20話目 アリシアのバトル!
「痛い…ここはどこなんですかね…?」
目が冷めた私は部屋の周りを見渡す。しかしどれほど見てもミカさんやイグニスさん、エマさんはいない。
これはもしかしなくても…。
「迷子…というかはぐれてしまいましたね…。どうしよう…」
魔術陣が展開されたときなんとなくそうなるのではないかなと思っていましたが、実際こうなると驚きもありますが、呆然といいますか、一周回って呆れてしまいます。
ピンチというほど危険性があるようには思えません。ミカさんのあの魔術を受けてから何か感覚が狂って、こういうのがさして驚異に感じなくなってしまいました。
「ここがどこか…知る術もありませんし…どうしましょうか…」
そう悩んでいたときです。
部屋の奥から矢が飛んできました。
暗闇に包まれていたのでわかりづらかったのですが、なんとか反応して躱しました。
暗闇から出てきたのは…。
「ハイスケルトンですか…。Cランク相当のモンスターは生徒が倒せるようなものではないのに…。それが出るということは……。考えたくはないですけど…ここは学校のダンジョンではないということですね…」
ハイスケルトンはそこそこに強いモンスターです。黒魔術と弓術もしくは剣術をもつような個体が多いと聞きますが…。
ハイスケルトンが出るダンジョンはなかなかにありません。つまり、大きなダンジョンに転移させられた感じですかね…?
「ぐぅぎぃがぁぁぁぁぁッ!!!」
ハイスケルトンは私に矢を撃ってきますが…そこまでの速さはありません。難なく避けて対応します。それに驚いたのでしょうか、ハイスケルトンは私に何発も矢を撃ちますが当たりません。
「今度はこっちから行かせてもらいます!」
突風魔法Lv10!『フィリップ・シュート』!
魔術で発生した突風にハイスケルトンはよろけます。この隙を逃しません!
氷結魔術Lv10!『アイス・ドロップス』!
8つの氷塊が隙だらけのハイスケルトンを狙います。
「ぐがぁぁぁぁ!」
よし!ダメージはしっかり入るみたいです!魔術も使ってこないのならそこまでの驚異ではありません!
「ぐぅ………。グッ、グガァァァァァァァ!」
「!?何をするつもりですか!」
私は咄嗟にハイスケルトンを潰そうとしますが、ワンテンポ遅れました。
ハイスケルトンは…仲間を呼んでしまったそうです…。スケルトンやゴブリン、上はリッチまで…!
それもありますけど…。
「ッ!?な、なんでこんなにアンデッドがいるんですかぁ!き、聞いてないですよぅ!」
こっちは年頃の乙女です。怖いものは怖いんですええ、仕方ないじゃないですか!
そんな私の葛藤を置いてアンデッドたちは次々に私を攻撃します。弓矢で、剣で、槍で、魔術で。
特に厄介なのはリッチです。
リッチはアンデッドの中でも最高位と言っていいほど強いモンスターです。魔術の攻撃も高く、魔術の耐性も強い。私のような純粋な魔術師にはとても厄介としか表せません。
「『概念吸収』!ミカさんほどではないといい、吸収しにくいですね!」
吸収するには多すぎる魔術をポンポン放ってきます。流石にこんなこと、ミカさんでもできない…あれ?でもミカさんならできそうですね?というより、ミカさんよりも格下に何を怯えていたのでしょうね?
私の頭の中はクリアになり、戦闘に集中できました。
どうにかしてこの集ってくる下位のアンデッドから抜け出したいですね…。何か策は…。
あ!いやでもこれは流石に…でもできるならすごいですけど…。
私の考えついた作戦は一種の博打みたいなものです。それでも…。
「思いついたらやってみないと損です!やってやろうじゃないですか!」
半ギレです。から元気です。それでも私は諦めません。
「『概念吸収』」
私はスキルを使い、あるものを吸収しました。
それは…。
空間です。私は空間を吸収しました。
これをすると何が起こるかって?
これをすると…空間、空気がその部分だけなくなり、いわば真空の状態が出来上がります。ミカさんに教えてもらったのですが、私の『概念吸収』の中はぶらっくほーる?のようなものに似ているそうです。気体が一切ない状態なんだそうです。
真空の状態を現実で作るとどうなるのか教えてもらいました。真空を作ると…もとに戻ろうとして吸い寄せられるような現象が起きるらしいです。
その時私には理解できませんでしたが、「空気がなくなると吸い寄せられる〜」とだけ覚えてました。まさかそれを使うことになるとは…。
「グ?ぐがぁぁぁぁ?!」
アンデッドたちはパニック。雑魚だけ吸い取れればいいと思っていましたが、リッチまで吸い取れました。これは重畳。
そしてここからが私が今さっき思いついた大博打な一手です!
