【闇の眷属集合】四天王で本土防衛+城攻め実況スレ

1:どこかの闇の名無しさん

色々準備してたけど敵がうるさいからボチボチ始めるで

今の状況やが、敵の侵攻が始まってから十日くらい経ったとこや


城塞から投石機に対して一度砲撃があったんやが、闇の四天王が防いでからは追撃無し

出てきた軍船は輸送船二十と砲艦三隻。動作テストも兼ねて投石機で撃沈して、浮かんできた人間は焼いたで

今もこっちに十隻くらい向かってきとるわ


威力偵察か知らんけどチョロチョロ船団送り付けてくんのが鬱陶しいからもう陽動作戦始めるで


ちな完成した遠投投石機がこちら

【画像】

[海岸の一部を埋め立てたその上に、城ほどの大きさの大型投石機が設置されている様子]


お嬢様部から貰った設計図をサイズ以外ほぼ手を加えずに再現したったわ

材料に半分くらい土の精霊使っとるから、現状世界一頑丈な建造物や

土が一人で装填から発射まで行うから運用コストはほぼゼロやし、巨大化した土が直接投げつけるより遥かに命中率も高い

意外と期待できる完成度になったで


2:どこかの闇の名無しさん

きたわね。


3:どこかの闇の名無しさん

侵略の時間だああああああああ


4:どこかの闇の名無しさん

もう始まってる!


5:どこかの闇の名無しさん

もう始まってる!


6:どこかの闇の名無しさん

参謀様オッスオッス


7:どこかの闇の名無しさん

正しくもう始まってて草


8:どこかの闇の名無しさん

投石機草


9:どこかの闇の名無しさん

顔合わせ終わっとるやん


10:どこかの闇の名無しさん

いつもスレ立てんの遅いんだよなぁ


11:どこかの闇の名無しさん

戦局進んでて草


12:どこかの闇の名無しさん

事後報告やめろ


13:どこかの闇の名無しさん

投石機がデカすぎる


14:どこかの闇の名無しさん

コラ画像やめろ


15:どこかの闇の名無しさん

明らかに合成っぽい投石機で草


16:どこかの闇の名無しさん

巨大化した土の精霊うp


17:どこかの闇の名無しさん

投石機ちゃんと活躍してて草


18:どこかの闇の名無しさん

まるで旧時代の戦場みたいだぁ……(直喩)


19:どこかの闇の名無しさん

原始的すぎて草


20:どこかの闇の名無しさん

最新の魔術砲台に対して投石するのマジで草


21:どこかの闇の名無しさん

ウホ、ウホホウホ(投石)


22:どこかの闇の名無しさん

もちろん俺らは抵抗すんで? 投石で


23:どこかの闇の名無しさん

【悲報】魔族、石を投げて本土を守る


24:どこかの闇の名無しさん

【朗報】魔族、道具を使う知能があった


25:どこかの闇の名無しさん

これは高度知能生命体ですね間違いない


26:どこかの闇の名無しさん

IQ8383


27:どこかの闇の名無しさん

光の眷属に滅茶苦茶バカにされてそう


28:どこかの闇の名無しさん

かしこすぎる


29:どこかの闇の名無しさん

やっぱ魔族ってインテリだわ


30:どこかの闇の名無しさん

土の精霊って巨大化できるん?


31:どこかの闇の名無しさん

>>30

精霊は不定形だし最大個体なら可能なんじゃね


32:どこかの闇の名無しさん

デカくなってる時の服ってどうなってんの


33:どこかの闇の名無しさん

そらもうアレよ


34:どこかの闇の名無しさん

精霊が服着るわけないよなぁ?

そうだろ! 松ッ!!


