礼言うのは俺の方やわ。

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