アンデッドたちは真空だった部分に吸い寄せられています。つまり大きな塊になって集まっているということです。それならいくらでも蜂の巣にできちゃいます!
氷絶魔術Lv10『アブソリュートゼロ』!
私は吸収した空間を使い加速して、モンスターにタッチ。魔術を使いました。
これは使い勝手の悪い魔術と言いますか……。どちらかといえばそこまで使える魔術ではありません。ですが、接近戦に強く、氷絶魔術の中で一番の威力を誇る魔術です。触れたものの物質の原子運動、つまり、生物としての活動を止めてしまうほどの強力な魔術です。
これはミカさんに教えてもらったのですが、あまりにも魔力(MP)を使うので、使用するのを避けてきました。私が氷絶魔術の中で使える唯一の魔術です。切り札です。
「グガァァァァァァァ!アァァァ…………」
一度放った魔術はモンスターを次々に凍らせていきます。連鎖していく凍死は恐ろしくも儚いものでした。
「はぁ、はぁ…。な、なんとか勝てましたぁ…」
私は安堵し、腰をおろしました。流石にその場に寝転ぶなんて女の子らしからぬことはしません。
それでも私の中には安堵6割、勝利の嬉しさ3割、恐怖1割が渦巻いています。
こんな応用があるとは思いませんでしたが、なんとか勝てたみたいです。これはやっぱり…。
「ミカさんにキスしてもらわないと、お釣りが来ませんね…」
なんというか…あれ以来、あんなキスをもう一度したいという意欲が抑えられず…。今でも思っただけで少しムズムズしてきます。というよりムラムラしてきます。なんて言うですかね、こう、キスしたときの唇の柔らかさといいますか、近くで見たときの美しいルックスといいますか、透き通った目が華麗だったといいますか、その〜、はい。
正直頭撫で撫でしてほしいです。
あぁ、でもハグとかもいいかもー!あーんなことやこーんなことも…。
「アリシア!怪我してない?大丈夫?」
「ひゃわぁぁぁぁぁぁぁ!ミ、ミカさん!?ど、どしてここに!?」
「転移魔術を展開してきたけど…。無事みたいだね!良かったー」
はわわわ!?み、見られてませんよね?あんなとろけた顔を見せるなどだめとは思っているのですが…仕方ないですよね!だってミカさんですし!
ここは素直に報酬を受け取りましょう!
「ミカさん!私、頑張ったので頭ナデナデしてほしいです!」
「アリシア!?何を言い出すの!?」
「私だってアンデッドと戦いました!それで勝ちました!頑張った人にはご褒美が当たり前です!ということで私を撫で回してください!」
スッとミカさんが身を引く。ドン引きされてますかね?それはそれで悲しいですが…私は諦めないです!
「み、ミカさんが望むなら、あ、あーんなことやこーんなこともしますよ!?」
「何を言い出すの、アリシア!?」
わ、割ととんでもないこと言ってしまいましたぁ!
で、でも事実ですし、パーティーの仲間ですから!
「………そういうことを望んでたんだね…。なら私は…その望みに答えてあげるよ…」
えっ!ほほほほほんとですか!
あれ?ミカさん?なんですかその女王様のようなエッチな服は?正直キュンキュンきますけど、その服って一体なんの服…鞭?一体何を…♡!?
「ひゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?♡」
な、なんですかぁ、これぇ!き、気持ち良すぎて、すぐにイッちゃいそうですぅ〜!
「これはね…ドライアド・クイーンのドロップ品、『ドライアド・クイーンセット』。この鞭で叩かれたら、性嗜好関係なくドMにしちゃうんだって……だからさ?いっしょにきもちよくなろ?」
「め、目が座ってますぅ!こ、こんな状態でのプレイとか嫌です!せめて部屋でゆっくり愛してほしいです!」
「ヤッてほしいっていったのはありしあだよぉ?さ、いっしょにシよ?」
い、言うことを聞いてくれません!こうなったら!
『概念吸収』!
ミカさんがこの服を着たことを吸収!さらに!私がミカさんの前で、「シテほしい」とか言った記憶を吸収!!
「あ、あれ?私、何して…」
「も、下に戻りまひたぁ…」
「!?どうしたのアリシア!?」
このあと私はミカさんにお姫様抱っこしてもらいました。正直むっちゃご褒美です。ありがとうございました。
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アリシアちゃんがイカれました。たった2話で何があった、と思うほどのキャラ変。作者もびっくり。
アリシアちゃんの初めてのバトルでした!ミカさんもそうですが、アリシアちゃんはだいぶチートな感じになっています。『概念吸収』の負担はミカさんとの修行で上限が上がっています。それを書くのを忘れてました。今は街一つ吸収したくらいではっきりと負担が見えるくらいになってます。
長々とすみません。ハート(?)とか応援よろしくおねがいします!(PVが遂に100にまで行きました!そんなにないけど、嬉しい!)
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