35:どこかの闇の名無しさん

閃いた


36:どこかの闇の名無しさん

土の四天王うp


37:どこかの闇の名無しさん

土の精霊うp


38:どこかの闇の名無しさん

思考が単純過ぎる


39:どこかの闇の名無しさん

マジレスすると服も本人から出来てるだろ


40:どこかの闇の名無しさん

俺は投げるの下手な方が気になるわ

安定感のない奴はウチの球団にはいらん


41:どこかの闇の名無しさん

土の精霊はノーコン(新情報)


42:どこかの闇の名無しさん

草野球レベルやんけ


43:どこかの闇の名無しさん

スカウトマン、無能


44:どこかの闇の名無しさん

土の精霊、お前この船降りろ


45:どこかの闇の名無しさん

【土の四天王】土の四天王、土の四天王


46:どこかの闇の名無しさん

大 精 霊 劇 場


47:どこかの闇の名無しさん

パワーはあるんだから打者に転向させろ


48:どこかの闇の名無しさん

精霊が野球監督の目線で文句言われてんの草


49:どこかの闇の名無しさん

防御率8.383


50:どこかの闇の名無しさん

土の精霊と遠投投石機、どうして差がついたのか……慢心、環境の違い


51:>>1

炎の四天王に指示出したわ

作戦開始や

もうこっからは止まらんで


【画像】

[海上に作られた広い足場に十数人の魔族が立っており、その上空に火球が浮かんでいる様子]


土の精霊に頼んで海の真ん中に足場を作ったで

魔力の増幅度に応じてわざと火球を大きくしていって視覚的にも敵の危機感を煽っていく

実質的に余命宣告されとるようなモンやし流石に総力戦仕掛けてくると思うわ

一緒に写ってるのはアイツの部下や


敵の反応があるまで暇やから城塞に投石して遊ぶで

子供の頃を思い出すわ


52:どこかの闇の名無しさん

ようやく始まったか


53:どこかの闇の名無しさん

どう転ぶか楽しみや


54:どこかの闇の名無しさん

攻城兵器で遊ぶな


55:どこかの闇の名無しさん

童心に帰ってて草


56:どこかの闇の名無しさん

ご武運をお祈り申し上げますわ~


57:どこかの闇の名無しさん

止まらないわよ!GOGO!(神)


58:どこかの闇の名無しさん

止まるんじゃねぇぞ……


59:どこかの闇の名無しさん

戦況は止まんねぇからよ……


60:どこかの闇の名無しさん

動きあるとしたら五日後くらいかな


61:どこかの闇の名無しさん

十日くらいかかると予想


62:どこかの闇の名無しさん

炎の四天王がんばえ〜


63:どこかの闇の名無しさん

五日後に俺生きてっかな


64:どこかの闇の名無しさん

ワイも今前線やから危ないわ

生き残る理由ができてしまった


65:どこかの闇の名無しさん

今回画像多くてうれしい


66:どこかの闇の名無しさん

俺、イッチの戦いを見届けるまで死なないって決めてるんだよね(フラグ)


67:どこかの闇の名無しさん

わたくしもお風呂に行ってきますわゾ~


68:どこかの闇の名無しさん

画像の炎の四天王どれ?


69:どこかの闇の名無しさん

小さくて分からん


70:どこかの闇の名無しさん

中央にいる赤髪のネーチャンじゃね


71:どこかの闇の名無しさん

もっと寄りで頼むよ~(指摘)


72:どこかの闇の名無しさん

髪の色的に1スレ目の画像でケーキ食ってた奴だな


73:どこかの闇の名無しさん

この調子で残りの四天王も特定しろ


74:どこかの闇の名無しさん

イッチ遊んでるけど勇者の警戒は大丈夫なのか


75:どこかの闇の名無しさん

やたらと新情報が出てくるからwikiの編集が大変で困る


76:どこかの闇の名無しさん

悪い事言わんから陰キャの警戒しとけ


77:どこかの闇の名無しさん

イッチ随分と余裕そうやけど配置につかんでええんか?


78:どこかの闇の名無しさん

それはそう


79:どこかの闇の名無しさん

イッチ敵地行ってなくて草


80:どこかの闇の名無しさん

>・全体指揮、戦況監視 → ワイ

あれれ~?


