11話目 安藤さんは白馬の王子様だった!? 後半パート



ええっと………。なんか子供に泣きつかれた。

こんなにお願いされたら………誰だってねぇ……?



というわけで私はいい格好の男の子とさっきキャンキャン騒いでた女の子を両脇に持って移動しています。




「きゃぁぁぁぁ!!!止まって!お願いだから止まってぇぇぇぇぇぇ!」



と叫ぶのは、女の子のほう。森の中を風よりも早く駆ける。女の子から聞こえてはいけない声が聞こえてきてるな。男の子は泣きつかれて眠ってる。地味に重いな。


「舌噛むよ、そんなに叫んでると」



「誰のせいでぃゃとっ……。舌噛んだ…」


言わんこっちゃない。

そうしてると、金属が響く音が聞こえた。

そこには全身鎧の騎士っぽい人たちが。

あちゃー、3人やられてるな〜、増えとる。

あんなとこで時間食うから〜〜。



「ッ!エマ!何故戻ってきた!」



「あなた達を助けてくれる人を見つけてきたの!」



……君、よう担がれながらそんなかっこよく言えるな、尊敬するで。舌痛いんとちゃうん?



ええっと?戦ってるモンスターは?




ブラックウルフか。ちょっと大きいから群れのボスかな?



「そんな女の子が戦えるわけないだろう!早く逃げろ!」



なんか叫ばれた。私弱いんかなー。



まぁ、いい。あのモンスター倒して宿代を稼ご!

そんなに余裕があるわけでもないし。



魔術の準備。………あ!そういえば!アリスたちに手加減しろって言われてたんだっけ。

めんどいなぁ。



とりあえず、闇魔術のダークバレッドでいいかな。威力そんなにないし。多少のダメージとデバフが低確率で付与されるやつだ。




魔術を唱える。もちろん無詠唱で。






『ダークバレッド』





ドンッ!と空気を震わせて放たれた一発の黒色の弾はブラックウルフの頭を撃ち抜いていた。











ドサッ、とブラックウルフが倒れた。





















騎士や女の子は呆然としていた。



スタスタとブラックウルフの死骸に近づいて収納魔術の中に放り込む。




魔術のことだが。

魔術にはいくつか種類がある。私が使うのは無詠唱魔術と呼ばれるものだ。通常、魔術は詠唱するか、紙を媒介にして魔術陣を書いて使う2種類が一般的。でも、それだとどうしても問題がある。


詠唱は一度噛んだりして失敗するとまたはじめからやらないといけない。その分、時間のロスの隙が生まれる。また、魔術陣の方は、ノータイムで使えるけど、作るのが大変。3日間MPを注いで作る。

それと、消費物という点。戦っている最中にどうしてもなくなってしまう。


だけど、無詠唱魔術は違う。正確なイメージはもちろん、どんなふうに構築されるのかなども想像して詠唱しないといけないので、難易度は高く、できないことが多い。


私は魔術の神聖があって、その中に魔術のイメージが付いてくるから簡単にできる。



と、まぁ、不意打ちなどに使えて色々便利なのだ。




エマという女の子から問われる。




「あなた……何者なの?そんなに強い魔術師、見たことない…」






そんなにかしこまらなくてもいいのに。さっきの威勢は消えてる。

























「通りすがりの学生で〜っす!」




逃げた。なんかめんどいことになりそうだったし。

そして私は森を抜け、やっと王都へ向かって歩き始めた。






           ★




「今の女、何だったの?あの魔術……学生のそれとは全く違うじゃない……。宮廷魔術師でもあんな威力を無詠唱で放つなんて……」




エマを見ると信じられないのだろうか目を擦っている。

だけど…私の目には…、彼女が、彼女のことが……





かっこよく見えた。





「あんなにかっこいい女性がいるなんて……」



「そうね、あんなに…………。かっこいい?!どうしたの、イグニス!あなた頭でも打ったの!?」



「ううん、違うよ、エマ。僕は…僕は…あの人に惚れてしまったんだ……!」



「なんで?!どこにそんな要素があったのよ!?」



すごくギャーギャーうるさいエマがなんか言ってるけどそんなことどうでもいい。あの人は何者なんだろう?魔術が使えて学生というなら王都の魔術学校の生徒に違いないな…。なら僕がやることは唯一つ。



「これより我々は王宮へ帰還する!そして現地解散!私はやることがあるんだ!」




「ほんとにどうしたの?!イグニス!?ちょっ…、待って!後始末は!?報告は〜?!」



後ろから騎士やエマが追いかけてくるが気にしない。


今の私の頭の中にはあの女性とお付き合いしたい、ずっと隣りにいてほしいという、ある意味純粋な思いでいっぱいでしたとさ。

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