第14話 花魁っていいよね♡

 実は私、花魁が好きである。もう一度言うね、おいらん。映画「吉原炎上」を何度観たか分からない。綺麗な着物、歩き方、独特な話し言葉。好き。


 花魁とは皆さまご存知の通り、遊郭の遊女で位の高い女性の事。現代で言えば高級娼婦。器量がいいだけでなく、教養がなければいけない。


 古典、書道、茶道、和歌、箏、三味線、囲碁など芸事も仕込まれて腕前はトップクラスだろう。そんな花魁を「呼び出し」する殿方の財力も半端ない。


 城が傾くほどお金がかかる遊女だもの、身請けする事はステータスだったと思う。私が男だったら絶対に手に入れる。あら、違う、私も絶対に花魁になる!


 そう、私は花魁道中だけに憧れて、花魁が好きなのである。動機が不純。


 さて、今回ご紹介するのは、安藤唯さま『極夜の月』

 舞台は江戸時代の吉原遊郭。そこで出会った二人の少女の物語。梅ちゃんとお凛ちゃんの物語。


 梅ちゃんは貧しい百姓の家で育ち……親に売られる。お凛ちゃんも両親を亡くした時、おばさん夫婦に売られる。知ってるよ、知ってますとも。凶作でも年貢を納めなきゃいけないから、口べらしのために奉公に出されたって事。


 悲しくて切ない時代です。奉公とは名ばかりです。遊郭です。人身売買です。


 梅ちゃんは素直で愛嬌がある子だったけど、少し腫れぼったい目をしていて、安く買い取られました。それでも一両です。


 お凛ちゃんは器量良しで、梅ちゃんより高く買い取られたけど、跳ねっ返りの強情者。何度も遊郭から逃げ出そうとして、捕まり折檻されていました。もうここから泣ける。


 そんな二人はまだ童女。禿かむろです。もう一回言うね。です。花魁の身の周りの雑用をします。お凛ちゃんは梅ちゃんが遊郭に来てからは逃げなくなりました。友達って大事です。


 梅ちゃんが私の親が迎えに来てくれたら、一緒にここを出ようってお凛ちゃんに言ったんです。親の借金のカタなのに、年季明けまでは籠の鳥なのに。グスン。


 器量良しのお凛ちゃんは花魁として育てられます。十七才でデビューするまで二人は励まし合いながら、純粋な友情を築きます。


 床入れの作法や性技を仕込まれてデビューの日が決まったお凛ちゃん。


「処刑場に連れて行かれる罪人もこんな気持ちなのかな」とポツリ。もうこの言葉を聞いて私は、胸が痛いし苦しいし。泣きました。


 梅ちゃんにも、お凛ちゃんにも好きな人が出来てしまったから。


 この先も話したい。全て話してしまいたい。絵師との恋、郭通いの男との恋。


 女郎屋の女将や親方、遣手、忘八といった登場人物との絡みがすごく丁寧に書かれていて、引き込まれます。


 遊郭でのしきたりや、当時の町の様子も窺い知る事が出来てハマります。


 梅毒や中絶による死、愛する男との駆け落ちや心中。遊女たちの儚くも強い信念を持った生き方、死に様。すごく考えさせられる作品です。


 梅ちゃんに感情移入して泣いたり、お凛ちゃんになって泣いたり、どのエピソードも涙なしでは語れません。気がつけば昭和の歌を歌っていました。



「♫ 星の流れに身を占って……泣けて涙も涸れ果てた♫ 一目会いたいお母さん……こんな女に誰がした」


 梅ちゃん、この先どうなるんだろう。お凛ちゃんは?


続きが気になって仕方ありません。プロローグ再読したらもう、いい意味で鳥肌が立って……。安藤さま、早く続きをお願いいたします。(プレッシャーすいません)


人を愛する事って? 生きるって? 本当の幸せって何?


秋の夜長におすすめしたい作品です。

ぜひご一読を!


https://kakuyomu.jp/works/1177354054894463514

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