81:どこかの闇の名無しさん

仕事してないのイッチだけやん


82:どこかの闇の名無しさん

石投げて遊んでる場合じゃなくて草


83:どこかの闇の名無しさん

あのさぁ……

やめたら?この仕事


84:>>1

指示出すために一時的に前線におっただけやで

丁度今から移動しようと思ってた所や

中央大陸に上陸したらそのまま潜伏するから、何も起きなければ数日は実況も休みやな


85:どこかの闇の名無しさん

言い訳が苦しくて草


86:どこかの闇の名無しさん

無理筋の論法なんだよなぁ……


87:どこかの闇の名無しさん

はえ〜サボってるように見えてちゃんとしたお考えがあったんスねぇ(棒読み)


88:どこかの闇の名無しさん

遊びで投石しようとしてたの無かった事にしてて草


89:どこかの闇の名無しさん

【悲報】魔王軍参謀、数分前の書き込みを忘れる


90:どこかの闇の名無しさん

掲示板でケツ叩かれて仕事し始める参謀がいるらしい


91:どこかの闇の名無しさん

これ半分無能だろ


92:どこかの闇の名無しさん

またイッチの蔑称が増えちゃうヤバいヤバい……


93:どこかの闇の名無しさん

作戦開始しちゃったけど今から上陸できるのか?


94:どこかの闇の名無しさん

飛んでけばすぐじゃね

イッチが飛べる種族かは知らんけど


95:どこかの闇の名無しさん

砲台あるやん


96:どこかの闇の名無しさん

撃ち落とされそう


97:どこかの闇の名無しさん

もう炎の四天王が動き出したからスルーされるでしょ


98:どこかの闇の名無しさん

イッチって翼あったっけ?


99:どこかの闇の名無しさん

幹部なんだし翼無くても魔術で飛べるんじゃね


100:どこかの闇の名無しさん

まだイッチの種族が何かっていう情報は出てなかったと思う


101:どこかの闇の名無しさん

そうだっけ?


102:どこかの闇の名無しさん

わからん


103:どこかの闇の名無しさん

なんでもええやろ


104:どこかの闇の名無しさん

四天王に比べてイッチに対するスレ民の関心薄すぎて草






………………







4442:>>1

ビンゴや

数日間大陸の平原に潜伏してたんやけど、案の定援軍来た

目視はできんけど遠くになんかおるわ

情報に正確性を求めるならもう少し待機した方がええやろうけど、先制取りたいから逆探知喰らう前に突っ込むで


4443:どこかの闇の名無しさん

>>4439

マンドラゴラに火ぃ通すような味障は黙ってろ


4444:どこかの闇の名無しさん

は?

一生土齧ってろ蛮族が


4445:どこかの闇の名無しさん

貧乏舌同士が争ってて草

マンドラゴラは花を食うんやで


4446:どこかの闇の名無しさん

通はアク抜きしてから干すんだよなぁ……

素材の味を活かせない奴は他に何やっても駄目


4447:どこかの闇の名無しさん

お前らイッチ来てるぞ


4448:どこかの闇の名無しさん

雑談盛り上がってる時に実況始めるのやめてもらえる?


4449:どこかの闇の名無しさん

援軍ってマジ?

まだ一週間も経ってないぞ


4450:どこかの闇の名無しさん

もう始まってる!


4451:どこかの闇の名無しさん

勇者か?


4452:どこかの闇の名無しさん

補給部隊かも


4453:どこかの闇の名無しさん

援軍来るの早すぎじゃね


4454:どこかの闇の名無しさん

まだ前哨戦だろ?

大した被害も出てないのに援軍ってなんやねん


4455:どこかの闇の名無しさん

イッチが実況してないだけで前線が動いてる可能性はある


4456:どこかの闇の名無しさん

>>4455

これだろ

前科あるし


4457:どこかの闇の名無しさん

いつも実況始めるの遅いんだよな


4458:どこかの闇の名無しさん

援軍じゃなくて別勢力だったりして


4459:>>1

あかん勇者や

この攻撃じゃ殺しきれん

初手ミスったな


4460:どこかの闇の名無しさん

駄目やんけ


4461:どこかの闇の名無しさん

勇者草


4462:どこかの闇の名無しさん

ファーwwwww


4463:どこかの闇の名無しさん

重要な局面で失敗するのやめろ


4464:どこかの闇の名無しさん

いや、たった数日で勇者が来るなんて予想できんやろ


4465:どこかの闇の名無しさん

こいついつも出鼻くじかれてんな


4466:どこかの闇の名無しさん

情報伝達早すぎん?


4467:どこかの闇の名無しさん

なんでこんなに勇者来るの早いんだ


4468:どこかの闇の名無しさん

スパイ説に信憑性出てきてるやん


4469:どこかの闇の名無しさん

クソ女神がチクってんじゃね


4470:どこかの闇の名無しさん

人神の天啓(笑)でしょ

チート死ね


4471:どこかの闇の名無しさん

どの勇者が来てるかでかなり状況変ってくるな


4472:どこかの闇の名無しさん

生存説あるし陰キャかな


4473:どこかの闇の名無しさん

陰キャならヤベーだろ

前回三人がかりで相手してるのに


4474:どこかの闇の名無しさん

イッチ死ぬんじゃね


4475:どこかの闇の名無しさん

>>4467

今回は光の眷属の方から準備して攻めてきてるんだから勇者が情報持ってるのは当たり前


4476:どこかの闇の名無しさん

むしろ最初から勇者いなかったのがおかしくね?

作戦の重要度からすれば四人全員いてもおかしくなかっただろ


4477:どこかの闇の名無しさん

それな

なんで勇者は全員一緒に攻めてこないん?


4478:どこかの闇の名無しさん

ヒトカスにも派閥があるから


4479:どこかの闇の名無しさん

国ごとに勇者持ってたりするんじゃね

戦争の駒としても使えるからパワーバランス保つためとか言って


4480:どこかの闇の名無しさん

しょーもない理由で総力戦できないのは魔族もヒトカスも同じな模様


4481:どこかの闇の名無しさん

同時運用して万が一全滅したらどうすんだ

リスクマネジメントは基本だぞ

イッチは劣勢だからタブーに踏み込んで幹部使いまくってるだけ

危ない橋渡ってるのはこっちなんだよ


4482:どこかの闇の名無しさん

実況中なんだからイッチ死ぬなよ


4483:どこかの闇の名無しさん

無理したらアカンで

イッチが死んだら部下達も危ないんや


4484:どこかの闇の名無しさん

このスレ無くなったらどこで雑談すればいいんだ……


4485:どこかの闇の名無しさん

雑談スレ行け






――――――






 マーレ・カーネと大陸北部にある大都市を結ぶ広大な平原。過去数々の戦いにより荒地となっているそこでの邂逅は、魔王軍参謀の先制攻撃から始まった。


「ガッ、ハ……グぼっ、ゴホッ! うぐ…………っ、あちゃー、キミが来たかぁ。これまたキッツいね」

「チッ、最悪だ……」


 遠方から既に敵の気配を感じ取っていた大柄な男は、大地を強く蹴り一足いっそくで距離を詰め、相手に防御姿勢をとる間を与えないまま魔力を帯びた拳を容赦なくその体に打ち付けた。しかし、地上に住む殆どの生物が破裂・消滅するであろうその一撃を受けてなお相手は形を留めた。

 直前まで上機嫌に鼻歌を歌っていた光の眷属は、地面をえぐり突き刺さるように吹き飛んだ後、血を吐き、体を震わせながらも立ち上がる。枯色の髪を土で汚し、痛みに耐えながらも薄く笑っている彼女は、幾度となく魔王軍と対峙してきた古参の勇者だ。初めて発見された時から容姿が変わっていない人物でもあった。


「ふぅ……ま、どっちでもいいか。それじゃあ気を取り直して――『やぁやぁ、我こそは神厳なる勇者! この世界の穢れを滅ぼす剣なり!』 ……久しぶりだねぇ、剛の四天王くん? そろそろ出世した? お腹空いてないかい? なにか食べる?」

