[3] クエスト
クエストを受けることになった。普通に狩りをしているよりそっちの方が儲かるらしい。
受注するにはギルドで手続きする必要があって街で一番大きな建物に向かう。
いくら大きな建物といっても3人でぞろぞろ入っていくのは邪魔だろうから手続きは燈架に任せて私とクレハは外で待った。
思ったより時間がかかって暇だったので近くの屋台でクレープを買う。
クレハがなんか言ってきそうだったので先に口にクレープを突っ込んで黙らせた。これで共犯だ。
食べてる途中でようやく燈架がギルドから出てくる。そして出てくるなり私を見て「また買い食いなんかして」と言った。
なんで私だけに言うのか。クレハにも言え。
つづけて燈架が「私の分のクレープは?」と聞いてきたのだけれど私はそれをすっかり忘れていた。
その点に関してはほんと申し訳ないことをした。ごめん。
東の森に行かなくちゃいけないということで移動しつつ詳しい説明を聞く。一番簡単で初心者向けの薬草採集クエストを受けてきたと燈架は話した。
「薬草って昨日街で買ってたじゃん」私の疑問。
「あれは薬草じゃなくて正確には創傷治癒薬草効果成分抽出液だったかな。薬草液とか薬液とか呼ばれたりするけど」クレハの返答。
「なにそれわかりにくい」
「うん。みんなそう思ってるから近々名前が変わるかもねって話だよ」
「それでその薬草となんとか液は何が違うってのよ」
「薬草から有効成分を抽出したのが薬草液。アヘンとモルヒネみたいな関係って言えばいいのかな」
「どっちかというとケシとアヘンの関係じゃないか」燈架の補足。
なんでこの2人はわざわざ麻薬に例えたのか。まあわかりやすかったんだけども。
東の森にはその薬草の群生地があって強い魔物もあんまり出ないから初心者が採集するのにおすすめスポットなんだそうだ。
街を東の門から出て街道を外れればすぐ目的の森までやってくる。
そこまで背の高い木々が立ち並んでいるわけではないようで見通しが悪いというほどではない。明るい森。
森の比較的浅いところに木の生えそろってない開けた日の当たる場所があってそういうところにお目当ての薬草の群生地がありますよというのがギルドの人情報。
道中ブラックウルフだとか手足の生えてるでっかいきのこだとかに遭遇する。そんなザコどもなんて昨日戦い方を覚えた私たちの敵ではない。
MP節約のためウインドエッジを控えててもそこそこのダメージが入る。燈架も大剣の扱いに慣れてきたようで狙いが外れることがだいぶ少なくなってた。
ブラックウルフの額を正面から切りつけた時にスパンと小気味いい音が鳴ってすごくいい手ごたえを覚えた。ダメージもすごくてその一発だけで倒すことができた。
よくわからなかったのだけれどクレハによれば多分クリティカルヒットなんじゃないかという。いいところにいい角度で入るといいダメージになるとかなんとか。はっきりしろ。
でもなんだかすごく気持ちよかった。少しだけだけれど体が震えた。
もっとこの感触を味わいたいなとその後も積極的に狙ってったけどその一度きりだった。残念、要研究。
なんなく薬草の群生地に到着。休憩。
「それでどれが薬草なの」と私が聞くとクレハが「ちょっと待って」と立ち上がって「エクスプローラー」と呪文を唱えた。
雑草の中でぴかぴかと何かが光る。
すごい。探し物を見つけてくれる魔法。
「クレハがいるのもこのクエスト受けてきた理由の1つだよ」と燈架が言った。
きらきらしてる草を見つけて抜いていく。正直なところほかの草との違いはわからない。なんとなく違う気もするけど具体的に何が違うのかはっきり言えない。
なるほど、魔法使いって思ったより便利だ。パーティに1人いると何かと役立つ。
覚えることたくさんあって私はあんまりやりたくないけど。クレハに任せておこう。
近くの草を取りつくしてもうちょっと奥の方に行こうとしたところでなんだか背筋に嫌なものが走った。
立ち止まる。頭の上で犬耳がピンと立ってる感覚。なんかやばい感じ。
クレハと燈架に静かにするよう目と手で訴えた。長い付き合いのおかげでどうやら伝わったらしい、2人とも採集の手を止めてくれる。
やばい雰囲気の正体を確かめるため音をたてないように近づいて木の影からそっと覗いてみる。
まるまる太った猪が土を掘り返していた。四つん這いの状態で私の身長より大きいでかい猪。
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