5話 マリアナさまはココくんの嫁
コントをしてるの?
こんな事が、起こり得るのだろうか?
エイミアは自問自答した。
ココの操縦する人型大型兵器ゼムは、月の山脈を転げ落ちていた。
地球より軽い重力の為、ゼムは楽しげに飛び跳ねるように転げ落ちた。
コクピットの自動制御機能を越えた動きに、コックピット内は激しく揺れた。
「ヒー!」
ココは驚きのあまりは動きを止めた。ココの処理能力を超えたのだろう。
「マジか!」
教官席のエイミアは、操縦権を教官席に移し、深呼吸をしてタイミングを計った。
「3・2・1」
ブースターを吹かすと、ゼムは上空に飛び出した。
「ふう」
山脈を転げ落ちた事は、絶対、秘密にしなければならない。
ココの、これ以上の低評価は避けねば!
「ココ復活して!」
ココの頬を叩くと、ココは「はっ!」と意識を取り戻した。
「びっくりした!ゼムで山脈を転げ落ちる夢を見てた」
「夢だと良いね」
ココはいつも幸せだ。
☆彡
ルキ家の次男を、士官学校に入れる理由があるとすれば、哀れみだろうか。
名門貴族が、目に見えて落ちぶれていく様は、哀れだ。
それもかなり出来の悪い少年だ。かなり良心が痛む。
いや、逆にそれを笑いものにしようとする思惑も、あったのかも知れない。
そんな状況下で、エミリアが考えたルキ家再興策は、
シェーラー家のマリアナさま♡とココくん♡をくっつける計画。
シェーラー家は月面都市連合の盟主の立場だ。
さらに地球の中立国・南極共和国とも深い繋がりのある家だ。
マリアナさま30歳。ココくん16歳。
月の法律では、16になれば結婚が可能だ。
マリアナさまはココくんの嫁、もしくはココくんがシェーラー家に婿入り計画。
マリアナさまとココは、まったく知らない関係ではない。
マリアナさまは、ココがまだ赤ちゃんの頃から知っている。
さらにココは、ハグしたくなるほど可愛い少年だ。
母性本能を最大限に擽(くすぐ)る容姿は、いつもクラスの女子に人形の様に抱きしめられていた。
他の男子の嫉妬心に火はつけていたが。
そんな愛おしい乳兄妹を、マリアナに差し出すのは、心が痛むが、でもここは耐え忍んで、ルキ家を背負うココと、ずっと一緒に居られる訳ではない。
限られた時間の限られた関係。
せめてココの素敵な未来を信じたい。
エミリアは、ウェディングドレスを着るマリアナとココを想像した。
「ん?」
コックピットのココが何かを察知したらしい。
ボーとしているようで、意外と感は良い。
つづく
【エイミア・サトー】ココ・ルキの幼馴染。他称・まあ出来る子。
【ココ・ルキ】落ちぶれ貴族ルキ家の次男。他称・まあ出来ない子。
【サネトモ・トキトウ】エイミア&ココと同期のパイロット。もっとも優秀な同期。
【ユージン・カイム】エイミア&ココと同期のパイロット。もちろん友人は皆無。
【シェーラー家のマリアナ】ココが好き。
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