「……」


 形式ばった名乗りを上げた勇者が気安く魔族に語りかけるも、男はそれを完全に無視して地面を殴りつけた。魔力を無理矢理叩き込まれた土はたちまち破裂し、全方位に土砂を撒き散らしながら巨大なクレーターを作る。

 視界を奪われた勇者は即座に魔術で全身を強化したが、予想していたタイミングで衝撃は襲ってこない。不思議に思い腕で顔を庇いながら前方を見ようとしたが、その瞬間に上から叩きつけるように頭部を掴まれ、真下の岩片へと全力で打ち据えられる。

 飛びそうになる意識を必死に保ちながら、続く胴体への踏みつけを回避するために勇者は一時的に世界から消失した。法則や常識を一切無視したその動きは、これまで無数の窮地で死を回避してきた彼女の十八番だ。

 一呼吸ほど置いてからやや後方に出現した勇者は、額から血を流しながらも飄々とした態度を崩さずに髪をかき上げる。


「いたた……ほんと相性悪いなぁ。菓子折り持ってきたから今日はそれで勘弁してくれないかな? 何度も言うけどボクはキミ達とは仲良くやりたいんだ。――そうだ、友達になろうよ! 今までは遠回しにキミの邪魔をしてる事があったかもしれないけど、今後は改めるからさ」

「下らん戯言はいい。今お前を始末すれば済む話だ」

「そう? 難しいと思うけどね、お互いに」


 勇者は停戦を提案するも、それは短い返事で却下される。今の問答は決してふざけていた訳ではない。嫌悪感を隠そうともせず顔をしかめる彼――剛の四天王とは本当に相性が悪いのだ。

 拳を構えて静かに殺気を放つ大男は一見してただの肉体派だが、彼の本領は魔道具を使っての索敵と情報伝達にある。


 従来、個々が非常に強い力を持つ上級魔族は同士討ちや仲間割れのリスクから戦闘区域ごとに分けて運用されていた。勇者とその仲間が格上であるはずの魔王軍幹部を撃破できていたのもそれが理由であり、敵が単独である事に対して数の攻めが通っていたからこその優位であった。そこが、剛の四天王の登場によって崩された。

 彼は常に他の幹部と共に戦場に現れた。地上を焼き尽くす業火に拳で合わせ、空間を圧壊させる黒渦と共に駆け、生命をり潰す黄金の風で宙に舞って戦った。一言も発さず、互いに邪魔する事も無く大技を繰り出し続ける魔王軍幹部のコンビネーションは異質なものであり、すぐに人類は新たな四天王の調査に取り掛かった。

 結果、その方法こそ魔道具を使ったものと分かったものの、模倣する事は不可能とされた。指揮を専任するのなら兎も角、自身も戦いながら同時に複数の指示を出すには種を卓越した高い処理能力が必要であり、人間の思考力では大きく不足していたのだ。

 最悪、魔王軍の幹部全員を一箇所に集めて運用する事もでき得るその力を恐れた人類は、一時は彼の魔道具を破壊する事のみに焦点を当てた大規模な作戦まで練り上げたが、長い時を経た今もその目的は果たされていない。


「……ッ、っとおっ!?」


 拳を前に構えて静止していた男は、そのままの姿勢で指を弾いて握り込んでいた石片を発射した。空気を振動させながら飛来する弾丸が眼球に突き刺さる直前で、勇者は一歩分横に離れた場所へと座標を移し回避する。


「危ないなぁ、もう。ボクも強くはなったけどさ、流石に目や内臓はそこまで硬くなってないんだよね」

「転移の魔道具……相変わらず厄介だな。それさえ渡すのなら友人にでも何でもなってやろう」

「いや、そんな事した瞬間に頭叩き割ってくるでしょキミ。私だって不死じゃない。残念だけどその提案は飲めないよ」


 勇者は服の土を払いながら、目の前の男と初めてまともな会話が成立した事を内心で喜んだ。とはいえ、その条件は飲めないものだ。

 長年勇者として従順に働き、その信用と人脈を使ってようやく手に入れた特級の魔道具である。どんな条件であれ手渡す気は無いし、そもそも絶対に失わないように体内に埋め込んであるのだから譲渡自体が不可能だ。


