27 まさかのフォームチェンジできる系女子!?

「もうええや、さっさと片付けりゃ終いやな」

「魔王様いつのまにか脳筋キャラなった感じ? 前なら時間が解決するやろ〜的な感じっしょ!」

「世界征服本格的にしよって決めたからな! めんどいことも我慢しよおもて」


 鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔しとるメアやけど数秒経って、「よーし! じゃ、ウチは魔王様の剣になるっきゃない!」ってガッツポーズする。


「まさかのフォームチェンジできる系女子!?」

「そんな系統あるわけないっしょ! 表現じゃん!」


 ちゃんとツッコんでくれた。これ多分ステラとかならスルーされてる。メアはちゃんと、どんなボケも拾ってくれるから安心してボケれる。一家に一人は欲しい逸材やな。


 メアと並んで、お互いにアイコンタクトで決意を固める。当たって砕けろや! どんな奴が相手でも蹴散らしてくれる!


「「うおおおおぉぉぉ!!」」


 雄叫びあげて、勢いよく影から飛び出て真っ直ぐ城に全力前進――


「カナタくーん? こんなお時間にどこに行ってたんですかぁ?」

「オワタ……」


 ――不敵な笑みを浮かべるステラと、人型に作られた魔樹を操るリラに遭遇する。あ、これ俺が蹴散らされるやつや。



 ***



 部屋の隅で正座させられてる魔王。もとい俺。

 その様をケタケタ笑いながら、ステラにこれまでの経緯を話すメア。なんで俺は正座させられてんねんって感じ。


「なぁなんで俺正座させられとん」

「ご自身の立場を考えずに軽率な行動をされたからですわ。カナタ様は私たちの王です、そんな方が報告もなくふらふらするのはやめてくださいませ。なぜ門番に言わなかったのですか。それに、遅い時間とはいえ部屋着で外出なんて感心しませんわ? だらしないです」


 ご尊顔おこモードの蛇女ちゃんが冷たく言い放つ。やぁべこれ俺に非があるからなんも言えんわ。てか門番とかおったんや、知らんかった。


「すんませんした」

「ですが。何事もなくて安心しましたわ」


 にしても、自由に出掛けられへんのは辛いな。あ、でも報告したらええだけか。部屋の前に、外出中のフダかけとこかな。”出掛ける” 前にフダを手 “で掛ける" ってな! ぐふっ、傑作やわ。今言うたらしばかれそうやから今度言お。


「カナタくん、ストリートに空き地ありました?」

「ん? 空き地? せやなぁ空いてた気ぃする。壊れまくった建てもんめっちゃあったし」

「あーそれウチらの部下ちゃん達の家だわ。ウチら幹部が連れ出されて必然的に部下ちゃんも強制的に連れてくことになったんだけどそん時に各自潰しとけって言われてたんよねぇ」


 住むとこなかったら因縁云々関係なしで戻られへんもんな、建て直すか。無理やり連れてかれたんやったら、場所用意したら戻ってきてくれるやろ。


「カナタくん、一軒建て直してメアちゃんのお店にしていいですか?」

「ええよ、立派な店建てよ」


 ニコッと笑うステラは、一息ついてからメアに言う。


「と、言うことで! お帰りなさい、メアちゃん」

「おかえりなさいメアリ。ひとつ確認なのだけど、自発的に出て行ったのはあの駄犬だけなのね?」

「そだよ! もともと不満あったっぽいじゃん? あいつ。それがこの騎士ちゃんの仲間入りで爆発した的な?」


 心臓キュッとなるレベルでお怒りな蛇女ちゃん。そんな蛇女ちゃんとは対照的にお気楽〜な感じで話す。


「ごめんなさい。私のせいね……私が魔都に住むことになったから」

「ち、ちがっ! 違う違う!! 騎士ちゃんは悪くないって! あのくそ犬が悪いだけだから!」


 めっちゃテンパるメア。テンパりすぎてめっちゃアリアちゃんの肩揺さぶってるし、蛇女ちゃんにめっちゃ同意求めてる。


「そ、そうですわ! それにそんなこと気にするなんてアリアらしくないんじゃなくって?」

「でも……」

「あーい! そこまで! くよくよしとってもしゃーないやん。切り替えてこ! よし! メア自己紹介して、まだしてへんやろ?」


 これ俺がアリアちゃんの立場ならおんなじこと考えるかもな。でもほんまなんもわるないねんけどな、冷静に考えたら自分全然わるないのに罪悪感に苛まれるときあるよなたまに。アリアちゃん結構ナイーブ。


