14話 5次元人が言ってるなら、いいんじゃない♪


「白兵戦用意!」の放送に、ブリッジにいたクルーは焦った。


「拳銃?拳銃?」

「ココ、拳銃じゃだめ!小銃!小銃!」


宇宙船ドックにも銃撃の音が聞こえてきた。


エイミアとココが慌てる中、ユージン・カイムは、完全武装状態にあった。

さすが優秀さんチーム。しかしバズーカ―を艦内で撃つ気らしい。


「ゲリラの目標は、7番宇宙船ドックのルナメルと思われる」

管制塔から連絡が流れた。


数々の戦歴があるカルル少佐専用艦は、月面都市連合の象徴的な艦だ。


「この船目立ちますからね」

メリッサ・カステラーニは、イクの側でスモーク弾を確認しながら言った。


「ダメ!間に合わない!」

イクの叫び声がブリッジに響いた。


「えっ?何?」

エイミアはイクの耳元で尋ねた。

「今すぐ船を出向させて」

イクの言葉に、エイミアは1秒未満考えて、

「ココ!艦を発進させて!」

「えっ?」

「クルーズ船と変らないから、早く!

管制官!ゲートを開けて!ルナメルは出港します!」


「出港許可なんて出てません」

管制官の女子の、まるで戦場に向いていない可愛い声が聞こえた。


「マリアナ中将より、直に出港命令は受け取ってます!(嘘だが)」

「こちらには届いてません」(そりゃそうだろう)

「事務的なミスで、宇宙巡洋艦をゲリラに渡す気ですか?

わたしが責任を取ります。ゲートを開けてください!

一時的にゲリラから避難させるだけです」

「しかし」

「開けないのなら非常事態です!ゲートごと破壊します!砲撃手砲撃用意!」


エイミアは「あ~あ」って顔した優秀さんチームのユージン・カイムと視線が合い、ブリッジのスクリーンに「えっマジ?」って顔の砲撃手が視線に入った。


可愛い声の管制官は

「解りました!エアロック開きます!」


音声を消し忘れた可愛い声の管制官の

「なんて事を・・・出港許可なんかとってないくせに」

と独り言の様な小声が聞こえた後、目の前のエアロックが開いた。

やっぱばれてるらしい。


ルナメルを乗せたカタパルトが、ゆっくりとルナメルを動かし始めた。


ブリッジのスクリーンに、かなり焦った機関長のおっさんが映り、

「おい!何やってんだ。動いてんぞ!そんな命令聞いてないぞ!」

そうとうお怒りだがエイミアは、

「今から出港します」

「エンジンを起動させるだけじゃなかったのか?!」

「起動させるだけじゃなかったみたいです」

エイミアは、それはそれは可愛く微笑んだが、

「可愛いからって許される問題じゃんないぞ!ここは軍隊だぞ!解ってんのか!」

「ここは刻々と状況が変わる戦場です。

異議があるならこの戦いの後、法廷に申し立ててください!」

そんな事をされては、エイミアが完全に不利になるのたが、時は既に遅い。


背後のエアロックが閉まり、宇宙空間が見えた。


「5次元人のイクが『船を出港させて』と言うのなら、それが正解と信じたい。

誰も5次元人の意見を聞かなければ、折角の5次元人の存在意義は薄れる。

それは月面都連合のプロパガンダ的にも良くないだろう」エイミアは少尉として思った。


「ココ行って!」


ココの優しい操舵が、ルナメルを静かに宇宙空間に押し出した。


直後、エアロックの壁の向こうで、大きな爆発が起きた。

多分、イクの意見を無視したら、わたしたちは死んでいた。



つづく




【エイミア・サトー】ココ・ルキの幼馴染。他称・まあ出来る子。

【ココ・ルキ】落ちぶれ貴族ルキ家の次男。他称・まあ出来ない子。


【イク】五次元人

【メリッサ・カステラ―ニ】イクの担当技官


【サネトモ・トキトウ】エイミア&ココと同期のパイロット。もっとも優秀な同期。

【ユージン・カイム】エイミア&ココと同期のパイロット。もちろん友人は皆無。

【ショウマ・ドーキンス】士官学校時代の教官。ヒメネスとの情事で懲戒免職

【カタリナ・ヒメネス】ドーキンスの恋人?エイミア達と同期。


【シェーラー家のマリアナ】ココが好き。

【マリアナシスターズ】桜乃 梅乃 桃乃 の三人組。美少女感は半端ない。

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