第26話 ゲッヘラーの野望
再び一斉射撃を開始するフライングマトンとグランドマトン達。空は機銃から連射されるトレーサー・アモ(えい光弾)の軌跡で埋め尽くされる。
もはや一つになったワタシとツヴァイは、その弾道を予測するかの様に華麗な宙返りを決めながら、ショルダーパックに装備されたバッキー・キャノンから生み出される強烈な反動を制御する後方噴射( = バックブラスト)と共に敵を一体づつ確実に沈めて行く。
(設定注:バッキー・キャノンは、対反動制御バックブラスト( C.R.B.B.D. Counter Recoil Back Blast Discharge )を行う無反動砲である)
ツヴァイの右手のバッキー・ブラスターに装備されたハイドロソードを駆使し、
空中接近戦でフライングマトンのホバー・プロペラを切り裂く。
(設定注:ハイドロソードは、H60を急速分解してマイクロノズルから高速噴射し、その勢いで対象を切り裂く接近戦用兵器である)
グランドマトンの着弾センサー付きリアクティブ・アーマーも、ツヴァイの超ド級音速のバッキー・キャノンの弾丸の前には全く用を成さない。
我問達のステルス戦車も攻撃に加わり、キラは意気揚々とジェイド達に叫ぶ。
「お楽しみはこれからよっ!!」
火を噴くステルス戦車のバッキー・ランチャー。バックブラストと超ド級音速のソニック・ブーム(飛翔体が音速を超えた時に生じる衝撃波)が、周囲の瓦礫を紙くずの様に巻き上げ、グランドマトン達を次々と破壊する。
「ちょっと我問! この主砲、威力有り過ぎなんじゃないの?」
「キラさん、バッキー・ランチャーは、元々航空機搭載用に設計したので、市街地では使わないで下さい」
「この状況で、そんな事言ってられる!?」
ツヴァイとステルス戦車で、全ての敵のグランドマトンとフライングマトンを一掃してしまう。
偵察ドローンのモニターカメラで、それを悔しげに見るゲッヘラー。
「よくも私の機械化部隊を・・・。 だがこれで勝ったと思うなよ! ” グランドスラム計画 ” 、発動!」
本部の司令室のコンソールにコマンドを打ち込み、Enterキーを押すゲッヘラー。
我問のタブレットに、ゲッヘラーの基地から数機の機影が発進する様子が映し出される。
「しまった!! ハイドロフラーレン爆弾が日本海溝に向かっている。奈々さん! 奈々さん!?」
我問の呼びかけに、我に返る私。
「ハッ! え? なんですって?」
「そうか、奈々さんはツヴァイとシンクロ中は別人格になってしまうんだ」
「どう言う事?」
「奈々さん、いいから、良く聞いて下さい。ハイドロフラーレン爆弾の輸送機に追いつけるのは、あなたの乗っているツヴァイしかいません。ツヴァイの遠距離センサーに機影が写っている筈です。大至急追跡して阻止して下さい!」
「分かりました、・・・ってもどうやって??」
私は、『普段の自分』モードでは、うまくツヴァイとシンクロ出来ない事に気が付く。
「うう、ツヴァイを操縦出来るのは、奈々さんのもう一人の人格だけと言う事か? そうだ、こうすれば!!」
タブレットを操作し、遠隔操作で私の防衛本能を刺激し、戦闘モードのワタシに誘導する我問。すると、私の目の色がオレンジ色に変わり、バッキーエンジンのアフターバーナーを全開にして海へと急速発進するツヴァイ。
「奈々さんが間に合ってくれれば良いんですけど・・・。我々は葛西臨海公園地域にあるゲッヘラーの本部へ向かいましょう!」
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