8話 新しい職場に行くと誰もいませんでした。
エイミアはココと新しい制服を着て、宇宙船ドックへ向かった。
まだあどけないココには、新しい軍服はまったくにあってはいなかった。
「さあエイミア行くよ♪」
ココは、めっちゃやる気だ。エイミアはそのココの頬を抓って見た。
可愛いし、触り心地は最高だし、癒される。
宇宙船ドックに、ルナメルは停泊していた。
しかし、人がいる気配もなく、活気は全くなかった。
まるで海底に沈んでいるかの雰囲気だ。
艦内は照明の明かりもなく、宇宙船ドックの照明の明かりが窓から入ってくるだけだった。
赴任の挨拶をと思い、ルナメル内を歩いてみたが、誰もいなかった。
静まり返った艦内に、二人の足音が響いた。
「誰もいないね」
「ブリッジには誰かいるかも」
ブリッジにも誰もいなかった。
エイミアは、赴任の命令書を見返してみた。
日付も赴任先も間違いない。
人事の単なる事務的なミスか?故意か?
落ちぶれ貴族のルキ家に対する、その落ちぶれようを楽しむ世論と言うものが少なからずある。
さらに多かれ少なかれ派閥争いも関わってくる。
故意だとすると「きついわ」エイミアは声に出さずに思った。
ココが、このまま落ちぶれれば、満足するの?
照明のつかない暗いルナメルのブリッジから宇宙船ドックを見下ろすと、整備員や兵士が、忙しく仕事をしていた。
「仕方ないよね」
エイミアの隣でココが呟いた。
その二人の様子をカメラは捕らえていた。
宇宙船ドックの見渡しの良い艦橋に、月面都市ネクタール自治軍の広報動画サイト広報官のリナは、にやけた。
「リナさん良いんですか、わたしたちは軍の広報ですよ」
広報に配属されたばかりのアーシャは言った。
「みんなが知りたいことを、みんなに知らせるのが広報。問題ないわ」
数時間後、自治軍広報動画のサムネに、二人の写真が載った。
『ルキ家のポンコツ次男、カルル少佐専用艦に赴任か!?
乗組員はみんな異動したのに(笑)』
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます