王都編
10話目 安藤さんは白馬の王子様だった!? 前半パート
魔術陣が浮かびあがる。
光が出てきたかと思うとそれは人の形を作った。
金色の髪に翡翠色の目。エルフと似たような形の耳。白色のワンピースを着た少女が現れた。
「よしっ、成功だーー!」
精霊のような美しい声から出たのは雰囲気ぶち壊しの一言だった。
アメリト平原。美しい自然が溢れる場所だ。湖が、花々が、平和を体現しているような場所。
思わず目を瞑ってしまいそうになる。
王都から近い平原で、冒険者たちの姿も遠目からちらほら見えるが、特に気にしない。
「さて、早速王都へ向かおうかな〜。入学式は明後日だし、宿も取りに行かなくちゃ」
そうして意気揚々と王都へ行こうとしたときだった。
「うわぁぁぁぁ!!!」という声が小さく聞こえた。
次に感じたのはそこそこに強いモンスターの気配だ。
C級冒険者のパーティが一つ余裕で潰れるくらいには。
あと……、人族かな?6、7人くらい。
2人やられて動いてない。
ここから……?3キロ。森の中で戦ってるのかー。
誰も気づいてないし、やばいのかな?
…………。私はスキルではないけど、気配を察知できる。お父さんがよくそういう姑息な手を使ってきたしなー。どうにか見破れないものかと思ってたらなんとなくわかって。いい感じに使えるようになってた。
それを使って位置ぐらいは把握した。
ここで見捨ててもなぁ………。多分、悲鳴は子供の声だったし。
「助けに行くかな…」
身体強化魔術Lv10ッ!
魔術の神聖のスキルにある、魔術を使う。
ついでに……突風魔術Lv10!
嵐魔術とかだとここらへんがえらいことになるから自重する。
私は姿勢を低くし、突風魔術を使って助けに向かった。
★
僕………イグニス・M・シーファンネルはモンスターに襲われていた。
「王子様!お逃げください!こいつが相手では時間稼ぎができるかどうかもわかりませぬ!」
「だけど!そんなことしたら君たちが!!」
彼らは必死に剣を振るい、魔術を唱えている。
「いいのです、私達のことなどっ!今は自分の命だけをお考えください!」
「そんなこと………できるわけがっ……!」
「逃げますよ、王子。今回は…相手が悪すぎた」
従者のエマに担がれその場から離れてしまう。
「ッ!エマ!離せ!彼らをっ!助けないとっ!」
「そんなことを言ってる暇がないのですっ!私だって……私だって…悔しいのは同じですっ……!」
「エマ……………」
エマは私と同じように悔しがっている。
それはモンスターを倒せなかったからだろうか、それとも仲間を救えなかったことだろうか……。
私は願った。
誰でもいいっ!彼らを!騎士たちを助けてくれっ!
「君等、どうしたの?ここらへんは危ないよ?」
それは精霊が発する声と似ていた。
澄みきって透るような声。
そこにいたのは……一人の少女だった。
私と同じ年齢のように見える。だが、森に入るには些か軽装すぎた。
「君!こんなところにいてはいけない!早く帰るんだ!」
エマが叫ぶ。だが、そんなことは関係ないとばかりに。
「モンスターはあっちにいるんだよね?あなた達は逃げて。私、倒してくるから」
…………………………………!?私は耳を疑った。
倒す?こんな華奢な女の子が?
そんな気持ちを代弁するようにエマが叫ぶ。
「そんなことっ!できるわけないじゃない!あいつは!あなたが戦えば殺されるほどに強いモンスターよ!?バカも休み休みっに………!」
「ちょっとまって、エマ。…………君に聞きたいことがある」
「何かな?」
「もし……もし君がモンスターを倒せるほどの実力を持っているならっ…わたしの騎士たちをっ………助けてください…………!」
私は泣きながら乞い願った。
そんなことができるわけない、できるわけないけど……もしできるなら………。
彼女は私に手を差し伸べてこう言った。
「いーから。早く行くよ?」
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