「そ、そそ! 切り替え大事! ウチはメアリ・ブラッド! よろしくね! あ、さっきのほんと気にしないでね! そういう意味で言ったわけじゃないから!!」

「せやでアリアちゃん。メアは言葉選びたまにどえらいミスるから気にせんとき。そんなこと言うやつちゃうし。豊胸疑惑はあるけど」 

「だからしてねぇ!! バストアップ! マッサージ!」


 全力で抗議するメア。それをみてクスッと笑うアリアちゃん。ちょっとは和んだかな? いい仕事したぞメア。


「メアリ、その……バストアップマッサージって結構効果あるの……?」

「すっごいあるからやってみ? あとで教えたげる」


 こそっと聞いてるつもりなんやろうけど、心なしか声のボリューム調節機能壊れてる気がする。落ち着きんしゃい。


「ちゃんと私が教えた通り、一才端折らず伝えるのよメアリ」

「り!」


 強キャラ感出しながら、艶やかに微笑んだ蛇女ちゃんは。


「アリア、効果は確実にあるわ。地道に続けなさい」

「あ……ありがと」


 できる女ゲージマックスでドレスの裾をひらっとさせてアリアちゃんに近づく。視線はアリアちゃんのまない……胸に向けてる。これはあれかな、育つまで何世紀かかるか考えてんのかな。来世では豊満なぱいぱいやとええな、まな板ネキ。


「バストアップマッサージって蛇女ちゃんが教えたやつなんや」

「ええ、そうですわ。メアリが胸を加工しようとしていたので、教えましたの」


 後ろめたいんか視線を逸らすメア。そんなメアをジト目で眺めてみる、やっぱしようとはおもてたんか。

 

「まだしてなかったからね!? 今もしてないからね!? なにその目! 怖いって!」

「カナタ様、メアリはまだ手を施してませんわ? 見てもわかりますが、触ればすぐにわかりますわよ」

「ほへ〜! これは触ってみなあか――」


 言い終わる前に、メアの見事な蹴りがかまされる。華麗に振り上げられた美脚。スカートがひらりと舞い、聖域がお目見えする。お、真っ白おパンツ。


「おっぱいはお預けする代わりにおパンツをお披露目とは……お主、やるな! がはっ!」

「スカートだったの忘れてた! 記憶消せし!」


 強烈な蹴りが後から効いてきた。床に横たわる俺を警戒するようにスカートを押さえる。そういえばいっつもショーパンやった気ぃすんのに今はスカートやねんな。


「戦う場面がないからって油断しすぎよ?」

「そういうメディちゃんだってドレスじゃん! ひらひらじゃん! なんならおっぱいも丸投げそうじゃん!」

「私はメアリと違って肉弾戦はあまりしないから大丈夫よ」


 確かに蛇女ちゃん激しく動いたら絶対ポロリする。今度激しい戦闘起こらんかなぁ、ワクワク。

 そんな期待を胸に秘める俺に気づいて、


「カナタ様にはいつでもお見せしますわよ?」

「露出癖……!? なんでこうも俺の周りにはやばい子が多いんや」

「勘違いですわ! カナタ様意外に見せるつもりなんてございませんわ! このドレスも特別性で見えそうで見えない仕様です」


 なんかこんなセリフ、前にも誰かから聞いたことある気がする。見えそうで見えへん仕様。誰が言ってたっけなぁなんて考えながらぼけぇっとしてたらステラが、


「カナタくん。もう朝です、店の準備しましょうまだ少し早いですが」

「もう七時かいな! はっやいなぁ、って開店九時からやん! 急ご急ご」


 整理券の番号通りに配列してもらわなあかんから、そのことを従業員ちゃん達に伝えやなあかんし何より、プリン運ばな。

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