第47話 デ・ジャ・ブ
202X年 6月10日。
その日の授業が終わり、私と明日香が帰宅路の途中にあるいつもの公園の池のほとりで、コーリャンや、クーにゃん、ボスカー達にご飯をあげていると、明日香が、
「おやおや? あそこに見えますのは、誰かさんの白馬の騎士様ではあ~りませんか?」
シンが一人で、サッカーボールを蹴りながら下校している。
「ちょっと明日香、止めてよね! 誰にも言わないって約束でしょ?」
「そうですけどぉ~。せめてご本人様にだけは、この吉報をお届けしてもよろしいかと・・・」
振り向いたシンと私の視線が合う。あわてて目を背ける私。
「あ~あ、見てらんないね。 我れらが名門、私立○○高校のスーパーエリート女子高生も、恋の前にはタジタジとはね」
シンは、奈々の姿を見るなり、ポケットから何かを取り出すと、
「越路ぃ~~っ!!」
と、私を呼びながら、私達に駆け寄って来る。
それを見た明日香がふざけて、
「越路司令官! 正体不明の高熱源体が急速接近中ですっ!」
坂井君が息を切らせながら、何かを私に渡そうとしている。
「坂井君・・・、どうしたの?」
「どうしたのじゃネーだろ? お前、スマホ落としてったぞ?」
「あれ・・・? いけない!」
「ほらよ!」
「ゴメン! ・・・ありがとう」
私はスマホのストラップに付けたカプセルを大事そうに確認すと、坂井君は不思議そうな顔をして、
「何だよソレ? お前、変なストラップ付けてるんだな?」
「これはね、おじいちゃんの遺品なの」
「ふぅん。お前もドジだなぁ。そんな大切な物落っことすなんて。ったく、個人情報漏れたらどーすんだよ?」
「フフ、ホントね。でもお陰で助かったわ」
坂井君は、私のペット達に、一緒にごはんをあげていると、明日香が坂井君に、
「やさしーのねぇ、坂井君? ところで、今日の試験、どうだった?」
「優等生のお前らに聞かれたくネーよ。カンニングでもすりゃ良かったぜ」
そこで私は、ある事を思い出した。坂井君は、授業の成績こそ足りなかったが、中学時代のサッカー部の活躍を評価されて、毎年サッカーの全国高校大会でも優勝候補に入っている私達の高校に入学出来たって、坂井君自身が私に話してくれていた事を。
「優等生だなんて・・・。 私はただ、一度見たり聞いたりした事は忘れないのよね」
「そう言うのを、アタマガイイ、って言うんだぜ」
「そうなのかなぁ・・・」
そこに、私のスマホのSNSチャット呼び出し音が鳴る。
「えっ? このヒト??」
私は慌ててチャット相手を確認する。
「おじいちゃん!? まさか??」
「誰なんだよ?」
「2ヶ月前に亡くなったおじいちゃんのハンドルネーム、ありえない」
「誰かにハッキングされたんじゃねーの? とりあえず出てみれば?」
私はチャットを開こうとするが、向こうの相手はすでにオフラインになっている。
「オフられちゃった」
坂井君と明日香は、私を半分からかい口調で、
「霊界からの通信だったりして」
「まさか! って、明日香や坂井君は「霊界」を信じてるの?」
「さあ、どーだか。ま、信じるのは、このオレの眼で実際に見てからにするよ」
「私は信じてるよ。だって、現に感じる事、しょっちゅう有るもん」
そこに、再び同じ相手からのSNS呼び出し音が鳴る。
私は、スマホのSNS音声チャットをアクティブにする。
「はい、もしもし?」
相手の声は、聞き慣れない若い男性だった。
「もしもし? 越路奈々さんですか?」
「はい、そうですけど?」
「初めまして。私は越路篤人博士の助手をしていた、南部我問と申します」
「え、おじいちゃんの?」
通話の相手の若い男性は、切羽詰まった口調で、
「実は、博士がなさっていた研究であなたに早急にお話しなければならない事があります。よろしければ、今からお宅に伺ってご説明させていただけませんか?」
私は一瞬戸惑ったけれど、話だけは聞いて見る事にする。
「はい・・・、いいですけど」
「ありがとうございます。では一時間後に奈々さんの足立区のお宅まで伺います」
「一時間後ですね。分かりました」
秘密研究室で越路博士の携帯の通話スイッチを切る我問。
未来から来たワタシは、その状況がどんな結果をもたらすか、想像も付かない。
「この時代の私に会うの? でも、私、信じるかしら?」
「ゲッヘラーの陰謀を止めるには、私達3人だけでは足りません。この時代の奈々さんや、キラさん、ジェイドさんの助けもいる。それに今の段階では、大震災が起こった過去の時点より一日時間に余裕がありますので、念には念を入れないと。 失敗は許されませんから・・・」
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