 そうして得た転移能力によって戦場でほぼ確実に生存できるようになり、唯一の懸念点であった奇襲による即死も肉体の成長につれて不可能に近づいた。

 自身の長命に加えて死の恐怖が薄れた事により、人類領での生活が色せてしまうという副作用もあったが……全ては若気の至りである。勇者は自分の変化に満足していた。


「それ以外のものなら何だってあげられるけどね。例えばボクの――」

「不死、不死ではない……当然だ。しかし、なら何故お前は今も生きている? 何故昔から容姿が変わらない?」

「……秘密だよ。というか、ボクとしてはその質問が今飛んできた事にビックリだね。何度も会ってて不思議に思わなかったの? もう魔界そっちでは解釈されてるものだと思っていたよ」

「『問い質せ』という命令を受けていなかったからな」

「あぁ、そういう感じ……」


 当然だとばかりに即答した男に、勇者は呆れたように息を吐く。

 命令に忠実で、上からの指示以外の事は一切行わない仕事人。どこの世界でも、組織に一人はこのようなタイプの者がいるものだ。勇者は昔の人脈を思い出そうとしたが、長過ぎる時間の壁に阻まれて朧げな風景すら思い出す事ができなかった。


「≪存在の昇華イグジス・メイション≫」


 少しの沈黙を挟み、勇者は片足に体重を預けてリラックスした姿勢のまま魔術を行使した。

 変化は一瞬。煌めく光が体を駆け巡り、全身が燃えるような高い熱を持つ。心臓が胸を強く穿ち、体の中心だけでなく四肢隅々までもが魔力を表面へと浮かび上がらせる。

 これは膨大かつ継続的な魔力消費を代償に、自身の望む力を得る強化術だ。この瞬間、勇者はこの世界でも有数の耐久力を誇る存在へと昇華した。体内の魔力を一気に燃やし尽くすこの自己強化法は等しく禁術であり、たとえ勇者であろうと立っていられる時間はそう長くないが――これでいい。不意打ちで一瞬でも意識が飛ばされれば間違いなく殺される対面である。多少過剰であろうとも防御を優先するのは安全思考の彼女としては自然な判断だった。


 これにより敵幹部の打倒は絶望的な状況となってしまったが、元より彼女の目的はそこにはない。多くの時間は必要ないし、何ならもう一つの目的は既に達成済みなのだ。


「……反撃の一手が来ると見て構えていたが……まさか更に防御を固めてくるとはな。お前、仮にも勇者だろう? こういった時にこそ勇敢に闘うべきではないのか」

「別に? ボクの目的は戦う事じゃないからね。これで合ってるよ。というか、人類側を手伝うのも今回でやめようかと思っているくらいさ。お偉いさんの目がいやらしいんだよね。見てみるかい? 結構いい身体をしている自信はあるよ」

「冗談に付き合っている暇はない。その術を使った以上もう長くはないだろう、さっさと失せろ。二度と姿を見せるな」

「全部本心だって! ボクってこんな体だろう? 寿命とか超越しちゃうとさ、人間と仲良くなっても虚しくなるだけなんだよ。ほらほら、何か聞きたい事とかないのかな? 貴重な情報源だよ? 魔力が無くなったら転移して帰っちゃうよ? 楽しく話をしようじゃないか」

「……」


 魔力を失い過ぎたか、勇者は冷や汗を流し、顔を青白くしながらも芝居じみた態度で笑みを浮かべる。一体何がそんなに楽しいのかは不明だが、参謀の男はそれを胡散臭いものを見るような目で睨みながらも一考した。


 この古参の勇者が無意味に腹立たしいのはいつもの事だが、禁術により命を燃やしている状態の彼女を単独で沈めるのは至難である。相手が未強化だった奇襲時ですら失敗したのだから、強化後の今仕留めきれる道理はない。

