26話目 へー、結構強そー。

はい、というわけで始まりました大魔術大会!いくらなんでも情報の通達から開会早すぎだって?そんなことはありません。

大会側のブラックな一面が見えているだけです。


それは置いといて。大魔術大会は32名が参加するとかしないとか。トーナメントバトルで優勝者の将来は確定されたとかされないとか。魔術は何でも使っていいけど、手加減はちゃんとしないとダメ。

私に不利かもなんて思っているのかい?そんなことはない。死ぬ寸前までいたぶって優勝してやる…。

ストレス発散の礎となるがいい…。










「これよりッ!第106回大魔術大会の開始を宣言する!」


大会の宣言。その言葉に会場全体が湧き上がる。

老いも若いも男も女も。心の底から大会を楽しむ気でいる。



「さぁさぁさぁ!始まったぞ、大魔術大会ッ!実況は俺、バンでお送りするぞ!」


実況が拡声魔術で会場全体に声を届かせる。

その声に乗っかるように盛り上がる観客。



「ルールを説明するぞ!今大会はトーナメント制のバトルとなる!学年からトップ10に入っている生徒たち30名と、一般枠(公募)から選ばれた2名が互いの実力をぶつけ合う!そうして残った一人の魔術師が学校最強!わかりやすいルールだ、説明はここまでだ!」


一拍おいてバンが叫んだ。



「さぁ、これが!大魔術大会のォ、トーナメントだァァァァァァァ!」


会場にあるスクリーンに映されたのは、1回戦約16組の対決内容だった。



1回戦



・第1試合 ハルトVSシドリウス


・第2試合 ユーラVSボーディ


・第3試合 イグニスVSエドガー


・第4試合 アリシアVSダリア

 


…………………………………


・第15試合 エマVSラードン


・第16試合 ミカVSソルティナ





ざわつく会場。それは大魔術大会にこの国の第2王子がいるから?それは違う。では大会に教師であるユーラがいるから?それも違う。




2年生首席、ランキング1位のダリア。

1年生ランキング1位のアリシア。

3年生首席、ランキング1位のソルティナ。

1年生首席のミカ。


絶対的な強さを誇る生徒たちが第1試合から潰し合うことになったからだ。教師たちもどうなることかと興味深くスクリーンを見つめる。



誰もがその4人に注目する中…!





アリシアはプレッシャーにより、気絶していた。

なんとか体制はキープしているものの、放心状態になっている。


仕方のないことではある。この4人互角に渡り合える実力はないのに初っ端からこれだからだ。



一方、隣のミカは…。




(へー、結構強そー。)



相手を完全にナメていた。まぁ、主人公ですから!

そんな知らん馬の骨ごとき勝てるでしょ!と。

ストレス発散にはなるでしょ!と考えていた。そんな馬鹿らしい考えのミカに誰かが話しかける。





「あなたがミカさんですか?」








           ★




その人のオーラは普通の人が纏うようなオーラではなかった。明らかに、格が違う。


太陽を溶かしたようなオレンジ色の髪。その髪は長く、腰にまで届いている。翡翠色の瞳からはその意志の強さが伝わる。



「私はソルティナ・グランドリオン。あなたの対戦相手ですね。よろしくお願いします」


なるほど、これは確かに首席でランキング1位の実力者だわ…。やべぇ、この人、アリス並に強い。

鈍っていた戦闘感覚が目覚め、アラートを鳴らす。



「そうだよ、私がアンドウ・ミカ・ゼルディア。はじめまして、ソルティナ先輩」


「入学式のスピーチ、拝聴しました。あれだけの目標を掲げたあなたとのバトル。楽しみですね」


「そーですね」





私達の間に見えない火花が散る。



それは唐突に塞がれた。



「何あんたたち喧嘩売り合ってんのよ、ソルティナ。そんな雑魚に負けないでよね、あなたとのバトル楽しみにしてるのに。決勝までお預けとか、どんな焦らしプレイよ、全く…。

まぁ、誰であろうと私が勝つだろうけど、ね」


もう一人の最強、ダリア。その髪は夜の暗闇を溶かしたような漆黒。その赤い瞳に映るのはミカはなく、ソルティナである。私は眼中にないらしい。



「その余裕面、すぐにぶち壊してやるわ、ソルティナ。楽しみに待っていてね?」


「そうですね、それは楽しみです」


「よろしくね、ダリア。アリシアが負けるなんてことはまずないと思うけど、戦うことになったらよろしく」


「はぁ?何コイツ。勝手に言っとけよ」


煽るダリアと余裕のソルティナ。ミカも睨み合いに加わる。



周りの空気が凍り、圧倒的なプレッシャーに会場にいる誰もが喋らない。しかしその顔はバトルを楽しみにしている興奮が感情となって静かに現れていた。



その静寂を貫くようにバンがルールを説明し始める。



「大魔術大会では1バトル20分で行う!魔術ならば何でもあり!どれほどの魔術の才能とバトルセンスが見られるのか注目が集まるぜ!相手を戦闘不能にさせる、または相手が降参するの2つで勝負が決まるぜ!魔道具の使用はOK。どれだけエキサイティングなバトルが見られるのか、楽しみだな!」


ふーん、20分はボコボコにできるのかー。いいこと聞いた。



「さぁ、1回戦第1試合は10分後にスタートするぞ!出場者は待機場所で待っていてくれ」









           ★


「アリシア、行くよ?おいていってもいいの?」


「わわっ、だめです、ついていきますから、待って…」


放心状態のアリシアを目覚めさせた私は控え室に移動している。



「頑張れ、アリシア。アリシアならダリアさんを倒せるよ」


「な、なんとか、頑張ってみるぅ…」





いまいちというか、不安になりそうだな、と思いながら。







控え室に行く途中、私は見てしまった。

正確には見えなかった。けれど、その事実を見てしまった。





「1回戦第1試合!」





それは一瞬のことだった。





「ハルトVSシドリウス!」





夢を見ているかと思うほど。






「用意…はじめ!」












ただ、速かった。











1回戦第1試合。ハルトの勝利。

対戦時間0.001秒。






地面に伏した対戦相手のシドリウスの血と会場に吹く不自然に強い風が大魔術大会のバトルの始まりだった。




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