17話目 前日準備&え?遅刻ですか?
街の門の『近く』に転移しました。魔術を展開していたときに『あれっ、街の門に直で転移で現れたらマズくね?』と思い、展開し直してなんとか逃げた。誰にも見られていないような気がする、そんな気がするはず。
というわけで王都の西門前に来た!もともと西門前から出たからそこを通らないと手続きが面倒くさいんです。いちいち確認のために数時間削られるのもあれなので。
「門番さーん、通して下さーい!」
「え!?嬢ちゃんなんでこんなところにいるんだい?!それよりも無事か?怪我とかしてないか?」
「怪我はしてないですけど…」
「ちょっと待ってくれよな。おい、お前ら!門を開けろ!ハーフエルフの嬢ちゃんが帰ってきたぞ!」
そう言って門の上から降りてきた門番さん。門番さんはお仲間さんに声を掛けて門を開けてくれた。
何でこんなに過保護というか…焦っているというか…。なんでしょう…ってあれか、ドラゴンたちか!
それでこんなことになってるんですかね?一応聞きますか。
「あの〜この騒ぎってもしかしてドラゴンが来たからですか?」
「嬢ちゃんは知ってるのか。そうだぜ、ドラゴンの大群が見えたから王都が大騒ぎでなぁ。国王様が直々に視察に行ったんだよ。一応のために門は閉めておけと連絡が入ってな。大変だったぜ…。というか、そこの二人は連れか?出るときはいなかったと思うんだが」
……どう言い訳をしよう。『この人たちはドラゴンで〜』とか言ったら確実に殺されるし…下手したら国家反逆罪で捕らえられるのが落ちだろうしな…。
「この人たちは私の従者です!実家の方にいたこの二人がしれっと辞めてついてきたみたいで…」
これ以外の言い訳は通じなさそう。ふたりとも美男美女のメイドと執事。元貴族みたいな雰囲気を出したら許してくれるかな?というより許せ。
「!そうかい、そうかい!わかった。身分証はあるのか?」
「身分証は家に置いてきたみたいで…」
「苦労していたんだな。身分証を作っておくから二人の名前を教えてくれ」
「私はローズです」「私はエントです」
「「主様に忠誠を誓います!」」
息ぴったりだね、ふたりとも。
「よし、と。できたぜ、お二方。それをなくすと後々が面倒だからなくすなよ?」
「主様にご迷惑を掛けるなどありえませんから!」
「左様。そんな愚かしいことをするほど呆けていませんので」
そんなに言われても何も出てこないぞー?飴玉やろうかー?
そんなことがありながらも私は王都に帰ってきた。
反省することがたくさんありすぎるな…。
★
ギルド。私は依頼の未達成を伝えた。
「シスさんすみません。ゴブリンを倒そうとしたらドラゴンが現れて何もできずに帰ってきました」
「ええっ、ドラゴンから逃げてきたんですか?ミカさんならドラゴンなら簡単に倒せるものじゃないかと思っていたんだけど…まぁ、ドラゴンですしね。流石に逃げてきてくれてよかったです。ホッとしました。倒してきたら人間性を疑うところでした。」
そんなことを聞いた一部の冒険者から反応が。
「よし、賭けは俺の勝ちだな!ドラゴンは流石に倒せないにきまってるだろ!」
「ミカちゃんなら倒せると思っていたのに…」
私で賭けをするなよ、アホども。ワイバーン倒してんねん。一撃やねん。
ちょっとムカついたけど落ち着いてから依頼を断念することをシスさんに伝える。
「まぁ、仕方がないですね。また今度の依頼も受けてもらえますか?」
「すいません、明日から魔術学校の寮生活でそういうのができなくて…」
「ええっ、魔術学校の生徒だったんてすか?!言ってくださいよ、ミカさん!」
