第49話 ゲッヘラー、急襲

202X年 6月10日。


 私達が自宅の玄関を出たとたん、ター坊伯父さんが言った通り、周囲が轟音で包まれる。

 

 伯父さんと私の実家の上空には、数機のUH-60JA/G ウルトラ・ブラックホーク改が急接近して来て旋回し、リモートアクセスのゲッヘラーの声が聞こえる。

 

「そこまでだ、我問!」

 

「何ッ? ゲッヘラー!?」

 

「建物の中の話は君たちのスマホに仕込んだ盗聴アプリで全て聞かせてもらった。

なかなか興味深い話じゃないか。ゆっくりお聞かせ願おうか?」

 

「な、何故ここが!?」

 

「私の基地の四次元センサーが、時空のゆがみを探知したんだよ。君達のタイムスリップの話は、この現象を裏付けている。私も最初は信じられなかったがね」

 

 自宅の上空を旋回していた数機のUH-60JA/G ウルトラ・ブラックホーク改から、武装したオートマトンが降下して来る。


「奈々よ、二人ともだ。お前達の戦闘能力は分かっている。だが、ここで抵抗すれば、我問達を即座にひねり潰すから、おとなしくしていた方が賢明だぞ」

 

 ワタシが現代の私にテレパシーで語りかける。

 

「安心して、奈々。この場を切り抜けるいい方法があるの」

 

「分かったわ、信じてる」


「奈々さん! 私達に構わずバイオE.M.P.を使って下さい! この距離なら敵を全滅出来る筈だ!」

 

「了解!」


 ワタシは表情を一変させ、心を一点に集中させると、ワタシの目の色が変わり、髪の毛が逆立つ。・・・だが、何も起こらない。

 

「どうしたんです!? 奈々さん、早く!」

 

「分からない! 私の中の何かが違う!」

 

 その現象を見ていたター坊伯父さんが、


「これは・・・、もしかしたら、同じ奈々同士のバイオモデムが干渉して、E.M.P.を放射出来ないのか!?」


 ワタシは、ツヴァイで待機しているシンに心の中で語りかける。


「シン、シン? お願い、助けて! シン? 応えて!」

 

「奈々、すまない。オレが油断していた隙に・・・」

 

「どうしたの、シン!?」

 

 ツヴァイとシンは、我問の秘密研究所の地下で、ゲッヘラーの手下に取り囲まれている。

 

「我問よ、よくも私のツヴァイを横取りしようとしてくれたな? こちらも時空のゆがみのお陰で取り押さえる事が出来たよ。現代のお前と一緒にな」


「クソォッ! あれが最後の望みだったのに!!」


「全員私の基地まで連行しろ!!」


 オートマトンに包囲された私達は、別々にゲッヘラーの車両に乗せられようとしたその時!

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