 このまま放っておいても敵は自動的に撤退していくが、上司の指示無しでこの勇者と接触するのは今回が初めてだ。今は矛を収め、目下魔界を揺るがしている問題について尋ねてみるのが柔軟な思考というものだろう。嘘を教えられる可能性も十二分にあるが、そもそも光の眷属側からの情報を鵜吞みにする魔族など一人としていない。


「……お前は自らを不死ではないと言ったが、他の勇者に不死性を持つ者はいないのか? 先日、それに近い性質を持つ者を見た。黒髪の無口な女だ。知っているなら答えろ」

「うーん、そこでボクについての質問じゃないってのが減点ポイントだね。キミって仕事ばかりで女心とか微塵も理解してなさそうだよね。そんなんじゃ、もしかすると他の四天王から煙たがられてたりするかもよ? なんてね。あはは」

「≪その繋がりを分つリンク・ブレイク≫」

「えっ」

「≪この拳に混沌を宿すテンダー・リビオン≫」

「わ、分かった! 少し落ち着こうか!」


 軽く冗談を挟んだだけのつもりの勇者だったが、何が気に障ったか、男は今日一番の殺意を発して魔術を行使した。

 勇者が重ねがけしていた基礎強化術が浮ついたように剥離する。生半可なデバフは受け付けない筈の体を貫通して術が作用した事から、相手がこの魔術に込めた魔力量――本気度が伺える。

 驚いている間にも男は続けて魔術を行使した。握り込んだ拳が瘴気を纏い、星を割る力がその身に宿る。

 今にも敵を殴り殺さんと踏み込んだ男から距離を離しつつ、勇者は焦った様子で声を張った。


「黒髪ッ! 知っているッ! その特徴はあの娘だろう! 彼女は最近やってきた勇者だ! 基本的に一人で行動していて、ギルドに入り浸って小さな依頼ばかりこなしている。同じ魔物ばかりを狩り続けてた時期もあった。奇行が目立つけど実力は確かだ。……彼女が前線に出たってのは驚きだけど、不死だなんて聞いたことがないよ。そもそも、死は誰しも平等に訪れるものだ。不死身だなんて常識的に考えられない。違うかい?」

「ふん。無から生まれ、親すら持たない勇者が生物としての常識を語るか。滑稽だな」

「えぇ……脅しておいてそれ? デリカシーって言葉知ってる……?」


 複数の情報をバラ撒いたのが功を制したか、男は不快そうに鼻を鳴らしながらも、バネのように踏み込んでいた脚を元に戻す。

 勇者はその辛辣なコメントにツッコミはしたものの、内心では会話を繋げられた事にほっと一息ついていた。


「他に何か情報があるなら聞いてやる。別の勇者の事でも構わん」

「すっごい上から目線なのが気になるけど、黒髪の子についてはこれ以上知らないよ。最近は同じ勇者でも興味が持てなくなってきちゃってね。あっ、でもまだシュウ君については詳しい方かも。キミも知ってるでしょ? 水の都が落ちた時に負傷した男の子。うーん、これ言っちゃっていいのかな? 彼さ、聖女ちゃんを助けるためにマーレ・カーネに向かってる最中なんだよね」

「……ほう」


 急に出てきたまともな情報に、魔族の男は額の青筋を治めて素直に食いついた。その様子に気を良くした勇者は更に内容を上乗せしようと張り切って口を開く。


「シュウ君、仲間の幼馴染が死んじゃってすっごい落ち込んでたんだよ。暫くは家で療養してたんだけど、聖女ちゃんが生きてる可能性が高いって報せが出るとすぐに王城に出入りするようになってね。ボクからすると考えられないけど、どうやら今回の作戦に編成してもらえるよう直談判していたみたいだよ。で、何度も交渉した結果、一定量まで魔力が回復したら前線に行っても良いって許可が下りたんだってさ。いやあ、若いってのはいいね」

「……詳しいな。勇者同士で情報を交換し合っているのか?」


 全く役に立たないものも混ざってはいたが、今の話だけでも個人の動向としては結構な情報量である。本人に直接聞いたと見て間違いないそのボリュームに、男は嫌な予感を覚えた。

 勇者同士が横の繋がりを持っているとなれば、今後の作戦の立て方も変わってくる。複数の勇者を同時に相手する可能性を今まで以上に高く見積もらなければはならなくなり、その対策には多くの保険が必要になるだろう。手駒の数が足りない事から、侵攻のペースは落とさざるを得ない。


「まさか。勇者だからってわざわざ顔合わせする訳じゃないさ。実際、ボクでさえもう一人の子とは合った事すらないんだよ。シュウ君とはさっきまで一緒だったから、道すがら色々話を聞いてただけだよ。お偉いさんから共闘するよう言われてたからね。彼、今頃はマーレ・カーネに着いてるんじゃないかな?」

「は?」

「ふふ。その反応は気づかなかったみたいだね。シュウ君に遠回りしてもらった甲斐があったよ。そう、ボクはシュウ君を前線に送り込むための囮だったってワケさ!」

「は?」

「シュウ君ってば凄かったよ。目が本気マジだったからね。多分聖女ちゃんを助けたいのと、死に場所を探してるのと半々くらいなんだと思う。亡くなった仲間に恋仲の女の子がいたみたいだね。バカバカしいから止めるようにアドバイスしてみたけど駄目だったよ。ちなみに、ボクがここにいる理由も彼さ。仮にも同じ勇者だし、最期くらいは見届けようかと思ってたんだけど……ま、ボクとしてはこっちに来て正解だったかな。キミとこうして話せて、なんだか新しい扉を開いたような気分さ。自分と同じ時を生きてくれる知り合いというのは素晴らしいものだね。……あぁ、そろそろ立ってるのも辛くなってきたよ。もしシュウ君に会ったらよろしく言っておいてくれると嬉しいな。じゃあ、ボクはそろそろ引き上げるね」

「待て。こちらからも話がある」

「え、ほんと? 一体なに――――ッッ」


 男からの親しげな発言を受け、勇者が顔を青白くしながらも花咲くように笑ったその瞬間――彼女の顔面に瘴気を帯びた拳が突き刺さり、圧縮されていた魔力が爆発した。

 鼻が折れ、血を吐き、錐揉み回転をしながら何度も地面にバウンドする勇者を見て、男はなお不機嫌そうに鼻を鳴らす。


 やられた。なんて事は無い、あのふざけた勇者は、天真爛漫に振る舞いながらもしっかりと仕事をこなしていたのだ。魔王軍参謀の注意を逸らし、勇者という大駒を前線に送り込むサポートをしていたのだ。

 人類に与する気の無いような振る舞いを見せながらも最高に面倒な結果を招いてくれた当の本人は、殴られた勢いを殺せないまま遠方に転がり続け、地平線と同化する寸前で姿を消した。最後の力を振り絞り、本拠地に転移したのだろう。


「部下に前線を任せておいてこのザマか……クソッ……!」


 少なくとも前線に一人、勇者が合流した。部下からの定時報告に未だその影は無いが、勇者の言葉を無視できる訳もない。絶対に阻止したかった状況が現実のものになってしまった可能性に男は歯噛みした。


 勇者が戦場に現れた時の対策として、単純にこちらも戦力を増やすという考え方がある。参謀自身が戻る選択肢が最も簡単だろうが、そうすると大陸側の監視が不在になってしまう。合流してしまったと思われる泉の勇者に加え、もしこれ以上勇者が増えようものならその時こそ本当に前線は崩壊する。敵に上陸を許し、多くの民に被害が及ぶ。本当の最悪はまだ先だ。

 今は勇者の中でも面倒な一人を追い返せた事を良しとして、更なる援軍に備えて監視を続けるべきだろう。なにも敵の増援は勇者だけではない。一軍隊が増えるだけでも単純に戦闘時間が伸び、前線の負担が大きく増えてしまうのだから。


「部下をただ信じて待つ、か。……やはり性に合わんな」


 次は自分が前線に張り付ける作戦を立てよう。

 男はそう心に誓いつつ、次なる援軍に備えてクレーターに身を潜めた。


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