第13話 話はどこまで聞いている?

 『はい、お待たせ。……法子?もしもし?』


 先輩が私の携帯をよこしなさい、と手を出している。

 「だ、めですよ、先輩!ちょ、っと、お願いですから、お静かにお願いします」


 小声で言ってるつもり。

 「ええー、なんでよ。ちょっとくらいお話したっていいでしょう」

 「しっ、先輩、シー」


 『法子?そこに誰かいるの?もしもし?』

 あ~!茂生が誤解しちゃいますよう、先輩!


 「もしもし!違うの、っていうか違くないけど、今、先輩のおうちにお邪魔してる……あっ、や!」

 私が茂生と話しているのに、先輩ったら!私の携帯をひょいっと横取りしちゃった!


 『え?法子、先輩て……』

 「もしもし。茂生くん?初めまして。和弥くんの未来の嫁の里沙です~!今ね、法子ちゃんとあたしのアパートでお茶してたの」

 『……和弥さんの……?えっ、あっ、初めまして。杉崎茂生です……あの、法子がいつもお世話になっております……』

 「いえいえ、こちらこそお世話になってます!ところで茂生くんは今どちらにいるの?」

 


 ちょっと!茂生も先輩も一体何を話しているのよう!


 近くで聞き耳をたてようとしたら、先輩たらキッチンの方へ逃げちゃった!


……………………………………………

 先輩はそんなに経たないうちに戻って来た。一体何を話したの?

 「はい、どうもありがとう。法子ちゃんの待ち受けって茂生くんじゃないのね。なんで焼きまんじゅうなの。ウケ狙い?」



 そう言いながら、私に携帯を返してくれた。


 「やっ、それ、は!」

 待ち受けはいつも茂生とデートした最新の記念を入れているんですなんて言えないわ!

 うう……二人で焼きまんじゅうを食べたのって相当前じゃない……。


 「友達に……説明する時に見せた方が便利なので……つい」

 「まあ、お饅頭とは違うわよね。うん。県外の子には見せた方が早いか」


 て……あれ?茂生は?通話が切れてるじゃない?

 「茂生くんならこれからこっちに来るわよ。◯号線沿いに新しいショッピングモールが出来たでしょ?今その駐車場だから、あそこからなら二十分かからないで来るでしょう」


 先輩がとっても嬉しそう。……え?


 「えっ、えっ?こっち?って、茂生がここに!?」

 「うん。そう。今ここの住所をカーナビに入れたから、分かるだろうって言ってたから大丈夫でしょ」


 えええ~!!私まだ茂生に何にも話してないし、茂生からも何にも聞いてないし!、里沙先輩の話もほんのちょびっとしか話してないし!


 「先輩、先輩?茂生をここに呼んで、な、何を話せばいいんですか!私まだ肝心なことは何にも……」


 「わかってるって。法子ちゃんの事だから、茂生くんの口からはっきり聞かないことには、に関しては微塵も話してないんでしょう?」

 う。全くその通りですぅ……。


 スカートの端をくるくるしてしまう。ああ、これは茂生に直しなさいって言われたっけ……シワになっちゃう。

 黙っていると、先輩はさっきハンガーに掛けた薄いカーディガンを取って、何やら出掛け支度を始めた。


 「先輩?茂生がここに来るんですよね?」

 「そうだけど、ここじゃなんだから、さっきのショッピングモールにとんぼ返りしてもらうの。そこでじっくりとお話しましょうよ。レストラン街もあるし、結構遅くまでやってるし」

 「あのはじっこの?」

 「そう。その後でまたこっちに送ってくれるって。法子ちゃんちにお泊まりするんでしょう?」

 はあっ!?


 茂生が?


 私のアパートに?


 お泊まり……っ!?


 「……あら?違うの?てっきりそうかと思っちゃったわよ?」


 ……だから、私たち……まだそんなんじゃないのに……。勝負下着だってまだ買ってないのに!

 

 先輩は、にっこりと微笑んで、爆弾発言をされた。



 「まあ、人生なんて、どんな時にどう転ぶかなんてわからないものでしょ?案外コトが運ぶ時なんてトントン拍子にあっ!という間に進んじゃうモノでしょ?大丈夫よ、どう転んでも。茂生くんが付いていてくれるんでしょ?」


 先輩!茂生から何を聞いたんですか!!


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