第3話 仲間を探して次の町へ
「それがあり得るんだよ。俺たち、他の冒険者たちと違ってフリーランスでやってる訳じゃない、王様の命令で動いてるわけだからな。その証拠に、他の奴らは持つことの出来ない宝具を使ってるじゃねえか」
冒険者とは、この世界の未開拓地へ地図を広げる為に、ギルドという組織に所属している、突発的な仕事を請け負う者たちの総称だ。冒険者になると、世界に点在しているギルドホールにて様々な恩恵を受けられるため、俺たちもギルドへ名前を登録しているのだ。
「じゃあ、ホーリーロッドを渡せってことか?これは、俺に与えられた物だろう?」
「渡せって言うか、宝具って王様のだし。俺ら、魔王殺す為に借りてるだけじゃん。どうしても説明しろって言うなら、王様に訊くんだな」
しかし、クロウは決して「そうする」とは言わなかった。
「ほら、ホーリーロッドをこっちに」
「……ならば、俺が渡した魔法のアクセサリーを全て返してもらうぞ」
「いいよ、はい。おい、お前らも渡せ」
言われ、俺はクロウから渡されていたバフアイテムのアクセサリーを外して、彼に手渡した。
「後悔するなよ?これがなければ、お前たちの力なんてたかが知れてるんだぞ?今更言ったって、もう遅いんだからな?」
「わかってるよ、じゃあな」
聞くと、クロウはホーリーロッドを投げるように渡して、シロウさんに背中を向けてどこかへ歩いて行った。
「おい、アカネ」
「は、はい。なんでしょうか」
何が起きているのか理解していないのか、アカネはオロオロとしながらシロウさんに応えた。
「お前、あいつの事好きだったんだろ?追っかけなくていいのか?」
「……その、そうさせてもらいます。これ、返します」
呟くように言って、アカネはシロウさんにホーリーランスを渡すと、クロウの後を追って行った。
「……いいんですか?シロウさん」
「いいよ、別に。王様には、クロウをクビにしたらこうなるかもって言ってあったし。それに、あいつにとって、世界よりも恋愛の方が大切だったんだろ。身の入らない戦闘させるよりは、互いの為になる」
「そ、そうですね」
これまでにも、今日みたいな事は何度かあった。けど、そのたびにシロウさんは「戦いに慣れてないんだろ」と笑っていたのに。それに、使えないのは間違いなく俺の方だったのに。
……やっぱり、あの冷気を感じた時が、何かの
「次の町で、別の適合者を探して仲間にしようぜ。宝具がここにある以上、本国では人員は確保できない。だから、俺たちで新しい仲間を見つけるしかないんだ」
「なるほど、分かりました」
しかし、クヨクヨしている場合ではない。パーティが二人も減ってしまった今、俺しかシロウさんの仲間はいないのだ。
確かに、彼は卓越した戦闘を見せるが、実は持っているスキルは俺と大差がない。だからこそ、ああして機転と戦術を駆使して戦っているのだ。
つまり、彼がいくら出来る勇者だからといって、個人で悪魔幹部と戦えるわけがない。本人もそれを理解し、一人で戦えないと分かっているから、常に俺たちに気を配っているんだと思う。
……けど、もし彼が他の戦士と一線を画すポイントがあるとすれば、それは最善の為に自分すら犠牲に含むことのできる、イカれた感覚を持っていることだろう。普通なら絶対に選べないような作戦を、彼は平気で実行してしまうのだ。ただし、それを才能と呼んでいいのか、俺には分からない。
「……っしょ。重えなぁ、やっぱ」
「まぁ、俺たちはこの宝具の適合者じゃありませんからね。仕方ないですよ」
持ち上げて、文句を言いながら歩くシロウさん。宝具は、適合者以外が持つと、このように鈍重で
しかし、彼はヘラヘラと笑っていて、おじさん特有の特に面白くない冗談を交えながら、しきりに俺に声を掛けてくれた。
「やっぱ、クビ言い渡すのは街についてからにすりゃよかったな」
「……早速後悔してるじゃないですか」
「ありゃ、本当だ。はっはっは。戻ってきてくんねえかなぁ」
「それ、本気で言ってるんですか?」
「冗談だよ。ったく、キータは頭固えなぁ」
そう言って、シロウさんは俺を小突いてから、再び笑った。今の彼からは、さっきの冷たい空気なんて、一欠片も感じなかった。
× × ×
街に着いてから一週間。俺たちは、ギルドホールを兼ねた酒場に籠って適合者を探していた。
俺たちが国の各地から王都へ集められた通り、やはり適合者はホイホイと見つかる訳ではないらしい。ギルドの関係者に事情を話し、こうしてヘビのようにチャンスを待っているんだけど、待てど暮らせど新しい仲間は現れなかった。
「そりゃそうだろ。いくら何でも、募集の条件が厳しすぎるぜ」
「だって、そうしないとヨボヨボのお婆さんや小っちゃい子供まで仲間にしようとするじゃないですか。いくら適合者だからと言って、彼らを仲間になんて出来ませんよ」
そう、正確に言えば、適合者は見つかっているのだ。ただ、それはシロウさんが町ゆく人々に節操なく声を掛け、片っ端から宝具を触らせて確かめたからに他ならない。因みに、口にした以外に見つかった適合者は、犬と猫だった。
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