第2話 参考書はどこだ、どれだ!
家には夜まで帰ればいいや、と駅ビルで飯でも食おうかと思ったが、あちこち駅ナカを工事していて……ここ、来るたび歩く場所に注意しないと迷路じゃねえ? 俺の地元の筈が、俺の知らない内に路線内で駅が増えてたり線路が上がってたり店が改札が訳わかんねー風になってて……気付いたら駅から出ていた。
ああ、そう言えばちょっとした本屋が駅前にあったよな……よし、先に寄ってからでも遅くない。行ってみよう。と、足を向けた。
向けたはいいが、コーナーを探す必要がある。俺は自慢ではないが、本屋はあまり縁がない。たまにコンビニで雑誌を立ち読みしようとしてから、ま、買うか、と手に取るくらいだ。
大学の図書館では、◯◯の為の資料として△△が必要なんです、と司書のお姉様やおっさんに丸投げするから、自分で参考書を探そうとしている自分をすげぇと思う。
いや、って言うか、これは自分で探した方がじっくり選べて納得出来るんじゃねえ? と考える。俺の今の状況にぴったりな参考書、自分で見つけた方がベストだよな。うん。俺って結構真面目な奴だよな……そうは見えないらしいけど。
とりあえず本屋の中に入る。そんなに大きくはない。が、ちょっとどっちに行けばいいんだ? とまごつく。
店には店員が数名いる。レジにも二人入ってる。心なしか、皆さんお忙しそうで……ここはやはり片っ端から見て歩けば、と、マンガと雑誌と学習参考書と文庫本のコーナーを除いて回ろうと眺め始めた。
結構ジャンル別になってるんだな。新刊コーナーは後回しだ。心理学とかかな。精神医学的な奴かな。経済関係、文学作品とかなしだよな……スポーツや芸能もパス? マンガのコーナーは勿論違うもんな、と客を避けつつ立ち読み不可なのにあんたら粘るな、と思いつつ横切ろうとして、ひときわ明るくポップアートの様にディスプレイされていたコーナーに偶然視線が届いた。
あ……った!『BLコーナー』!
ん? マンガか? ……ちょっと待て。こっちは文庫本だぞ? 普通の本……は? あれ、確かにここに書いてあるから、合ってるんだよな……?
……参考書、って普通どのコーナーにあるっけ? 俺が聞き間違えたか?
ここに参考書らしき本は見当たらないぜ? 教えてくれたゼミ友でサークルも一緒のやばっち(矢場さん)に電話して確かめるか? と閃くが……短期集中の連休だから、あいつらも帰省中だったと思い出した。
うーん? 先ずはタイトルを眺めてみ……て。 ???
マンガ? コミックスの表紙を眺めてみ……ひゃあっ!!
可愛い絵だけど、む、胸がねぇ……片方はガタイがいい。ヒョロヒョロしてるが、もう片方から比べたら、ガタイはいい。 ……でも両者共に胸が真っ平らだ……!
あ? こっちはどっちもガテン系だ……取っ組み合いみたいな、嫌、素直に見たままを捉えろ。抱き合っている!ガテン系とガテン系が……。恐ろしくてタイトルを確認出来ない。
表紙だけ見ていると、なんだかSMっぽいのもある。女の子に見えるが、少年マンガや男性誌の様なエロさがねえ……いや、中にはエロそのものズバリの絵柄もあるが……多分、全て女じゃねえ……あっ!……あ、そうか!
この表紙のコイツらは、可愛いけど双方男!なんだな!
それか……男同士なんだな。俺の飲み込みの早さ。褒められるレベルだろ? 表紙を見ただけで分かったぞ!
……と、言う事は、こっちにある出版社別や作家別の文庫本も……そう、なんだな?と、あちこちのタイトルを片っ端から読んでみた。
……わかんねー。俺の貧しいボキャブラリーでは、理解し難い。そうか、この中には基や葵に参考になる何かがあるんだな。それは何となく分かる。
……分かるが……一体どれだ? マンガの方に戻って、今度はタイトルを片っ端から読んでみるとするか……?
そんなんで分かるもんかな?
本屋の中で俺は気が遠くなった。
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