「言わなかったっけ?」
「聞いてません!」
ホウ・レン・ソウがしっかりしてなかったみたいだな。
「魔術学校の生徒なら冒険者ギルドではなく魔術師ギルドに行くべきでしょう!」
「そういうの聞かされてなかったんですけど?」
「あれ、言ってませんでしたか?」
「聞いてません」
シスさんもかい。人のこと言えないぞー。
「魔術学校の生徒は魔術師ギルドの登録が推奨されています。冒険者ギルドは魔術師にとってあまり快い存在ではないんですよ?敵対してるんですから。揉め事も結構あるんですよ?」
「それはその人が悪いじゃん。私ら悪くないでしょ?それに、そんな差別したところで何も変わらないし、始まらないよ?」
「それはそうですけど…」
「競うのはいい。でも、争うのはだめだよ?」
よし!いいこと言った私!するとローズが前に出てきた。
「争ってもどうせ冒険者ギルドが勝ちますよ?だって主様がいるのですから、相手の勝ちは万にひとつもないでしょう」
え?やめてよローズ。そこでぶっこまれるとちょっと違うんよ。
「そうです。主様に勝てる相手などこの世にいません、断言しましょう」
エント?何煽ってくれてるの?え、これ絶対面倒やん。巻き込まれるやつやん。
「そ、そこまで言うほどなんですね…というかお二人はどなたですか?」
ローズとエントが完璧な礼を見せ話す。
「私は主様のメイド、ローズと申します」
「同じく執事のエントです。以後お見知りおきを」
「ミカさん、貴族だったのですか?」
「違いますよ!実家から私についてきた従者です!貴族ではないです!」
メイドとか執事はやはり上流階級の人たちが雇うようなものらしい。
「どうせ魔術学校に入るならお世話係とかが必要かな、と思いまして」
「相変わらずやることがぶっ飛んでますね…。私はあなたとの絡みでなんとなくあなたがどんな人がわかった気がします」
「?シスさんにとって私は?」
「世間知らずの激強ハーフエルフ」
世間知らずとは失礼な!まぁでもあってるのかな?ローズとエルフが一緒になって頷いている。周りの冒険者も賛同の声が。私は悪くない!こんなエグいスキルを持ってしまったから悪いんだ!
「じゃあ、また時間を見つけたら顔を出しますね!」
「そうしてください。また会えるのを楽しみにしていますからね!」
そう言ってシスさんは笑顔を見せた。それはもう破壊力抜群で見たものを癒やすヒーリングスマイルでした。
★
昨日はユーラさんとフーラさん、私と従者ーズの5人で夜までお別れ会を開いていた。私が学生で明日からいなくなると言うと、ユーラさんは抱きつき、フーラさんはユーラさんの面倒を誰が見るんですか、と怒ってきた。私はそんなことをしていた覚えはないんだけどな?ユーラさんはお酒を飲み始めるし、フーラさんは逃しません!と私に抱きついてきた。その直後に睡魔で寝た。私としては勘弁してほしいな、と思った。見た目キレイなフーラさんに抱きつかれたまま寝られるのはご褒美かと最初は思っていたけどだんだん重くなってきたし、ユーラさんは絡み酒がひどくなってきた。ちょっと待って、私まだ10歳。お酒飲めない。
そしてユーラさんが潰れたあと、フーラさんをエントに持ってもらって私は自分の部屋へと戻った。
ここまでは覚えていたんだ…。だけど疲れでどうしようもなくて私は二度寝をかましたんだ…。そしたらいつの間にか遅刻してた。
「わぁぁぁぁぁ!何やらかしてんだ、私!」
着替えながら文句をブスくれるけど、時間は待ってくれません。とりあえずローズとエントに荷物をまとめてもらうよう言って学校に行く準備をする。
よし!
