第11話 タイトルって色々よね♡
実は私、映画「八日目の蝉」が好きである。映画を何度観ても、原作を何度読んでも同じ箇所でウルってする。
八日目の蝉。夫のいない妊婦を表すの? とか七日でみんな死んじゃうから「孤独」がテーマなの? ってタイトルの意味を色々考えた。
本好きの私は、本屋でバイトをしていた。タイトルって色々あった。万越え。
いまだに、手に取って一人突っ込みする癖がある。
『人間失格』……でしょうね。『限りなく透明に近いブルー』……ブラック?
『メキシコ人はなぜハゲないし、死なないのか』……知らんがな。
『夫のちんぽが入らない』……読みたいけど、レジに持って行く勇気なし。
インパクトのあるタイトルも多い。
「君の膵臓をたべたい」「コンビニ人間」「蹴りたい背中」「妻が椎茸だった頃」「生首に聞いてみろ」「容疑者Xの献身」「冷静と情熱のあいだ」など。
読了するまでタイトルの意味が分からない作品もある。おお、そうだったのか! だからこのタイトルか! 納得。感動は倍になり忘れられない作品になる。
「八日目の蝉」の後半にこんな台詞がある。
「八日目の蝉が見る景色は、すごくきれいで素敵なものかもしれないでしょ?」
タイトルの意味が孤独から希望に変わる瞬間、号泣。
さて今回ご紹介するのは、悠木 柚様『龍の背に乗れる場所』です。
龍? 異世界かしら? ダークファンタジーかしら? 目次を確認。
「龍の足元」「龍の輝鱗」「龍の尖棘」「龍の背」が目に入る。龍が登場するに違いない。私は龍の背に乗れる場所を知りたくて読み進めた。
主人公、田端カオルはアル中の不感症女。ファンタジー要素が一つもない事に焦りながら、私はカオルの交友関係を知る。元彼、女友達、探偵、狂気の女、学者、警察の女、電脳の男……出会いに度肝を抜かれた。
毎日偏頭痛で、頭の中に蝉を飼うカオル。そんなカオルが二章では元アイドルと恋人関係になる。脱不感症になっても、全くもって龍など出てこない。
私は第17話から、カオルのそばにずっとついていて、背中をさすった。カオルが龍を見つけ、いなくなるのではないかと不安になったからだ。
ついにカオルと同じ風を感じながら、龍の背に乗れる場所を見つけた。
あー、もっと言いたい。全て話してしまいたい。タイトルの意味が分かった時の衝撃を皆さまに伝えたい。ぜひ御自分の目でお確かめください。
特にエピローグは、衝撃を受けた作品ベスト3に入ります。紫ハナス独断。
おすすめレビューです。*・゜゚・堕落と絶望と美しさと・゜゚・*
★★★ Excellent!!! 橋本圭以様
別作品「フェアリーウェイト」を先に読んでいたのだが、こちらはまた一風変わった作品。
ぬかるみの中でもがき続ける主人公と、彼女に寄り添う奇天烈な人々。
決してキレイとは言えない泥沼のようなものを作者は芸術品に昇華させたと思う。
ところで15で悪魔といえばタロットカードだが、カードに象徴される執着の鎖を断ち切ったかのように、主人公のカオルは汚物と落伍の地獄を抜け出して光り輝く暖かな場所へと辿りつく。
エピローグに至る過程は「13 死神」そのものである。
あるいは鎖にしがみついていたから竜の背に乗れたのか。
いろいろ書きましたがとにかくこの一言が言いたかったのです。
「面白いのでぜひ読んで下さい!」
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