これはデートですか? 2
ミカです!大変です!これは本当に由々しき事態です!まさかここに来てそんな問題に出くわすだなんて…想像できないよ!前世ではこんな時どうしてた!?私ただでさえ前世での恋愛経験なかったのに…。
「ミカさん!さっきのお店、美味しかったですねぇ〜、また食べたいです」
「そうだね、今度もアリシアと二人で来たいね」
「そんなこと往来で言わないでください、……。は、恥ずかしいですよぅ…」
会話で誤魔化したいけどそんなに効果があるようには思えない。
デートなんてそんなもの楽勝だと思っていたんだ…前世の記憶を使えばどうにでもなるだろうと…。
だが!今の私は!余りにもっ……無力だッ!
どうか、神様…わたしを導いてください…。
この時代のデートとは何をするものなのですか!
デートスポットという気がきいた場所はありますか!?
私は密かに戦慄し、恐れ慄いています。
★
どうもこんにちは!
ただいま人生の運をとてつもない勢いで使い果たすアリシアです!本当に人生で一番とはこういうことか…と思うほどです!その原因が…。
「どうだった?口に合うと良かったけど…」
「とても美味しかったですよ!」
「そう?良かった!」
隣で爽やかに煌めく笑顔のミカさんとのデートの真っ最中だからです!
アリシアさんと朝ごはんを食べてから少し経ち、私達は先程の広場に戻ってきました。広場の椅子に腰掛け、とりあえずゆったりとします。
「このあとはどうするんですか?」
「あ…。……この後は僕が考えていることがあるから心配しなくても大丈夫だよ」
「そうですか〜楽しみですね〜。今度はどこに連れて行ってくれるのでしょう〜」
「ま、まぁそんなに期待しないでね?面白いところでもないし」
保険をかけるように言ってくるミカさんには汗が見えます。大丈夫なのでしょうか?私は鞄からハンカチを取り出し、ミカさんの汗を拭きます。
「汗がすごいですよ?大丈夫ですか?」
「あ…うん。大丈夫。アリシア、スキル使わなくなったんだね」
「あ、そうですね。『概念吸収』のためにもスキルの中に何も入れないようにすべきだな〜と思って。小分けとかできれば楽だと思うのですが…」
「なら、収納魔術を覚えたらどうかな?収納魔術なら簡単だし、小分けもできるしね」
「それって『概念吸収』と間違って使ってしまいませんか?私とかテンパってそんなことしちゃいそうですけど」
「使えるようになれば結構便利だよ?」
「じゃあ、今度教えて下さいね?」
「わかった、教えてあげる」
約束をして笑い合うとミカさんは頭を抱えて悩みだしました。何か助けになるといいんですが…。
するとそのとき、ミカさんはいきなり立ち上がり、納得したような表情を作ります。
「そうか!別にデートスポットに囚われなくていいんだ!二人で楽しむ時間が分け合えればいいんだから!」
「み、ミカさん?どうしたんですか?」
いきなりの出来事についていけません。すると、ミカさんは私に不思議な質問を問いかけてきました。
「アリシアは何の動物が好き?」
「え?」
私は質問の意味がわかりませんでした。
★
よくよく考えてみると、この時代のデートとはお店を巡るぐらいしかしないのでは?
デートスポットと言えばココ!みたいなざっくりした場所はないんじゃない?という発想に行き着いた私。
ならデートスポットを作ってしまえばいいじゃん!
キレイなものを見て「綺麗だね…」「君のほうが…」とか言うんでしょ、カップルは。その後チュッチュしてチョメチョメするんでしょ、カップルは!!おっと、雑念が漏れてしまった。
まぁ要するに、だ。
キレイなものを作ってしまえば早いのでは?
デートとは……お互いの思い出を作る行為と思ってしまえば…!