『風龍亭』の受付のところに多めに代金を入れた袋を置いて私は自分の部屋へと戻り、転移魔術を使った。
そして同刻。いよいよ魔術学校の入学式が始まっていた。厳かな雰囲気と盛大なオーケストラの演奏をバックに魔術の才能を持つ子どもたちが次々に入場していく。
「総勢100名!ここに汝らの入学を許可する!大いに学び、未来の英雄になるために努力を積み重ねるといい!」
全員が集まり演奏が止まる。静かな式場の壇上に立った人物。祝いの言葉を言ったのは学校長ルーク・ハンネスだ。たった一言。されどその一言には長年才能を見て、才能を育ててきた指導者としての圧倒的な威圧感がある。
「それでは新入生の挨拶となります。アンドウ・ミカ・ゼルディア!壇上に来なさい!」
我らが主人公が呼ばれるが返事はない。
「ミカ!早く壇上に来なさい!それともいないのですか!」
司会の先生がそう叫んだときだった。
壇上に魔術陣が現れる。誰もが魔術陣に目を向ける中、シルエットが浮かび上がる
「誰か私のこと呼んだみたいだけど、気のせいかな?呼んだって人は手を挙げてー」
シルエットから声がする。そんな呆けた質問をする空気読めない人はそう言って姿を現す。
金色の髪に翡翠色の目。見るものが見ればその人がハーフエルフだということがわかるだろう。制服姿のその人から発する美声は誰もを黙らせる。神秘的な魔力は隠されていても、オーラが圧倒的強者という存在を示す。
理論上は可能だか不可能と言われた転移魔術を使った。誰もがそのことを未だに信じられない中、ミカの口から言葉が出る。
「えーと、ここは…あぁ、式場か。一瞬わかんなかったや。で、これは…挨拶だよね?
やらなきゃいけないんだよね?」
大きく息を吸い言葉が流れ出す。
透る声から並べられるのは全てがそこにいる全員を驚かせることばかりだった。
「皆さん、はじめまして。
私は、アンドウ・ミカ・ゼルディアと申します。以後お見知りおきを。僭越ながら代表の挨拶をさせていただきます。
私達、新一年生には優れた才を持つ方々がたくさんいます。
その中で私は個性の波に溺れないようにしたい。
常に慢心と妥協をせず、己を磨き続けたいと考えております。私は未熟者なのでね。
今この場にいる全員が恐るべきライバルであり、私の目標です。ならばこそ、その才能に追いつくよう、全力を尽くし、それを超える。
だから皆さんには私ごときに追い抜かれないよう、しっかりと頑張って欲しいものです。悔しかったら私を才能とを持って引きずり下ろしてください。期待してます。
これくらいですかね…。ではこれで私の挨拶とさせていただきます。ご清聴どうもありがと」
最初の方は良かったのに、途中から全力で煽っていく。それが私クオリティー。えーと座る席座る席〜はここか。私は席につく。ちなみにだけど従者ーズは下がっておくよう転移しているときに言っておいた。
貴族のあのポカーン顔。ほんとにおもろい。学校長も驚いとるよ。
心臓潰れるかと思うほどのプレッシャーの中で頑張った甲斐がありました。
そうして私の学校生活は慌ただしい閉会の挨拶と共に始まった。
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ホントに申し訳なく思っております。Ryu-neです。
更新が遅くなりほんと申し訳ないです。
ネタがあんまり決まらなくて。スランプですかね?
今回はそんなお礼も含めて長めにしてみました。これが普通くらいなのかな?そこらへんを教えてくれ〜。メッセージとか期待してます。
そんなわけで安藤さん、遂に魔術学校に入学しました、おめでとーパチパチパチ!
シスさんとのお別れシーンは書きましたがユーラさんとフーラさんは寝てます。置き手紙くらいしてるんじゃないですかね?
そこの裏設定はまた後日まとめて更新してやろうと思っております。お楽しみに!
それと、ですが。王都編は多分ですか次の章間で、魔術学校編になると思います。内容が分かりづらいですよね?すんません。新たなモブキャラが出てきます。モブが多い中、やっと中心になって出てくるあの王子様ともうひとりの新キャラが物語の鍵を握るようになっているんですが、どう関わらせようか迷っております。ネタバレはここまで!
いつも『安藤ミカさん!手加減してください!世界が滅んでしまいます!!〜手加減してもチート級!?な転生ハーフエルフの異世界魔術師物語!』を読んで頂き、ありがとうございます!PVはそんなにいってないですが、応援してる人がいるという事実がすごく嬉しいです。ぜひお気に入り登録とか色々応援お願いします!
追伸:『安藤さんはめげない。』ですけど、紛らわしいことに主人公をミカという表し方になっているので近日中に題名を変えたいと思っております。紛らわしいことしてすんません。
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