第9話 先輩が巻き込まれた渦の中
里沙先輩が茂生の従兄弟の婚約者だったなんて、まだ信じられない。
信じられないと言えば、彼氏の父親が彼女の通学先まで乗り込んで来て、将来の事を話題にした事も信じられない。彼氏の意思に関係なく。有り得ない。
でもでも、そのおかげで、憧れの里沙先輩とお近づきになれた!急接近よ? どうして私は高校時代に先輩の事を知らなかったのかな……そんなに大きな学校ではなかったのに。
はあ。今日も無事に講義が終わった。この間のサークルミーティングでは、ボランティア先の詳細と自己責任に関わる報告書を貰ったから……さらっと目を通しておいて……参加するかどうかの提出は明後日までよね……ウフフ。あっ、いやだ私ったら。思い出し笑いなんて危ないわ……。フフフ。
「法子? 頭に春が来た?まだ秋になってないのに? 」
「え-?のりは常春でしょうよ。ねえ」
「さっち……みっち……ひどぉい!」
この紛らわしい双子!!
因みに、サッチ-とミッチーなんて呼べないから、『さっち』『みっち』なんて言ってる。陰ではどう呼ばれていることやら?
「ね、のりは今日もバイトあるの? 」
「……ないけど。合コンなら行かないわよ。あ、今日は里沙先輩の所にい行かなきゃ! だから無理ね」
「……なんで合コンて分かるのだ?」
だって二人が同時に来る時って殆どそれなんだもの。茂生に逐一報告するの、めんどいし。そういう時に限って、電話来るし……。
「あんたが一緒に来るからじゃない? 」
あら、よくわかってらっしゃる。
「なんで。ね、のりは最近付き合い悪くない? 」
「……だあってぇ……。バイトあるし、サークルあるし……レポートあるし」
遠距離じゃないけど中距離に彼氏いるし。オマケにひとつ下だし……心配症だし。年下の彼氏が地元にいることは内緒にしてある。あれこれ詮索されるのが嫌だから。
「それにしちゃ、その先輩に頻繁に会ってなくない?」
「あ、そうだよね、なんで? 」
「サークル活動の相談にのって頂くの。自分の出来る範囲内で自己責任でやるのが鉄則なんだけど、私に向くか向かないか判断付かなくって。だから先輩にアドバイスを頂くの」
フフフ。それ以外にも相談にのって頂くのよ……。
「ああ、ボランティアのやつね。相談する程難しいわけ? 」
「うちの大学じゃないんだけと、災害ボランティアの現場でトラブルがあったらしくて。学生お断りとか風潮が起きてね……それからは、福祉系や災害系とかジャンル別に、自己責任能力でしょ、資質でしょ、保持資格とか色々な角度から見て、各自に合った現場へ向かう様に厳しくなったの。遊びじゃないんだから当然なんだけどね。気持ちだけじゃ動けない。活動出来なくなっちゃってね。現場毎に勉強よ」
二人が目を丸くしてる。さすが双子。全く同じ顔で同じ表情を浮かべてる……!面白いわ。
「やだあ、ボランティア活動ってもっと軽く出来るもんだと思ってた……」
……実は、私もそうなのよね。もっと気楽に簡単に考えてた。
「無償だからいい加減や遊び心で取り組まれそうって先入観が働くから、余計に神経使って丁度いいんだって。上から目線で現場に入って、逆に迷惑かけたりすることもあるそうだし」
「めんどくさ~あたしらじゃ無理だわな」
「アホう。一緒にすんな?てか、真理だけど。じゃあ、ま、頑張っておくれ。次の機会に頼むわ」
「うん。そっちも頑張ってね」
……そろそろ、彼氏いますって話すべきかなぁ……?
さて、里沙先輩をお待たせしない様に行かなくちゃ!
待ち合わせ場所は、この間のカフェだった。あら? 先輩、なんでお店の外にいるのかしら?
「先輩、申し訳ありません。お待たせしました」
時間よりも十五分早かったのに、先輩をお待たせしちゃった。私、時間を間違えてたのかしら……?
「あ、法子ちゃん!違うの。あたしが早く来すぎたの。ちょっと動揺しちゃって」
「……動揺? 」
「そうなの! ね、今日はあたしのアパートに来てくれない? 大事なお話があるの。法子ちゃんにも関係あると思うのよね。サークルの話なんて後にしましょう」
先輩がこの前みたいな険しいお顔をしている。
……なんなの? 何があったの?
初めて先輩のお部屋に伺うのに、クッキーしか持って来なかったわ……あ、でも手ぶらよりはマシね。
先輩は、アパートに着くまでほとんど喋らなかった。……あの里沙先輩が!
ただ事じゃないわ!!
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