「動物だよ、動物。ほら、猫とか犬とか鳥とか、いろんな動物、何でもいいよ?」
「急に言われても…。強いて言うなら…鳥ですかね」
「ん。ならしっかり見ててね?」
私は広場に迷惑がかからないよう、小規模の魔術を展開する。
水魔術Lv10『クリエイトウォーター』。
水系の魔術で一番弱いけど、安全を考えるなら弱いほうが良い。
これは魔術の扱いが相当上手な人じゃないとできないだろうしなー。
「ええと、ミカさんは何をするつもりですか?」
「見てればわかるよ」
広場には100以上の水球が浮かび上がっている。
私はそれらを魔力を使って操る。水球の一つ一つが嘴を、翼を、足を形作る。それは広場にいた全員の興味を引き、何ができるのか不思議に見ていた住民たちを驚かせる。
そうして私が生み出したのは細部までこだわり抜いて作った水の鳥だった。
広場に水の鳥の体が乱反射した陽の光が届く。一つ一つがまるで本物の生き物に感じるほどの細かさ。
血が通っていない透明な体に命が宿っているような錯覚を覚えてしまう。
「綺麗ですね…」
「気に入ってもらえて何よりだよ。他にも作ってほしいものはある?」
「そう…ですね…。すいません…、綺麗すぎて言葉が出なくて…」
「ええっ!涙!?泣くほどのことだった?」
アリシアの涙に驚きながらも水を操り、鳥たちを空に集めて一つの水球にする。
次に作るのはもちろん……。……何作ろ…。
ネタがないし…もう少し時間稼ぎたかったけど、フィナーレにしますか。
もう一度『クリエイトウォーター』を使い、水の量を増やす。そうして出来上がったのは、商人街の上空を覆ってしまうほどの水球。
こんな魔術使えば相当やばいんだろうけど、綺麗なら多分大丈夫なはず!
そして私は創造する。
敵を阻む大きな水の壁を。
万人がため息をついてしまうほどの綺麗な塔を、部屋を、その玉座を。
そして国の民たちの為のその城を。
そして完成したのは、本物を超える美しさを放ち、圧倒的な存在感を持つ王城だった。
商人街にいる人々が、貴族街にいる人々が、聖人や平民も空を見上げた。
ただその美しさは傍らにいる一人の少女のためだけに作られた作品。
「どう?いい思い出になったらいいけど」
「思い出を作るためだけにこれ(王城)作ったんですか?」
「あれ?だめだった?」
「アハハッ、おかしいですよ、ミカさんは!なんてものを作ってるんですか!私のためだけに水のお城作っちゃうだなんて!」
「そんなに笑うことなの?」
「こんな街中で大規模な魔術使えば、訴えられても文句言えないのにっ…。私のためだけにここまでしちゃうなんて……。」
笑いを堪えながらアリシアは言う。私そんなにやらかしたっけ?
「こんなことされたら……。………ホンキで好きになっちゃいそうじゃないですか」
アッ、ヤバイ、カワイイ。一瞬デレたアリシアがマジカワイイ。私が浄化されそうです。
私が指を鳴らすと城は弾け飛び、綺麗な虹になりましたとさ。
このあと。私は迫りくる衛兵たちから逃げまくりました。認識阻害の魔術を使ってスタコラサッサ。
アリシアと学校に帰るとき、しまらないですね、と言われた。
ちょっと凹みながら立ち止まると、アリシアは振り向いて、私を抱きしめてこう囁いたのです。
「私はミカさんが大好きですよ。この世で誰よりもです。誰にも渡しませんからね?」
ハグからのその告白はやばいです。
私は百合が好きなわけではないよ!だけど…。そこらの男にこんなかわいいアリシアを渡したくないので、束縛しちゃうのもアリかなと思ってしまうミカでした…。
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かわいいアリシア!いかがでしたか!?
ハグです、ハグ!愛情表情が可愛いでしょう!?
ディープキスをするような主人公とはかけ離れた清純さ!
書きながらなんでこんな対極なキャラを作ってしまったんだろうと長時間考えてしまいました。
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