13話 人付き合いレベル0には、凛々しい美少女の視線は、レベルが高すぎるらしい。
ルナメルのメカニックや機関室などのクルーは集まってきているようだが、ココたちには何の指示も命令も来ない。
少なくともココとエイミアの受けたルナメルへの赴任命令は本物なのに。
「わたしたちに、どうしろって言うの?」
エイミアはルナメルのブリッジで愚痴った。
今だ上官が誰なのかも不明だ。
完全に浮いた存在だ。
ルキ家もルナメルも、厄介者扱い?
変に戦功をあげて目立たれても、嫌なの?
クルーが忙しく働いているもんだから、何もしないのも気まずいので、ココとエイミアとイクは、ルナメルの取り扱い説明書を読んでいた。
ココが見ていたのは、子供向けの宇宙巡洋艦図鑑。
エイミアは、なんか可愛いのでココの頭を撫でた。
エイミアの背中にはイクが抱き着いていた。
「って!わしは若い母親か!」
イクの様な能力者は、5次元人と呼ばれている。
計算上彼女は5次元人と認定された。
5次元、計算上は存在する世界。
計算上存在する世界が、本当に実在する世界なのかはエイミアには理解できない。
彼女たちは5次元に住んでいて、3次元に降りて来ているらしい。
5次元世界での記憶はないらしいが。
計算上と説かれてもエイミアには全く理解不能だ。
ただ言える事は、5次元人だとしてもイクのおっぱいは貧乳だと言う事だけだ。
柔らかくて優しいおっぱいだ。
「エイミア」
耳元でイクが言った。
「何?」
「敵が来る!早くルナメルのエンジンを起動させて!」
「敵?」
エイミアは、疑問符をうった。
ここは、月面都市7番宇宙船ドックだ。
制宙権も完全に月面都市連合が握っている中枢と言ってもいい安全圏だ。
地球連邦が簡単に近づける場所ではない。
しかし一番驚いたのは、イクの髪を弄っていた担当技官メリッサ・カステラ―ニだ。
「エイミア少尉、急いでエンジンを起動させてください!」
「と言われても、艦長はまだ赴任してないし、勝手に動かすと軍法会議ものです」
「エイミア少尉、あなた責任者って言ってたでしょう」
「それは、わたしとココしかいなかったからで・・ねえ」
エイミアは、ぽつんと一人で強行偵察に関する難しそうな戦術書を読んでいるユージン・カイムに視線を送った。
ちゃんとした挨拶もした事ないけど、士官学校同期だし、優秀さんチームだったし。
カイムはエイミアと目が逢ったが、すぐに書に視線を移した。
エイミアはカイムを見つめたまま
「ボッチくん、君もクルーでしょう。何か言って!」
ボッチくん!?にイクとココがクスッと笑った。
カイムは、エイミアを、チラッとみた。
人付き合いレベル0には、凛々しい美少女の視線は、レベルが高すぎるらしい。
カイムは焦る心を鎮める事に腐心しているようにみえた。
ブリッジを見渡すと不安が充満していた。
イクの影響かも知れない。
イクが何かを感じているのは事実だろう。
技官の反応と言い、この娘は5次元人?
だとすると、何もしないと危険なのかも知れない。
「エンジン掛けるぐらい問題ないかも、メンテナンスでエンジンを掛けるのに、一々艦長の許可は取らないだろうし」
カイムは、独り言のように言った。
イクがカイムに視線を送ると、カイムはちょっと照れた。
エイミアは何かを決意したらしく
「ココ、機関室にエンジンを起動させられるか聞いてみて」
「僕が?」
「ココはちょっとした有名人だから、ルキ家の威光があれば何とか」
「・・・期待はしないでね」
エイミアはブリッジの受話器を取ると、ココに渡した。
「何だ!ブリッジか?」
職人なおっさんの声がした。ちょっと怖そうだ。
「あのお願いがあるんでが、メンテナンス的な意味でエンジンとか起動させられます?」
「はあ?お前誰だ?」
「ココ・ルキです」
「ルキ家の坊やか」
「えーと・・・はい」
「あのなお前、俺たちは今、忙しんだ!解るか?」
機関室のおっさんの声から、ルキ家の威光は効かなかったらしい。
それに気づいたココは凹んだ。
ココの凹みに引きずられて、イクの感情の影響下にあるブリッジが、さらに不安に包まれた。
エイミアは自分に集まる、イクとカイムとカステラさんの強い視線を感じた。
5次元人の直感。そんなもの本当に信じて良いの?
心に満ちる不安感は、「早くエンジンを掛けて」と叫んでいた。
心の中の何かが命の危険も含む危険を感じている。
これが戦士の直感かも?
エイミアは受話器をココから奪うと
「わたしはサトー少尉です。この艦の責任者です」
「少尉が責任者?」
「エンジンを起動させて下さい。これは命令です」
お願いで動かしてくれるとは思えない。
「少尉が命令?」
「はい命令です」
受話器の向こうで誰かと会話している声が聞こえた。
エイミアの心臓は高鳴った。多分、何らかの軍法に引っかかるかも知れない。
しかし、少尉とは言え士官の命令で動かしたのであれば、彼らが軍法会議に掛けられる事はない。責任はあくまで命令責任者の少尉にある。
責任の重い矢が心を貫いたような気がした。
「でもエンジンを掛けるぐらいだったら、あのボッチの言ってる通りテストの為と言い訳もできるはず。でもそもそも、この5次元人?の言う事が適当だったら、どうしよう」とエイミアの背中に嫌な汗が流れた。
「了解した。サトー少尉」
機関室のおっさんの声が聞こえた。
そしてエンジンが動き出す音がルナメルに響いた。
その数分後、7番宇宙船ドック内に警報が鳴り響いた。
「宇宙船ドックにゲリラが進入、総員白兵戦用意!総員白兵戦用意!」
つづく
【エイミア・サトー】ココ・ルキの幼馴染。他称・まあ出来る子。
【ココ・ルキ】落ちぶれ貴族ルキ家の次男。他称・まあ出来ない子。
【イク】五次元人
【メリッサ・カステラ―ニ】イクの担当技官
【サネトモ・トキトウ】エイミア&ココと同期のパイロット。もっとも優秀な同期。
【ユージン・カイム】エイミア&ココと同期のパイロット。もちろん友人は皆無。
【ショウマ・ドーキンス】士官学校時代の教官。ヒメネスとの情事で懲戒免職
【カタリナ・ヒメネス】ドーキンスの恋人?エイミア達と同期。
【シェーラー家のマリアナ】ココが好き。
【マリアナシスターズ】桜乃 梅乃 桃乃 の三人組。美少女感は半端ない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます