[12] 第2層

 1層があんなだったから正直2層も楽勝でしょってなめてるところあった。

 まず1層と2層で全然構造が違った。1層は枝分かれが1つだけでほぼ1本道だったが、2層はほとんど迷路みたいな構造。

 マッピングはクレハにまかせてその指示通りに動いてたのだけれど、同じようなところを行ったり来たりでうんざりした。

 クレハはマッピングのおかげで迷ってないのだと言ってたがほんとはどうだか知らない。あるいは自分でまったく考えてずに振り回されてたせいで余計にストレスだったのかもしれない。


 それからちょこちょこ仕掛けられてるトラップと、油断してるとすぐに近づいてくるモンスター。

 1歩ごとに罠が! なんてことはないけど、こっちが気を抜きそうなところに仕掛けてある。10個ぐらいあってそのうち1個か2個ははまった気がする。たいした被害はなかったけど。

 モンスターは基本的に暗がりから奇襲を仕掛けてくる、もしくは曲がり角とかに潜んでて出合い頭に先制攻撃。もっとわかりやすいところに立ってて正々堂々戦ってほしいものだ。

 そういうわけで、HPとかMPとかステータス的には問題はなかったのだけど、プレイヤー的には精神がくたびれていた。


 だからミスをした。

 行き止まり、あからさまな宝箱。罠を探して目を凝らせば宝箱の手前が光る。

 解除しようと近づいたところで後ろからクレハの叫び声。「リィナちゃん、上!」

 とっさに天井を見上げた時には間近にコウモリの顔面があった。やば。


 至近距離に敵、攻撃は間に合わないと判断、バックステップで距離をとる。

 相手は吸血コウモリ、数は不明、多分1匹だけではないはず。

 面倒な相手だ。小型で空を飛んでいる。攻撃があたりにくい。その上、攻撃と同時に回復する。戦闘が長引くのは必至。

 といっても勝てない相手ではない。ダンジョン内ですでに何度か戦ってきた。時間をかければ倒せる。ただしそれは3人そろっての話になるが――


「こっちも敵来てる、おもちゃ兵士3体だ!」

 背後から燈架の声。同時にかちゃかちゃ軽い音が聞こえてくる。

 おもちゃ兵士も決して強敵ではない。ただやたら硬い。必然的に持久戦模様。

 挟み撃ちされた。逃げ場のない狭い通路。戦って切り抜けるしかない。

「どどど、どうすれば!?」

「とりあえずクレハは明かりつけて! 敵の数知りたい」

「わかった、行くよ、ライト!」

 瞬間、クレハを中心に光が広がる。いきなりの明るさにコウモリたちが静止した。


「吸血コウモリ7体いる、無視してそっち行くのは無理!」

「状況把握、おもちゃ兵士は1人で食い止めとく。その間にコウモリ倒してくれ、なるべく早く!」

「私はリィナちゃんの方手伝うね、手早く片付けちゃうよ!」

 プランは決まった、あとは実戦あるのみ。

 私は双剣を両手に握ると、コウモリの群れへと単身突っ込んだ。

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