第4話 序章「想い、すれ違い その四」
202X年 4月10日 午後5:30頃。
ター坊伯父さんの家、もとい、私の家の玄関を開け、ダイニングに戻ると、美味しそうな匂いと共に、ター坊伯父さんがキッチンにエプロン姿で食事の支度をしている。
「ただいま、ター坊」
「おぅ、お帰り、奈々。もうすぐ夕飯が出来るから、座って待って居な」
「は~い、って、ター坊、何こしらえてるの? ってか、ター坊って料理出来るの??」
「ナマ抜かすな! このター坊伯父さんはな、調理師の免許こそ持ってはおらんが、創作料理にかけては、世界でも類を見ない名シェフなのだ! うむ」
「はいはい、分かりました。でも、美味しそうな匂い! これ、ゴーヤー・チャンプルー? 私の大好物!!」
「そうだろう、お前の母さんや、旦那のミハエルも沖縄の離島の八重山諸島が好きで、お前達とは毎年の様に一緒に遊びに行ってたよなぁ」
「ター坊。それ、私がまだ小学生までの頃でしょう? 最近じゃ父さんや母さんの仕事が忙しくなって、ここ何年も行っていないよ」
ター坊が、一瞬不審げな表情になり、小言で
「ここ何年も・・・、 やはり、か」
と、私と口調を会わせる様に、
「ああ、そうだったなぁ。奈々、あれを見ろ。あれはター坊伯父さんが撮影した写真だぞ! どうだ? プロ顔負けだろう?」
ター坊が、ダイニングに飾ってあったター坊自身でで撮影した八重山諸島の夕暮れをポスターを私に指差す。
「これよっ! まさにこれ! エメラルド色の海に沈む夕焼け、あの美しさは一生モノだったなあ・・・」
「ああ、あの珊瑚礁で出来た島は、まさにこの世の天国だ。また、いつか、皆で一緒に行けると良いな」
料理が出来上がり、食卓に付く私とター坊。
「さぁて! いっただっきまぁす!」
私は、母の作るチャンプルーのレシピとはひと味違うけど、やはり同じ血筋の味覚に懐かしさを感じながら、
「美味し~い! これサイコー! ター坊、良いお嫁さんになれるネ!?」
無防備に食事を頬ばっていたター坊は、私が軽く振ったギャグをマトモ受けてしまったのか、咳き込んで苦しそうにむせながら、
「ぶふぉっ、げほっ。馬鹿を抜かせ! 俺は俺一人で充分だ! まぁ、欲を言えば、俺と同じ才能と人格を持った双子でも居れば助かるんだがな」
「それじゃ、ミミズの増殖と同じだわ。どこかに遺伝子的に相性の良い異性は居ないの、ター坊?」
「・・・居た、ある時期までを境に。だがこれから先、彼女以上の存在に巡り会う事は無いだろう」
なんか、私はター坊に聞いてはイケナイ事を聞いてしまったみたいで、
気まずそうにしていると・・・ター坊が、
「それで? 始業式はどうだった? 友達は出来たか?」
「それがさぁ~っ」
私は、ター坊伯父さんに今日起こった出来事を話し始めると、ター坊伯父さんは、『うん、うん』と相槌を打ちながら、私の話を夜遅くまで聞いてくれた。
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