23話目 自由落下と付与魔術


「やっと集まれましたねー。一時はどうなるかと思いましたが」


「そうだな、誰かさんのせいでこんなことにならなければよかったのにな」


「右に同じく」


「なっ!べ、別にそれくらい、いいじゃない!」


合流した私達はそれぞれの無事を喜ぶ。まぁ、特に心配していたのはアリシアのことだったけど…。

一人でボスを倒せるほどに強くなったのだから、今度から心配しなくてもいいかもね。

皆もまぁ、元気そうで何より。



「もうここに用はないし、転移魔術で帰るよ」


「ああ、わかった」「はーい」「わかりましたわ」


3人からの返事がくる。早速、私は魔術を展開。



しかしここで問題が。


「おろ?魔術が展開されない。あ、あれ?」


転移魔術は光った後、すぐに消えた。


「魔力が集まらない?ううん、違う。魔力が霧散されて魔術が展開できないのか」


「そ、それはどういうことですか?」


「帰れるには帰れるけど時間がかかると言うか…その…魔術が失敗してもおかしくないってことかなー、アハハ」


「「「なんてことしてんの!?」」」


「私なんにもしてないよ!というより、ここの魔力が多すぎて制御しきれないっていうのが一番の問題だよ…。それがなければ帰れたのに…」


「ミカがさっきの『フレアランス』に込めた魔力が原因ではないのか?あそこまでの魔術なら相応の魔力も籠もっているだろうし」


「それは…そうでしたね…」


そこまで言わんでええやん。泣くよ?私泣くよ?

メンタル豆腐の私にそんなこと言わないで!

それはさておき。魔術が展開されない。これは流石に困った。強引に展開すればできないことはないけど、どこに飛ぶかわからないし。それを説明すると皆はそれでもいいから早く帰りたい!みたいなことを言ってる。特にエマは、早くここからおさらばしたいみたい。虫嫌いなんだねぇ。



私は強引に魔力を集め、魔術を展開する。

集めたところから霧散していくがそれを超える速度で展開する!光が集まり、魔術が完成した。さぁ、あとはどうなるか知らないけど、どうにかしてやる!



転移魔術Lv10!



光が強くなり、私達の視界が白になった。
















………耳元で凄い爆音が聞こえる。顔に当たる風が痛い。目を開けるとそこは…。



空でした。




…………空!?



「「「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」」」」


私達の絶叫は自由落下の音に消えていく。四人が全員、同じ速度で空から落ちてる。青く見える空と下に見える王都の街並みがきれい…なんて楽しんでいる余裕はない。


これは流石に予想できない!転移魔術で失敗するとこんなことになるんだなぁ。あれかな?座標指定が甘かったとかそういう類のものかな?強引にしすぎたなぁ…。

私は心の中で己の未熟さを反省する。




一方…アリシアは自由落下運動を体験し、半ば発狂しかけていた。



ひゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、どうなってるんですかこれぇ!お、落ちてますぅ!ミカさんの転移魔術ってこんなデメリットがあったんですかぁ!?私はちょっとずれるだけだろうなーと思ってそんなに気にしないでいたのに!まぁミカさんだから安全に帰れないなーとは思ってましたけど!だけど!

これは流石に予想外です斜め上をいってますぅ!

スキルでなんとかなりますかね…。失敗したら即死ですし…。こんなことなら遺書を書いとくべきでした…。


イグニスは完全に気絶。エマは涙をこぼしながら叫んでいた。



「こんな仕事…もう辞めてやるぅぅぅぅぅぅぅ!」







叫んでいるエマはさておき。ポジティブに考えると、今わたしたちが自由落下しているポイントは、ちょうど魔術学校の上空ということが何よりのラッキーだろう。ここで知らない土地だったら普通に詰む。ダンジョンの攻略とか夢とまた夢だし、帰りがきつい。


だから魔術を使えばなんとかなるし別にいいか、と考えてます。


よし、そうと決まれば!




付与魔術Lv10!『エンジェルウィング』!


私の背中に光が集まり、光翼ができる。


付与魔術はその名の通り、物質に何らかの付与をする魔術。別名エンチャントと呼ばれ、魔力を流すと効果を発揮する魔道具にも使われる。

身体強化魔術や飛翔魔術が付与魔術の代表的なもの。

回数かあるものや一度きりのものなど種類は多岐にわたるけど、魔術の展開が難しいので付与するのに一ヶ月以上はかかるらしい。


それを私は一瞬でできます。何と言ってもスキル『魔術の神聖(成長途中)』ですから!



空中に留まる私と反対に三人は落下を続ける。



「助けよーか?」


「「早くして〜!」」


二人から返事が。一人は泡を吹いております。

再び付与魔術を使い、ちゃんと光翼が付く。



「わ、私ついに空を飛びました!」


「……………はっ!僕は一体…」


「もうこの仕事だめだ…降りよう」


三者三様の言葉。こんなことで感動されてもなぁ…。早く帰りたいのよ。

面倒くさいから私は魔術を操り、光翼を動かす。



「「「へ?」」」








その後。空から落ちてきた私達はどうやってダンジョンを攻略したのか、みたいなことを聞かれた。

それでも、無事私達はダンジョンを攻略した扱いとなり、その日の授業は終わった。約3名気絶して死にかけている人たちを除いて。


アリシアをお姫様抱っこで部屋へ運ぶ途中、気絶していたアリシアが起きると、凄い怒って、私に抱えられながら説教をしていた。あんなことをするなんてどんな頭してるんですか?常識という言葉を知っていますか?など、結構心に響いた。というより傷ついた。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



とりあえずダンジョン終わりました。次の話はショートストーリー(小話)です。ダンジョンを攻略した次の日の話を書く予定です。



最近あんまり投稿されないのは何でかって?

ガー○ズのバ○ドのパー○ィの10連で大爆死したからですよ…。

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