21話目 イグニスのバトル!

「ここは…。洞窟か?さっきの光といい、エマのやつ、やらかしおって…。周りにミカたちがいないということは、はぐれた?いや、違うな、分断、それに近い状態か…」


暗く狭い洞窟の中で僕は呟く。そこにパーティーの皆はいなかった。


僕は先程のエマの愚行を本当にアホらしいと思っている。あれは僕に仕えてくれているが、これといった働きをしたわけでもない。戦えるのか心配ではあるが、あいつが悪い。僕は放っておくことにした。


現在位置は…。わかる手段があればいいが、そういうわけにもいかないか…。とりあえずこういうときはダンジョンを攻略してしまえばいい。

ミカの助けなど求めても無駄だと思う。流石に分断された中で僕の位置を探し出すことは難しいだろうし。



…いや?やはりそこまで難しくないのかもしれんな…。ミカは僕を助けてくれた。あの実力は本物だし、人格を疑っても汚点は見つからないだろう。


何せ僕が好きになった人だしな!今回の授業、下心が無かったのかと問われるとまぁ、あったにはあった。命を助けてくれた恩人で何より好きな人で。そんな人と一緒にいることが僕は嬉しいんだろう。王族だから見合いもある。父が婚約者を勝手に決めるかもしれない。それでも僕は彼女を愛したい。


ちなみにというか、僕はいわゆる転生者だ。元いた世界では不知火緋夏と言う名があった。交通事故で死んで、気がついたら豪華な部屋で赤ちゃんになっていた。育ち、才能を開花させ、冷たい性格とスキル『火炎魔術Lv10』を使うことから、『冷たい炎』と呼ばれた。こんな中二病大爆発なあだ名いらん!


魔術が効かず、どうしようかと焦っていたときにミカはあっさりとブラックウルフを倒してみせた。その他にも色々と驚かされたことはあったが…。それでも好きだ!……こんなことミカの前では言えない…。


ヒロインが出てきてやっと異世界の楽しさが来たか!?と浮かれてたけど、ミカは僕のことが眼中にないらしい。それでもかっこいいところを見せつけたい!








そんな回想をしていると、敵が。


これは…ワーム!?ワームは魔防、防御が高い割に俊敏が遅いモンスターだ。普通の攻撃や魔攻では歯が立たないほど強力。大きな体でのタックルや飲み込みに注意しなければならない。正直倒せないかもしれない。だけど…。まぁ、ユーラに比べればなんともないだろう!


火炎魔術Lv10!『フレイムウォール』!


まずはこっちの安全スペースの確保。これがないと一瞬で持っていかれる。


火炎魔術Lv10!『エクスプロージョン』!


魔力を抑えたが、威力は十分にある爆発が起こる。

これはあくまで牽制。多分…来る!


ゴォォォォォ!



「ッ、飲み込みか!踏ん張っていないと吸い込まれるな…」


十秒続いた飲み込みを耐え、次の攻撃の準備。








僕は腰の剣を抜く。どこか青みがかった剣身は神々しさすら感じるほどのオーラ。




ここでやるのは僕がずっと鍛えてきた技。それは…魔術と剣術の混合攻撃。スキルの複合発動。



「火炎魔術Lv10!上級剣術Lv10!」






これが僕の…蒼熾剣フラムだ!






剣身が燃え盛り、青い炎は周りを鋭く照らし、その熱はワームが思わず距離を取るほどの熱さ。




約10000℃を超えるその熱はイグニスを焼き尽くすことなく、むしろイグニスの魔力を底上げしている。



「では…行こうか…。『第一章、燐火の舞』」




蒼い炎がワームを取り囲む。人魂のような形の炎がワームを狙い、焼き尽くしていく。











戦闘時間、1分。『蛇もどきの洞窟』攻略。



その場に宝箱が残る。ちょっと焦げているな…。やりすぎたか?


【アイテム『キング・ワームの牙』×3を獲得しました】


こんなものもらっても使い道がないのだがな…。

というかあれがボスだったのか。キング・ワームなどが出るダンジョンは限られているし、多分ここは学校のダンジョンとは別のところなのだろう。


「あれ?これ助けがいらなかった感じかな?」


「そうだ。僕にかかればこんなモノ…って!な、なぜミカがここにいるんだ!?」


「私、アリシアもいるのですけど…」


「エマはどこにいるかわかるか?」


「あの子?あぁ、『魔蟲の巣』っていうダンジョンにいるよ?」


「やはり僕達ははぐれていたんだな」


「そうだねーどうする?助けに行く?」


僕はエマがやらかしてきたことの数々を思い出す。お菓子を横取りされたり、訓練中に不意打ちで魔術を打ってきてコケたところをあざ笑っていたり…。なぜ僕はエマを従者にしてるんだろうか?



「そうだな…少ししてから助けに行こう。今僕は疲れた」


「その心は?」


「単なる嫌がらせ」


「イグニスさんはエマさんに何をされたんですか?!」


アリシアの声が響くが僕は反応しない。流石に僕も疲れたんだ。あいつには少し困ってもらおうか。

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