第4話 異世界転移組
「あの、なんでこのお城のこと全然知らないんですか?お城の関係者じゃないんじゃ無いですか?」
しばらくこの国の事などを教えていたが余りにも色んな事を知らなすぎるので、これは城で働いている人間では無いなと女は気付いた。
『・・・』
「他国の人なら来賓の方ですよね?そしたら余計私なんかじゃなくて、もっとちゃんとした人が国の事教えますよね?そもそもこの国の事知らないで来る他国の人とか失礼すぎでしょーーー不法侵入者・・・でも無いですよねー・・・そしたらこんな所でのんびり本なんて読んでいないだろうし・・・」
女は男の素性について考え始めた。
『無理矢理連れて来られたといったところだ、いい加減詮索をーー』
「そう言えば最初
男はまさかそんな突拍子もない真実にこの奇妙な女がたどり着くと思ってはいなかったので、終始変わらない表情だったのが一瞬崩れた。
「あーーーやっぱりそうなんですね〜!!まさか異世界仲間がいるとは思いませんでした!!」
『ーー貴様もそうなのか?』
「そうなんですっ!!!ーーーやっと話を聞いて貰えそうな人に逢えたんだっ・・・。私の話を聞いてくださいっっお兄さん!!」
女は気を許したのか一気に男との心の距離を縮めてきた。男も自分以外に異世界から来ている者がいるとは思っていなかったので、面白そうだと思い話を聞く事にした。男は12万年生きているのだが、魔王城では年寄り扱いされる様になっていたのに女にお兄さんと呼ばれたのが既に面白く感じていた。
「私がいたのは地球って言う星なんですけど、お兄さんは同じ星出身ですか?」
『いや、私の住んでいた星には名などなかった様に思う』
「そっか・・・そうですよね・・・同じ星じゃない場合もありますよね・・・」
肩を落とした女が物悲しげに手元の本に目を落とした。
『ーー同じ星でないと寂しさを感じるものなのか?』
「そりゃ寂しいですよ!!話も共感できないし、繋がり欲しいじゃないですか・・・この星に1人切り離されて居るなんて・・・。お兄さんは寂しいとか思わないんですか?」
『我は今日この星に来たばかりであるからな。そもそも寂しいと言う様な甘い感情など持っておらん』
「そういう風に割り切れたら良かったな・・・。」
女は遠くを見る様にランプの炎を見つめていた。
『・・・繋がりがそんなに欲しければ、我と番えば良かろう?』
「ーーーえ!?・・・それ本気で言ってます?」
『我は冗談を言うのは好まぬ』
「・・・。お、お友達から始めても良いですか・・・?」
『我とお友達だと?ふ、ふははは!!良かろう、お友達とやらから始めるぞ!』
女も男も笑ってしまう。男はこんなに愉快な事は久方振りだと思った。女はこの世界に来てやっと心を打ち明けられる人に出会ったと幸運を噛み締めた。
『ではお友達の事をもっと知らねばな!我はアーゲルド・ギュレンダー・ベリドリスだ』
「長っ!!ミドルネームのレン切り取って呼んで良い?」
『うむ、良いぞ!むしろ心許さぬ者の前で真名で呼ばれるのは不愉快であるから、その方が良い』
「良かった♪私の名前は
『ふむ。ではミュナと呼ぼう』
「ミュナ!!やだ、かわいい!!!」
『嫌なのか良いのか分からぬぞ・・・』
「ごめんっ分かりにくかったよね、すごく嬉しいよ!!レンこれからよろしくね!!」
ミュナはレンに手を差し出したのでレンはそれを握った。ミュナはレンの手をぎゅっと笑顔で握るが、実に危険な状態である。レンは触った瞬間に炭すら残さずミュナを消滅させる事が出来る。自分の危険な状態を知らない事は幸せでもある。
その後お互いの星の話をしたり、ミュナが調べたこの国とこの星の話をしたり楽しいひとときを過ごしていた。
しかし、その頃外では騎士や魔術師が召喚されたものを捜す事に躍起になっている。
『(ふむ、どうやら我の事を探し回って居るネズミどもが居る様だな・・・消しておくか・・・?)」
「レンは今日からどこに住むんですか?」
『ん?そういえば居を用意しておらんかったな・・・。ミュナはどこに住んでおる?』
「安いアパートを借りてますよ。お城に近くて便利なんです!!レンも借りたらどうですか?」
『我の存在を召喚した奴らはまだ気づいておらん。故に今現在身元不明の不審人物と言ったところであるから、我は部屋を借りれぬ』
「ーーーえ?じゃあ今誰かに身分を聞かれたら捕らえられる可能性あるじゃ無いですか!!・・・んーーーーー。単身のみ入居可能なアパートでも無いので隠れていてもらえば良いかな?それで良かったら一緒に暮らします?」
『知らぬ男と2人きりでも良いのか?』
「まぁ、このまま放置するの忍びないですし・・・。友達ですから!!あっ狭くても文句は言わないでくださいね?」
『感謝するぞ、ミュナ』
2人で暮らすことが決まった。
「でもこのままお城を出る時バレますよね・・・どうやって出るかですね〜」
レンが指を鳴らすと一瞬で猫になった。
「えぇっっっ!?レンって魔法使いなんですか!?すごいっっ!!!猫ちゃんになれるなんて・・・ふぁぁ〜可愛いっ!!」
『大抵のものにはなれるぞ?またそのうち魔法を見せてやろう』
ミュナは1人でぶつぶつと今度は犬も良いなと呟いて居る。
レンのいた世界では変化を使えるのは悪魔だけであった為、変化の魔法を見せたことで警戒される可能性も考えていたが不要の心配であった。ミュナに子猫になる様に言われ気を良くしたレンは変化すると首根っこを掴まれた。
『(ーーっ!?まさか此奴最初から我を小さくする事が目的であったか!!)』
元の姿に戻ろうとした瞬間視界が真っ暗になった。
『(ーーん!?なんだ?温かくて柔らかいな)』
ーーふにふに
危険性が無さそうなのでレンは触感や味覚、嗅覚で入れられた場所を知ろうと動き回る。
「はひぃぃっっっっ!!!やっやめてっやめてっっっ!!レン動き回ったらくすぐっっ、ひゃぁぁうっっ!!!どこ舐めて居るんですか!!!・・・だめぇっ!!」
ミュナは床にへたこんだ。
『ミュナ、・・・もしかして貴様の服の中なのか?何故下着をつけておらん?』
「うぅ・・・働き出したばっかりで・・・お金が足りないんですっっ!!制服は供給されますけど、食費や居住費と普段の服とか買うものたくさんあるんですっ!!外側取り繕わないとお城を追い出されてしまうじゃ無いですか!!」
『だからと言って男を下着もつけていない中に放り込むのは、流石に我でもどうかと思うぞ?まぁ我は一向に構わぬが』
「うぅ・・・い、今の時間は受付の人が替わっているんです!知らない人が出て行くの不審に思われない為の策なんですっ。動物を連れて出たら間違いなく私出入り禁止になるので大人しくしていて下さい!!」
入れられた当初よりも体温がかなり上がったミュナの服の中で、外に出るまで大人しくしておこうとレンは丸まった。
火照った身体を少し落ち着かせ、ミュナは受付に怪しまれずに図書館を出る事に成功した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます