始まった作戦

数日後、万理華の席に由紀凪が肘をついていた。

「何なのあいつら!全然へこたれてないんだけど、ウッザ!」

「不愉快ね。」

朝から由紀凪のイライラした声と舌打ちに共鳴するように万理華は爪を噛んでいる。

すると時間差で到着した三奈が教室後ろの扉から入ってきた。

「おはよう……ございます。」

三奈はオドオドしながら、2人に微笑んだ。

すると万理華と由紀凪は視線を合わせて、にやりと口角を上げた。

「ねぇ〜?由紀凪に頼みたいことがあるんだけど。」

「な、何ですか……?」

「そんなビビんなくても、難しいことじゃないって!」

「そう、とっても簡単よ。あの不愉快な3人の事を監視して欲しいの。」

「監視……私がですか?」

三奈は自信が無いからか眉間に皺が寄る。

すると由紀凪は片頬を引き上げた

「は?なにか文句あんの?」

「い、いいえ!」

「そうよね?三奈は優しいから文句だなんて、そんなことありえない、そうよね三奈。」

三奈は万理華の穏やかな顔に、満足そうに頷いた。

「が、頑張ります!」

そんな話し合いが済んだ頃、始業のチャイム5秒前に3妖が教室に入ってきた。


そして昼休み、3妖は視線を合わせるでもなく何の誤差なく席を立ち、ズラズラと教室を出た。


その姿に由紀凪が三奈の背中をつついた。

尾行の合図に三奈は唯一行動を分けたマカの後を追った。しかし、陰に隠れながら追っているうちにすぐに見失ってしまった。


「あ……あれ?……何で……。」

「あんたさぁ、俺のこと気になるの?」

「ひぃっ?!」

大煙管に背後を取られてしまったことが分かった三奈はピクッと肩を震わせた。

振り返った未菜の顔は真っ青になり、大煙管はつい妖しい笑顔になる。

「質問してくればいつだって答えてやるよ?」

「け、結構です。」

異様に顔を近づけるマカに恐怖を覚えた未菜は逃げた。

未菜が逃げていった先に冴島がこちらに向かって歩いてきている。

しかしすれ違おうとした瞬間、冴島の出したつま先に躓き盛大に転けてしまった。冴島は見えた足にじっとり視線をやる。

未菜が公で転んだ羞恥心で真っ赤な顔で去っていく。

大煙管は三奈の背中を視線で追う冴島に近づいた。

「良い趣味してんね、冴島っち。」

「敬称をつけなさい。」

「趣味のくだりは否定しないんだ。」

「馬鹿馬鹿しい。転入早々問題行動を起こしているお前たちに聞く戯言はない。」

「あっそ。」

大煙管は溜息をつきながら通り過ぎて、階段付近で立ち止まる。


「あぁ、先生さ。」

大煙管は振り返らないまま微笑む。

「僕たち観察眼は達者だからよろしくね。」

冴島が歩き出し遠ざかっていく音を聞いて、振り返る。

「ま、余計なお世話か。」

階段を下りていく大煙管を振り返る冴島は歯ぎしりをした。

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school reformar  石ノ森 槐 @T-isinomori4263

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