5話目 赤ん坊ってそこらへんに落ちてるのか?


俺はヘンリー。

ロットタウンという町で冒険者をやってる。

それなりに腕はたつ自信もある。

今日はクエストを受けないとな。

愛剣と装備を揃えてギルドへ向かった。


「よー、久しぶり、ヘンリー。奥さんとは上手くやってるかい?」


「当たり前だろ、毎日ラブラブさ。お前ももうそろそろ身を固めたらどうだ?」


「辞めとくよ、死んだら謝りきれねぇ。」


「そうだよな、地獄でケツ叩かれそうだ。」


冒険者たちと他愛のない会話をする。


といっても最近は冒険をしていない。

会話からわかる通り、結婚したんだ。

元パーティメンバーのアリスに結婚を申し出て認めてもらった。

Sランクパーティ『女神の瞳』の絶対的エースである俺とアリスが抜けるとなると大事件だ。

なので活動を休止という扱いにしてもらってる。



だけど…クエストが停滞してきたらしい。

ギルドが悲鳴をあげてるのを見てるのはさすがに心苦しい。

これ以上活動を休止してると、ギルドランクが下がっちまう。下手したら剥奪もあるかもしれねぇ。



鬱蒼としたリカの森に行きたくはないんだが…。

アリスのこともあるし…クエストこなさないとな。

つーわけで肩慣らしがてらにゴブリン4匹の討伐クエストを受けたんだか……。



森へ入ってすぐ討伐対象を見つけた。

道中にC級のモンスターが出たがそんなに手こずることはなかった。

スキル:遠視とスキル:隠匿を使って気配を消して観察。

しばらく観察したが…違和感に気づいた。

どうなってるんだ?ゴブリンが5匹小隊を組んで何かに集っていた。知恵があるとはいえゴブリンは最弱。

あんな集って何かを狩るとかないんだが…。

ゴブリン1匹だったら10歳のガキでも倒せる。5匹集ってもそんなに危険度は高くないし、そんなことしてもむしろ狩られてしまう。

だから群れを作ってひっそり暮らしてる。

群れを相手にすると難易度はE級からB級まで上がる。

なんせゴブリンメイジとかゴブリンソルジャーとかちょっと強い奴が出てくるし。

初心者の頃は焦りまくってやられてたな〜。



閑話休題。



まぁ、集まってるほうが狩りやすいしいいか。剣を抜いて戦闘態勢を取る。お、こっちに気づいたな。





駆ける。5匹いるとはいえ、所詮は雑魚。

つっこんできた1匹目の首を切る。続けざまに2匹、3匹。動を横薙ぎして倒す。

リハビリがてらに、ちっとばかし武技も使うか。



大きく息を吐いて集中。

剣を中段に構える。




『菊一文字』




それは武技の最上級の一つ。

点を引き裂くといわれる技。

50メートルを一気に詰めてそのまま斬り裂く技。

威力も高く、斬った結果は言わずもがな。



オーバーキルではあるが、最近運動不足だしな。

体がいかに鈍っているかを確認できた。

ゴブリンたちは結局何がしたかったんだか。

ゴブリンたちが集っていた物体に近づいた。



「ッ!!!これはまた偉いもん見つけちまったな…」



それは赤ん坊だった。産まれたてではないが赤ん坊にかわりはない。捨て子か?

ゴブリンたちに襲われていてる割に傷は浅いが…。出血してるな…。このままだと失血死か…。

まして怪我をしてるし、このまま捨て置くのも寝覚めに悪いし……。



「あぁ、もう仕方ねぇ!アリスには説明しないとな…。」



そして俺はこの赤ん坊を拾ってこの森を出た。

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