16話 えー!魔改造する気ですか?!それはわたしたちが乗るんですよ!

ユージン・カイムが連行してきたゼム・スナイパーのパイロットは、艦長代理が士官学校気分が抜けない新人で、そこそこ美少女な少尉だと解ると、驚いていた。この状況に驚いているのは、エイミア本人もなのだが。


彼が、いや彼らが自分たちを殺そうとしていた敵。


そんな視線をルナメルのクルーは、捕虜に投げかけていた。

ゼム・スナイパーのパイロットは、誰とも視線を合わせなかった。

そんな視線を受け止められる人間は、そうはいない。


精鋭揃いのゼム・スナイパ―のパイロットは、まだ20歳前後に見える。

この年齢で、ゼム・スナイパーに乗れると言うのは、かなり優秀なのだろう。


異性としては顔立ちも体つきもエイミアのストライクゾーンだが、捕虜は捕虜。

軍司令部に送ることにした。

パイロットはずっと気が張っていたが、エイミアが微笑むと、一瞬だけ素に戻ったのか不安が零れた。

泣きそうな目になっていたが、泣くのは耐えていた。


彼の戦友が載るゼム・コマンドとヒューボットは、トキトウとカイムに撃墜され、生死も解らない。


悲しいけどこれ、戦争なのよね。


捕虜を乗せたスペースランチと入れ替わりに、ショウマ・ドーキンス大尉の漆黒のゼムと、カタリナ・ヒメネス少尉の深紅の機動コルベットが到着した。

ショウマ・ドーキンス大尉は、この艦の正式な艦長だ。


「はあ」

エイミアはホッと溜息を着いた。

重すぎる責任は疲れた。


とりあえず

【強行偵察】【高機動】【カスタム】【機動コルベット】

が揃った。

これで、対空防御の弱いルナメルにとって安心できる陣形が出来る。


機動コルベットからカタリナ・ヒメネス少尉が、降りてきた。

士官学校同期の中でお姉さん的な立場の、カタリナ・ヒメネスは、とても親しみやすい存在だ。


「エイミア、おっぱい大きくなった?」

「え~少しだけ?ふふ」

「ココくんのバナナも大きくなった?」

「うん」

「ココ!ダメ!はしたない!

もっとルキ家の人間として自覚を持って!」


下ネタ大好きな点は未だ治ってない。


「ヒメネス少尉、ここでは下ネタ禁止です」

「下ネタなしで、まともな会話なんて出来るの?性欲の塊のエイミア少尉が」

「出来るわ!わしは性欲の塊ちゃうし!」


そして、漆黒のカスタムから、正式な艦長のドーキンス大尉が降りて着た。


「エイミア、あれ教官じゃない?」

ココがエイミアの耳元で囁いた。

「えっ?」

そう言えば、士官学校の入学時にはいたが、いつの間にか異動になっていた教官だ。

「ほら不祥事で左遷された」

ココの囁きが聞こえたのか察したのか、ドーキンス大尉は、

「!!!!!!!」

何か言いたそうだっだけど、言葉が出てこなかったらしい。


エイミアは、ヒメネスとドーキンスを交互に見て、「ねっ♡」とココに何かを暗示した。ココは「うん」と納得した。


「違う!あくまで偶然勤務地が一緒だっただけ!」

ヒメネスは、素早く否定した。


エイミアは慌てるヒメネスのお尻を、久しぶりにぽんぽんと叩いてみた。

その行為にヒメネスは、エイミアの元に戻ってきた事を確認した。

戻るべき場所に戻って来た感覚。『しあわせ』と言っても良い感覚。


ブリッジに向かう途中、ルナメルの至る所で、クルーと技官が話を進めている姿とすれ違った。


ルキ派と言う存在が、月面都市連合軍内にまだあるとしたら、この技官たちだろう。

弟ココの為に、兄キリルが動いてくれたのか、もしくはキリルの部下たちが自主的に動いてくれたのかは不明だが、彼らが来てくれたから、色々な事が動き出した。

それは感謝だ。ただ、彼らは良い意味でも悪い意味でもキリルの部下だ。


「お仕事お疲れ様です~」

とりあえずエイミアは、笑顔を振りまいた。

昔からの知り合いの技官が「エイミアちゃん今日も可愛いね」と言ってくれたが、独特の歓喜に満ちた目は、完全に魔に憑りつかれていた(驚)。


【魔改造部隊】の噂は本当かも。


ルナメルを魔改造・・・


エイミアは、見なかった事にして、心を落ち着かせた。


ブリッジに戻ると、ドーキンス艦長から今後の作戦が告げられた。

地球連邦の勢力圏に成りつつある宙域を迂回して、小惑星要塞第六ゲートから伸びる補給線を破壊する事。


迂回するとそれだけ、長距離の移動になる。

それだけこちら側の補給線は伸びることになる。

補給線を叩く部隊にも補給は必要。


エイミアは思い出した。確か補給線の重要性を授業で熱心に語っていた教官だ。


「迂回するって、それじゃあルナメルへの補給線はどうなるんです?」

エイミアの質問に、まるで教官時代に戻ったかのようにドーキンスの目は輝いた。

教官の方が向いているのかも知れない。


「新型の自走宇宙船ドック艦と合流し、補給はそこから受けられる」

「新型の自走宇宙船ドック艦!?」




つづく




【エイミア・サトー】ココ・ルキの幼馴染。他称・まあ出来る子。

【ココ・ルキ】落ちぶれ貴族ルキ家の次男。他称・まあ出来ない子。


【イク】五次元人

【メリッサ・カステラ―ニ】イクの担当技官


【サネトモ・トキトウ】エイミア&ココと同期のパイロット。もっとも優秀な同期。

【ユージン・カイム】エイミア&ココと同期のパイロット。もちろん友人は皆無。

【ショウマ・ドーキンス】士官学校時代の教官。ヒメネスとの情事で懲戒免職

【カタリナ・ヒメネス】ドーキンスの恋人?エイミア達と同期。


【シェーラー家のマリアナ】ココが好き。

【マリアナシスターズ】桜乃 梅乃 桃乃 の三人組。美少女感は半端ない。

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