行動と考察
私とスティーブは自ら進んで病気の研究施設に足を運んだ。少しでも助けになればと思ったのだ。同時に、責任も感じていたのだ。研究者たちが両手を広げ歓迎してくれたのは言うまでもない。研究所はサンノゼ国際空港から程近い場所に研究施設はあった。二人の居るところからは、1時間くらいでいける距離だ。
サンフランシスコからもその程度だろう。私たちは到着すると直ぐに色々な検査に駆リ出された。病原体の発生場所にいながら発病しない白人と、同じく発生場所にいたアジア人だ。彼らからみれば格好の研究材料だろう。
私たちは様々な検査と受けさせられた。それは苦痛の何者でもなかった。
血を抜かれ皮膚をとられ、内臓の一部も外科手術によって切り取られた。
それでも全ては人類のためだと、我慢するより仕方なかった。
しかし、こうして調べることによって面白い事実が明るみに出た。我々二人は既に感染していたのだ。切り取られた肺の一部から、その病原体が発見されたので有るが、何故、感染しているにも関わらずに発病しないのかが、それからが焦点となっていった。しかし、この肺から発見されたことで、空気感染の可能性が確定されたと言ってもよかった。空気感染も経路の一つなのかもしれない。
アジアでは食糧難が起きはじめ、高額になった食料を求め暴動さえ起きていた。
貧困の激しい国では餓死者が後を絶たなかった。病原体以外の理由による死者の数はうなぎのぼりであった。国際ニュースだけはそれでも見ることが出来たが、日本国内でも普段は起きない暴動さえ起こり始めていた。それだけ深刻だと言うことだ。
私はそんな各国のニュースを見ながら、あることに気がついた。それを研究者たちに話したのだ。
「言われたことを調べたがこれが?」
研究者の一人が私の要請を聞いて調べたデータを持ってきてくれた。研究の役に立っているのだ、嫌とは言えないだろう。私はデータを受け取って、自分なりの考えをまとめてみた。その結果、またも面白いことに気がついた。
「これ見ろよ」私はスティーブに私なりのデータを手渡した。
「これが何か?」スティーブにはピンとこないらしい。私が渡したのは被害者のデータだ。全ての国のがインプットされているから、まずはアジアを抜かしたデータ。
実際にアジアでは発症していないため、病気の死亡としては抜かなくてはいけない。次に男女別データ。男と女の発症率、及び死亡率が分かるデータだ。
男女の死亡者数ではそんなに開きは無い。
そして、年代別。10代から70代までを分けてある。ここで、面白いのが男女の死亡者数だ。男の死亡者数はどの年代を取っても同じような比率に対して、女の年代別には大きな差があったのだ。10代後半から40代半ばまでは女性の死亡者数は極端に少ないのだ。その代わり他の年代では男よりも数倍も多い。
「どういう事だと思う?」
「う~ん、確かに不自然だな……」
「な、そう思うだろう。ただ、この年代が他と比べて、何が違うか……なんだよ」と、考えこむと、スティーブが満面の笑みで答えた。
「そんなの、簡単じゃないか!」
「え?なんだよ!」
「食える年代だよ!」
「なんだって?」
「言い換えようか、子供が作れる年代さ!」
「生理か!」そう考えれば、生理のある年代の女性の死亡者数は極少数だ。
「じゃあ、何のために?」私はスティーブに訊ねた。
「そこは……わからん」
「地球が、人間をふるいにかけている?」スティーブは私の答えに大きな声で笑い出した。
「じゃ、俺たちは、地球から認められたのか?いまでも、生きてるのがその証拠か?」
地球が神ならばね……。と答えようとしたが、声にはならなかった。スティーブは敬謙なクリスチャンだからだ。しかしこの仮説を、研究者は喜んだ。盲点だったらしい。
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