第26話 2人の眷属







 ノーヴァンはレンに壁に叩きつけられた為に骨を何本か折り、骨が内臓を傷付けたのか口から血溢れる。口に溢れた血を勢い良く吐き捨て血で汚れた口周りを騎士服の袖で拭う。額に汗を滲ませるものの顔は自身がやるべき事を理解している凛々しい顔である。


 ノーヴァンは床を蹴って一般の人間から見れば魔法で飛んでいるかの様に高速で移動する。何も知らない文官等はすれ違い様に目を剥き固まっていた。ノーヴァンが今いる場所は3階であったが、窓から飛び降り着地すると再び地面を蹴って高速で走った。



 ーーーバァンッッッッ!!!



「バレンス総長!!!緊急事態ですっっっ!!!」



 ノーヴァンは人の家の塀を越え、ドアを破壊し人の家の中に侵入した。

バレンスも帰宅している時間なのでバレンスの邸宅に先触れすらなく乗り込んできたのだ。

家の主人達が部屋に戻ったので使用人達も自分達の部屋に戻る所であったが、凄まじい音に驚いて何事かと駆けつけた。目の前に騎士の制服が所々破れたり汚れている、戦場に今までいたかの様な状態の騎士らしき人物に駆けつけた使用人達は慌てふためき急いでこの邸宅の主人を呼びに走る。



「ーーノーヴァン・・・。お前は人の家の扉をなんだと思っているのだ?それに何故その様に負傷しておる?」


 使用人達に呼ばれた夜着の上に上着を羽織ったバレンスが降りて来た。

壊れたドアを見て呆れた顔をノーヴァンに向けている。



「そんなものバレンス総長なら魔法で幾らでも直せるでしょう?嫌なら家の周りに結界でも張ってください。そんな事より、今夜私の部屋に魔族が一体参ったのですが・・・」



 バレンスはさっと魔法を使い玄関の扉とノーヴァンの怪我を修復する。


「ーー報復では無かったのだろう?急ぎだな?ノーヴァンの今日の記憶を覗くぞ」



 バレンスはノーヴァンの額に手を翳し目を閉じた。

バレンスの脳内にノーヴァンと悪魔の会話やレンによる貴族令嬢の殺害、そしてレンの思い違いからゆなの身がかなり危険だということが分かった。



「やはりレン様は魔族であったか・・・。ゆな嬢の元にすぐ参らねばならん。しかし・・・、我らでは止めることは出来んな、どうしたものか・・・。」


 バレンスは眉間に皺を寄せて考える。


「説得もあの様子では無理ですね」


「分かった。ーーゆな嬢を保護して私が異世界に飛ばす。私の今の魔力ならば1人でも可能だろう。そうと決まれば行くぞ、ノーヴァン」


「ゆな様がいらっしゃる場所は分かるのですか?」



「問題ない。古代魔道具のアンクレットを身に付けさせている。それには位置特定魔法が付与されているのだ。他に魂保護の魔法も付いているからある程度の身の危険は耐えられるであろう」





 ノーヴァンに説明しながら転移魔法陣を展開する。

バレンスは使用人達に出かけて来ると言い残しノーヴァンと共に転移した。









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