第28話 仕組まれていた罠
202X年 6月11日 午後8:50分過ぎ
戦術のプロでもあるジェイドが、我問に尋ねる。
「我問、あの爆弾がどう言う起爆装置を持っているか分かるか?」
「起爆装置? 手元に詳しいデータが無いのでハッキリとは言えませんが、恐らく水中の誘導システムが付いていて、投下されてから一定時間が経つと起爆するシステムになっているんだと思います。何故です、ジェイドさん?」
「それでは・・・! 奈々が敵を破壊してしまったら、自動的に投下されてしまうじゃないか?」
「そうか! しまった!! 奈々さん! 聞こえますか? それ以上攻撃しないで下さい!! アインを破壊すると爆弾が自動的に投下されてしまいます!!」
我問の通信を聞き、一瞬素顔に戻って困惑する私。
「えっ!? でも、向こうは攻撃してくるのよ! 一体どうすれば??」
そこに、無線でゲッヘラーの声が割り込んで来る。
「フフフフフ、今頃気が付いたか。どの道お前らにはこの計画を止める事など、不可能なのだ。それに、奈々。見たまえ。この敵をキミは撃墜出来るかね?」
アインのボディの気密ハッチが開くと、その中には坂井君の姿が!
「!! まさか・・・、坂井君!?」
コックピットの中の坂井君は、肉体のあちこちがグロテスクなケーブルとコネクターで接続されていて、本人は意識を失っているみたいだ。
「奈々、キミが素直にバイオモデムを渡さないから、こう言う事になるんだぞ。
君のお友達は、アインを操縦するオペレーティング・システムとして使わせてもらったよ。人間の反射神経ほど、完成されたプログラムは無いからねぇ」
「なんて事を!! 坂井君! 坂井君!? 返事をして!」
「無駄だよ。意識は操縦に邪魔なので失神させてある。接続された本人は、自分の脳がマシンに使われている事すら気が付いていないのだ。さあ、君のバイオモデムは力ずくでもいただこうか!!」
アインのハッチが閉まり、ツヴァイに向かって攻撃して来る。
「ウッ! 坂井君! やめて!!」
一寸の差でアインの攻撃を避けるツヴァイ。
「いかん。このままでは奈々さんはやられてしまう! 奈々さん! 早く戦闘モードに!!」
「ダメよ! 坂井君を助けなきゃ!!」
「そんな事を言っていたら、関東平野が瓦礫の廃墟になってしまいますよ!!」
「じゃあ、どうしたら良いって言うのよ!!」
「奈々さん、許して下さい。 もうこれしか方法が・・・」
タブレットを操作し、オーバーライドで奈々とツヴァイを無理矢理戦闘モードにする我問。
オレンジ色に目の色が変わったワタシがアインを逆襲し、一つ、また一つとアインにダメージを与えていく。
ついにアインの脚部と腕部を破壊し、背中のジェットパックをも破壊すると、我に返った私はツヴァイにアインのコクピットを向かい合わせにさせる様にイメージすると、私とツヴァイは本体と爆弾だけになったアインを両手で抱え込む。
ツヴァイのコクピット内にある非常レバーを回して気密ハッチを開き、アインの非常用ハッチを外部から開けると、コクピットの坂井君に叫ぶ。
「坂井君! 坂井君ったら!! お願い! 目を覚まして!」
私の祈りに応えるかの様に坂井訓は意識を取り戻し、
「越路? 越路じゃないか? 一体これは・・・?」
体中に巻き付いたケーブルとコネクターに気が付く坂井。所々から出血している。
「どうなっているんだ? 手足の感覚が無い・・・」
坂井君の両手両足は切断され、太いケーブルと直結している。
「こ、こんな・・・、酷過ぎる!!」
「体中が痛いよ。血も出ている 越路、オレは死ぬのか?」
「バカな事言わないで! 私が絶対助けてあげるから!!」
「無理するなよ、越路。それより、お前に打ち明けなきゃいけない事があるんだ」
「しゃべらないで、坂井君! 今すぐ病院に連れて行ってあげる!!」
「いいから、聞いてくれよ。 お前が落としたってスマホ。実はオレがスキを見てくすねたんだ。悪い事をしたって思ってるよ」
「え? なんでそんな事を?」
「なんでも良かったんだよ。ただお前と話すきっかけが欲しくてさ。ほら、俺、成績じゃ落第生だろ? だから、そんな事でもしないと優等生のお前とマトモに相手して貰えないんじゃないかって・・・、オレもバカだよな」
「坂井君・・・」
「なあ、越路・・・? 奈々、って、呼んでもいいか、お前の事?」
私は、その言葉に目を潤ませながら、
「ウン、いいよ、・・・シン」
「俺のファーストネーム、覚えていてくれたんだな・・・、奈々」
うなだれるシン。アインのコックピットが血で染まって行く。
「いやァアアア~~~ッ!!」
その時、アインが空中分裂して、ツヴァイに掴まれたコックピットだけを残し、魚雷型爆弾が海中に投下されてしまう。
その様子をモニターで見ていた我問。
「しまった!! 爆弾が投下された!」
もの凄い勢いで海中を突き進むハイドロフラーレン魚雷・・・。
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