第2話 初対面で相談
「あのぅ……何か、お探しですか?お手伝いしましょうか? 」
私は恐る恐る、彼に横から近付いてそう尋ねました。
傍で見ると、とても背が高くて、少し屈んで並べてある本を凄く真剣に見つめていました。
あ、本を探されていらっしゃるのかな?
彼は、驚かれたようで、バッ!と私の方へ体ごと向き直りました。
「……え、あ……はい……」
「既刊ですか、新刊ですか?」
「あ、いや。そうじゃなくて……」
やっぱり怪しい方なんでしょうか。困った様なお顔をしています。もしかして、ご自分のを探されているのではないのかな?
「どなたかに、頼まれました? それともプレゼントですか? タイトルを教えて頂ければ、こちらでも」
そう言いかけると、彼は私の事をじっ、と見ながら言葉を遮りました。
「すみません、そうじゃないんです。……えっと、なんて説明したらいいのかな……? 」
彼と私は、互いに困った顔をしながら見つめ合い続けてしまいました。
……あら、この人は本当に背が高い。174ある私が小さく見えそう。これなら私がヒールのあるパンプスを履いても心配ないみたい……?
あっ、いけない、接客中に現実を向こう岸にやってしまうなんて!
「あのぅ、何かをお探しなんですね? 」
彼は、ほっ、とした顔をされて、緊張が解けたようで私に微笑んだのです。あ、この人は怖くない。良かった。
「そうなんです。分かって貰えるかな。 探してはいるんだけど、その……説明するには一言では無理で、でも見つけて読みたくて……でも見つけ方が分からなくて」
ジャンル別が分からないのかしら?ここは専門店ではないから、そんなにきっちりと分けていないのですけれど。私が。
そう、こちらのコーナーは私に任されているのでした。発注も全て。楽園でした。
試しに伺ってみました。
「どんなテイストをお探しですか? ソフト系? ハード系?」
「え、コンタクトはしてないけど?」
彼は腐男子ではないのかしら?
「学園物? 社会人物ですか? それとも芸能界物みたいな特殊性のあるジャンルですか? 」
「えっと……弟はまだ高校生なんだけど……」
「えっ、弟さん? 」
弟さんが読まれるのかしら……?
私の表情をごらんになって、彼は分かったみたいでした。
「あの、読むのは自分なんですけど……弟が関係していて……」
えっ……近親相姦物は私、揃えていたかしら……記憶の中の出版社名を検索していました。兄弟物はあったと思います。
「年下受けですか。それとも攻め?」
彼はキョトンとした顔をされています。えっ……違うのかしら?
「年下にウケがいいのなんて有るの? 責めは何?責任追及でもする関係なんですか? 人間関係が詳しく書かれている方が参考になるんですけど 」
「参考?」
もしかしたら、何か勘違いをされているのかしら……?
「はい、参考書がこのコーナーにあると聞いたもんで、探してみたんですけど、なかなか難しいですね」
参考書? なんの参考書? これは複雑な背景がお有りの様ですね。
……私の休憩時間を使うしかないのかな?
「少々お待ちください」
私は休憩室で防犯カメラを凝視していると思われる店長にお伺いを立てに向かいました。
この日の私、グッジョブ!
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